第378話 魔方陣の調査
「……父さん」
ゼオンは、壁に刻まれた紋様をじっと見つめていた。
円形の線。
その中にいくつもの見たことのない文字や記号が並んでいる。
まるで巨大な魔方陣のようだった。
「これ、魔力を流せば動くかもしれない」
ゼオンが手を伸ばす。
「待て!」
リオンがすぐに腕を掴んだ。
「え?」
「触るな」
「でも……」
「何が起きるか分からないだろ」
リオンは魔方陣を睨む。
「マサラの人たちが消えた原因と関係してる可能性がある。そんなものに、いきなり魔力を流すのは危険すぎる」
「……うん」
ゼオンは素直に手を引っ込めた。
ガルヴァンも魔方陣を見ながら頷く。
「リオンの言う通りだな。ここまで何も分かってないんだ。下手に動かすのはやめた方がいい」
「フィーナを呼ぶ」
リオンは通信機を取り出した。
「それと、日本の調査団も」
すぐに連絡が飛ぶ。
しばらくすると、地上から追加の調査員が降りてきた。
「リオン!」
フィーナもやって来る。
「何か分かったの?」
「これだ」
リオンが魔方陣を指差す。
フィーナは近づき、慎重に眺めた。
「……魔方陣に見えますね」
「ゼオンが魔力を流そうとした」
「えっ?」
フィーナがゼオンを見る。
「でも父さんに止められた」
「それは止めて正解です」
フィーナは苦笑した。
「ゼオン様の魔力は普通ではありませんから。何が起きるか分からない場所で使うのは危険です」
「うん……」
ゼオンが少ししょんぼりする。
「別に怒ってるわけじゃない」
リオンが頭を軽く撫でる。
「ただ、今回は慎重に行こう」
「分かった」
そこへ日本側の調査団も到着した。
カメラや計測機器を持った研究員たちが、魔方陣を取り囲む。
「まずは触らずに記録します」
「了解」
写真を撮り、寸法を測り、周囲の魔力反応を調べていく。
「魔力反応はあります」
研究員が画面を確認する。
「ただ、かなり弱いですね」
「まだ動いてるのか?」
ガルヴァンが尋ねる。
「それは分かりません。残留しているだけかもしれません」
別の研究員が壁を調べる。
「この材質も普通の石じゃありませんね」
「建物そのものも調べた方がいいな」
リオンが言った。
「魔方陣だけじゃなく、このドーム全体を調査する」
全員が頷いた。
それから調査が始まった。
壁。
床。
天井。
部屋の奥にある謎の装置。
そして、魔方陣。
分かることを一つずつ記録していく。
ゼオンも少し離れたところから調査を見守っていた。
「父さん」
「ん?」
「この場所……」
ゼオンが小さな声で言う。
「誰かが使ってた気がする」
リオンは魔方陣を見る。
「俺もそう思う」
問題は、それがいつなのか。
そして、「マサラの人たちは、ここで何をされたんだ……」
リオンの呟きが、静かな地下ドームに響いた。




