第388話 神の剣
少女の身体の中にある、剣のような物体。
日本側の検査では正体を突き止めることができなかった。
そこでリオンは、ゼオンに頼むことにした。
「ゼオン、精霊の女王に相談してくれ」
「うん」
「この剣みたいなものを、どうにかできないか調べてほしい」
ゼオンは頷いた。
しばらくして、精霊の女王が少女のいる部屋へやって来た。
「この子が……」
女王は少女を見つめる。
「身体の中に剣があるのですね」
「うん」
ゼオンが説明する。
「でも、普通の剣じゃないみたい」
「なるほど」
精霊の女王は少女に手をかざした。
「確かに……強い力を感じます」
二人は慎重に調べ始めた。
しかし、すぐには答えが出ない。
「この剣を動かせないかな?」
ゼオンが尋ねる。
「試してみましょう」
精霊の女王が呼びかける。
すると、部屋の中に一体、また一体と精霊が集まってきた。
「この剣を知っている者はいませんか?」
精霊たちが少女の身体を囲む。
火の精霊。
水の精霊。
風の精霊。
土の精霊。
さらに小さな精霊たちまで集まり、次々と相談を始めた。
『知らない』
『見たことない』
『でも古い力を感じる』
『普通の剣じゃない』
『外へ出せるかもしれない』
何十体もの精霊が意見を出し合う。
やがて、精霊の女王が頷いた。
「やってみましょう」
ゼオンも集中する。
「うん」
二人と精霊たちが力を合わせる。
少女の身体には一切傷をつけず、内部にあるものだけを少しずつ動かしていく。
そして。
「……出てきた!」
ゼオンが声を上げる。
光に包まれながら、少女の身体から一本の剣が現れた。
ゆっくりと宙へ浮かび、ゼオンの前に落ちる。
「……」
誰も言葉を発しなかった。
そこへフィーナが駆け込んでくる。
「何があったのですか?」
フィーナは剣を見る。
次の瞬間、目を大きく見開いた。
「……神の剣!!」
「神の剣?」
リオンが首を傾げる。
「はい!」
フィーナは剣を見つめる。
「伝承に残る、神が授けたとされる剣です!」
「そんなに凄いのか?」
「凄いなんてものではありません!」
フィーナは興奮していた。
リオンは剣を受け取る。
「……」
しばらく眺める。
「なんだこれ」
そして、軽く持ち上げたり、柄を確認したりする。
「おい」
フィーナの声が低くなる。
「はい?」
「何をしているのですか?」
「いや、普通の剣に見えるなって」
「神の剣ですよ!」
「でも剣だろ?」
「そういう問題ではありません!」
フィーナがついに怒鳴った。
「もっと大切に扱ってください!」
「分かった、分かった」
「全然分かってません!」
リオンは苦笑しながら剣を見る。
そんな騒ぎの横で、少女はまだ眠っていた。
そして少女の身体から取り出された神の剣は、静かに光を放っていた。
リオンは剣を見つめる。
「……この剣が、あの子の身体の中に入っていたのか」
笑っていたリオンの表情が、少しずつ真剣になっていく。
この少女はいったい何者なのか。
そして、なぜ神の剣が少女の身体の中にあったのか。
謎は、さらに深くなっていた。




