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スキル《家転移》で元傭兵の俺は静かに笑う。  作者: 山田✴ソラ


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第384話 眠り続ける少女


「もう一回、起こしてみる」


 ゼオンは眠ったままの少女に近づいた。


「ねえ、起きて」


 肩を軽く揺らす。


 しかし、少女は目を覚まさない。


「……起きない」


「もう少し声を大きくしてみろ」


「分かった」


 ゼオンは少女の近くに顔を寄せる。


「起きて!」


 その瞬間だった。


 少女が突然動いた。


「えっ?」


 ゼオンが驚く。


 少女は目を閉じたまま、ゼオンの身体を抱き寄せた。


「わっ!」


 そのままゼオンを抱き枕のようにして、再び眠ってしまった。


「……」


「……」


 リオンはしばらく固まっていた。


「父さん……」


「……まだ、早い」


「何が?」


「いや、何でもない」


 リオンは思わず笑ってしまった。


 ゼオンは困った顔をしながら、少女に抱きつかれたまま動けない。


「どうしよう」


「無理に離すな。抱き枕になってやれ」


「抱き枕?でも重い……」


「頑張れ」


「父さん!」


 リオンは笑いながらも、少女を見つめていた。


 そして、ふと表情を変える。


 笑っている場合ではない。


 この少女は何者なのか。


 なぜ、あれほど強い魔力を持っているのか。


 なぜアルベール家の印章が、この商人風の男から出てきたのか。


 考えれば考えるほど、嫌なものを感じる。


「……他国だったな」


 リオンが呟いた。


「ここはレオルディア王国だ」


 アルベール家の領地に近い場所。


 これ以上ここで調査を続ければ、余計な問題を引き起こす可能性がある。


「一度、戻る」


 リオンは通信機を取り出した。


「ヘリを呼ぶ」


 しばらくして、遠くからローター音が聞こえてきた。


 ヘリが森の上空までやってくる。


 リオンは馬車を見た。


 この馬車をそのまま残しておくわけにもいかない。


「証拠になるものは全部持ったな?」


「うん」


 ゼオンが答える。


「じゃあ、これを残すわけにはいかない」


 リオンは馬車から離れる。


 そして、馬車に火を放った。


 炎が馬車を包んでいく。


 リオンはその光景をしばらく見つめた。


「……これでいい」


 少女を抱えたゼオンとともにヘリへ乗り込む。


 リオンも乗り込むと、ヘリは森を離れていった。


 座席では、少女がまだゼオンを抱きしめたまま眠っている。


「……結局、起きなかったな」


「うん」


 ゼオンは困ったように少女を見る。


 リオンは、持ち帰った紙を見つめた。


 そこに押されたアルベール家の印章。


 そして、眠り続ける謎の少女。


「マサラの人々が消えた事件と、こいつがどう繋がってる……」


 答えは出ない。


 だが、嫌な予感だけは消えなかった。


 ヘリはそのまま、ガルリオン共和国へ向かった。


 今回の調査で分かったことは少ない。


 それでも、二つのものだけは手元に残った。


 不思議な魔力を持つ少女。


 そして、リオンが見覚えのあるアルベール家の印章。


 事件は、思っていたよりもずっと近くにあった。




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