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スキル《家転移》で元傭兵の俺は静かに笑う。  作者: 山田✴ソラ


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第382話 馬車の中


 リオンとゼオンは、警戒しながら馬車へ近づいた。


「ゼオン、俺の後ろにいろ」


「うん」


 リオンは銃を抜いた。


 馬車の扉をゆっくり開ける。


「……」


 中には二人いた。


 一人は、商人のような服装をした男。


 そしてもう一人は、まだ幼い少女だった。


 少女は座席に横になり、眠っている。


「寝てる……?」


 ゼオンが小さく呟く。


 リオンは少女を確認した。


「息はしてるな」


 少女に目立った外傷はない。


 だが、なぜこの少女から強力な魔力が感じられるのか。


 それが分からない。


「この子から魔力を感じてるのか?」


「うん。でも……」


 ゼオンが道具を見る。


「男の人からも少し感じる」


「そうか」


 リオンは男へ視線を向けた。


「お前たちは何者だ?」


「……」


 男は答えない。


 リオンが一歩近づいた。


「マサラ王国の住民が消えた事件と関係があるのか?」


「知らない」


「なら、どうしてこんなところを走っていた?」


「ただの商売だ」


 明らかに怪しい。


 リオンがさらに近づいた、その時だった。


「うるさい!」


 男が突然立ち上がった。


 隠し持っていた短剣を抜き、リオンへ向かって振り下ろす。


「!」


 リオンは咄嗟に銃で受け止めた。


「ゼオン、下がれ!」


「父さん!」


 男は何度も短剣を振り回す。


 リオンは距離を取りながら、必死に攻撃を避けた。


「話をする気はないのか!」


「黙れ!」


 男がさらに踏み込んできた。


 リオンは銃を構え直す。


 しかし、馬車の中は狭い。


 少女も眠ったままだ。


 このまま銃で応戦すれば、少女を巻き込む可能性がある。


 リオンは一瞬だけ迷った。


 そして、短剣を抜いた。


「やめろ!」


 男が短剣を振り上げる。


 次の瞬間、男の悲鳴が森に響いた。


 男はその場に倒れた。


 動かなくなった男を見て、リオンはしばらく固まっていた。


「……」


 ゼオンも何も言わない。


 やがてリオンは短剣を下ろした。


「……死んだ」


 声が小さくなる。


 自分を襲ってきた相手だった。


 それでも、命を奪ったという事実は変わらない。


「父さん……」


「大丈夫だ」


 リオンはそう言ったものの、自分自身に言い聞かせているようだった。


 ゼオンは眠っている少女を見る。


「父さん」


「今度は何だ?」


「この子から……さっきより強い魔力が出てる」


 リオンが少女を見る。


 少女は何も知らないように、静かに眠っていた。


 マサラ王国の人々が消えた事件。


 地下に残された魔方陣。


 そして、この馬車の中で眠る少女。


 リオンは、目の前の少女が事件の鍵を握っているような気がしてならなかった。




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