↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキル《家転移》で元傭兵の俺は静かに笑う。  作者: 山田✴ソラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

386/433

第367話 最後の通告


 土ドラゴンは、今日もゆっくりと進んでいた。


 一歩動くたびに大地が揺れる。


ズズン……。


 その先には、ガルリオン共和国の大地が広がっている。


 さらにその向こうには、人々の暮らす町や村がある。


 そして、精霊の都市もある。


 このまま進ませるわけにはいかない。


 そう考えたリオンは、アレリーナの背に乗って土ドラゴンの前方へ向かった。


 やがて、巨大な土ドラゴンの姿が見えてくる。


「アレリーナ、ここでいい」


「分かったわ」


 アレリーナが翼を広げたまま、空中で停止する。


 リオンは持ってきた拡声器を手に取った。


 一度、深呼吸する。


 これが最後の話し合いになるかもしれない。


 そう思うと、声を出すのが少し重かった。


「土ドラゴン!」


 拡声器から大きな声が響く。


 土ドラゴンの巨大な頭が、ゆっくりと動いた。


 そして、空にいるリオンを見る。


「お前が龍脈を目指していることは分かっている!」


 土ドラゴンは何も答えない。


 ただ、リオンを見ている。


「だけど、この先には人が住んでいる!」


 リオンは声を張った。


「精霊の都市もある! このまま進めば、大きな被害が出る!」


 少し待つ。


 返事を待った。


 リオン自身、どこかで期待していた。


 せめて、何か反応してくれれば。


 目的地を変えることができれば。


 戦わずに済む。


 しかし、土ドラゴンの口がゆっくりと開いた。


『前進』


「……」


 リオンは目を閉じた。


 やっぱりか。


 分かっていたはずなのに、胸が重くなる。


「……そうか」


 リオンはもう一度、問い掛ける。


「止まるつもりはないんだな?」


 土ドラゴンは答える。


『前進』


「……分かった」


 リオンはゆっくりと目を開いた。


 そこには、まだ迷いが残っていた。


 本当にこれでいいのか。


 何も悪いことをしていない相手を、こちらから攻撃していいのか。


 それでも王として決めなければならない。


「アレリーナ」


『うん』


「戻るぞ」


『……分かった』


 アレリーナは土ドラゴンから距離を取る。


 リオンは無線機を取り出した。


「ゼルファ、聞こえるか?」


『聞こえてるよ』


「土ドラゴンの魔力が特に強い場所を探してくれ」


『分かった。今、日本側とデータを合わせてる』


「頼む」


 無線を切る。


 その間にも、土ドラゴンは進んでいる。


ズズン……。


ズズン……。


 一歩。


 また一歩。


 リオンは何も言わず、その姿を見つめていた。


 やがて、無線から声が入る。


『見つけた』


 ゼルファだった。


『土ドラゴンの周辺で、特に魔力反応が強くなっている場所がある』


「そこなら?」


『攻撃の効果が期待できる』


「分かった」


 リオンは短く答えた。


 その時だった。


 遠くの空から、機械音が聞こえてきた。


 リオンが顔を上げる。


 大型ドローンが、こちらへ向かって飛んできていた。


 その機体には、日本側と武器商人Jによって用意された大型の貫通爆弾が搭載されている。


 あれを使えば、土ドラゴンを止められるかもしれない。


 本当に止められるのか。


 それすら、まだ分からない。


 リオンは土ドラゴンを見る。


「……」


 できれば、こんなことはしたくなかった。


 昨日もそう思った。


 今日になっても、その気持ちは変わっていない。


 だが、ここで迷い続ければ、その間にも土ドラゴンは進む。


 共和国の人たちが危険にさらされる。


 精霊の都市も危ない。


「……ごめんな」


 リオンが小さく呟いた。


 誰に聞かせるでもない言葉だった。


 そして、無線機を握り直す。


「投下してくれ」


『了解』


 ドローンが土ドラゴンの上空を通過する。


 そして、兵器が切り離された。


 落下していく。


 リオンは目を逸らさなかった。


 次の瞬間、ズドォンッ!!大地が大きく揺れた。


「っ……!」


 アレリーナが翼を広げ、空中で体勢を保つ。


 轟音が森を駆け抜ける。


 土煙が一気に舞い上がり、土ドラゴンの姿が完全に見えなくなった。


「……」


 リオンは何も言わなかった。


 ただ、土煙を見つめている。


 やがて無線からゼルファの声が聞こえた。


『……命中』


「そうか」


 それだけだった。


 しばらくして、土煙が少しずつ晴れていく。


 その向こうに、巨大な影が浮かび上がった。


「……」


 リオンは目を細める。


 影が動いた。


 ゆっくりと。


 まるで何事もなかったかのように。


「……まだ動いてる」


 アレリーナも地上を見つめていた。


『嘘……』


 土ドラゴンが身体を起こす。


 大きな身体から土や岩を落としながら、ゆっくりと立ち上がる。


 リオンは言葉を失っていた。


 まさか。


 あれだけの攻撃を受けて、それでも動くのか。


 土ドラゴンは空にいるリオンを一度だけ見た。


 そして、『前進』


「……」


 リオンの口がわずかに開く。


「……嘘だろ」


 アレリーナも絶句していた。


「まだ……進むのか?」


 土ドラゴンは答えない。


 ただ、身体を前へ向ける。


 そして、ゆっくりと一歩を踏み出した。


ズズン……。


 大地が揺れる。


 もう一歩。


ズズン……。


『前進』


 また同じ言葉。


 リオンはしばらく何も言えなかった。


 止めるための攻撃だった。


 それでも、土ドラゴンは止まらない。


 傷つけられても。


 邪魔をされても。


 怒ることすらなく。


 ただ、自分の目的地へ向かっている。


「……なんなんだよ、お前」


 リオンは小さく呟いた。


 答えは返ってこない。


『前進』


 その言葉だけが、遠くまで響いていた。


 リオンは土ドラゴンを見つめたまま、拳を強く握った。


「……本当に、どうすればいいんだよ」


 王として守らなければならない。


 だが、一人の人間としては、これ以上あの土ドラゴンを傷つけたくない。


 その二つの気持ちの間で、リオンは再び立ち尽くしていた。


 そして、土ドラゴンは何も知らないまま。


 何も変わらない速度で目的地へ向かって進み続けていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。