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スキル《家転移》で元傭兵の俺は静かに笑う。  作者: 山田✴ソラ


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第381話 森を走る馬車


 ヘリはマサラ王国を離れ、北西へ進んでいた。


 ゼオンは、精霊の女王から借りた道具を手にしたまま、窓の外を見つめている。


「……近い」


「本当か?」


「うん。かなり強い魔力がある」


 リオンは地図を確認した。


「この先は、レオルディア王国のアルベール領付近だな」


 しばらく森の上空を進んだところで、ゼオンが突然、道具を持ち上げた。


「父さん!」


「どうした?」


「下!」


 ゼオンが森の中を指差す。


「すごく強い魔力がある。あの道の上!」


 リオンが目を凝らす。


 木々の間を一本の道が伸びていた。


 その道を、二頭の馬が引く馬車が走っている。


「馬車か……」


 リオンはすぐに状況を察した。


「もしかしたら、あの中に何かあるのかもしれない」


 ヘリを馬車の前方へ回し、少し離れた場所に着陸させる。


 リオンとゼオンは急いで外へ出た。


「止まれ!」


 リオンが道の中央で叫ぶ。


 しかし、馬車は速度を落とさなかった。


「おい! 聞こえてるのか!」


 御者がこちらを見たようにも見えた。


 だが、馬車はそのまま走り続けてくる。


「父さん、危ない!」


「分かってる!」


 リオンは馬車の進路を避け、スナイパーライフルを構えた。


 狙いを定め、馬車の車輪を撃つ。


 乾いた銃声が森に響いた。


 車輪が破損し、馬車が大きく揺れる。


 御者が慌てて手綱を引き、馬車は道の端でようやく停止した。


 馬たちが驚いて嘶く。


「ゼオン、下がってろ」


 リオンはライフルを下ろし、馬車を警戒した。


「誰だ! 何をする!」


 馬車の中から怒鳴り声が聞こえる。


「それはこっちの台詞だ!」


 リオンが返す。


「止まれと言ったのに、無視したのはそっちだろ!」


 御者が馬車から降りてくる。


「いきなり魔法を放つとは、どういうつもりだ!」


「こっちは調査中だ。危険な魔力を感知した」


 リオンは馬車の荷台へ視線を向けた。


「その馬車の中に何がある?」


「な、何も無い!」


 御者は戸惑いながらに答えた。


 だが、その返事を聞いたゼオンが首を横に振った。


「違う」


「ゼオン?」


「馬車の中から感じる」


 ゼオンは道具を見つめていた。


「すごく強い魔力がある。さっき地下で感じたものに近い」


 リオンの表情が険しくなる。


「中にいるのか?」


「うん。馬車の中」


 御者の顔から、わずかに血の気が引いた。


 リオンはそれを見逃さなかった。


「……もう一度聞く」


 リオンはライフルを下ろしたまま、馬車の扉を見つめる。


「中に何がある?」


 森の中に、重い沈黙が落ちた。


 やがて、馬車の内側から小さな音がした。


 何かが動いた音だった。


 ゼオンが道具を握りしめる。


「父さん……」


「ああ」


 リオンは一歩前へ出た。


「どうやら、簡単には帰れそうにないな」




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