↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキル《家転移》で元傭兵の俺は静かに笑う。  作者: 山田✴ソラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

384/437

第365話 土ドラゴンを止めるために


 土ドラゴン討伐を決めた翌日。


リオンは朝から日本側との協議に入っていた。


 会議室のモニターには、土ドラゴンの推定サイズ、地中での移動速度、これまでの観測から予想された防御力などが表示されている。


 数字だけを見ても、普通の魔物とは桁が違う。


 リオンはしばらくモニターを眺めていたが、意を決して口を開いた。


「まず確認したい……」


 日本側の担当者を見る。


「日本の兵器で、あいつを止められるか?」


 担当者はすぐには答えなかった、少し言いにくそうに視線を落とし、それから口を開く。


「……正直に言います」


「うん」


「通常の兵器では、効果が期待できません」


「……え?」


リオンの表情が固まった。


「対地ミサイルでは?」


「土ドラゴンの体表の硬さ、それと地中を移動しているという条件を考えると、決定的なダメージを与えられる可能性は低いです」


「……」


 リオンは黙ってモニターを見る、予想していなかったわけではない。


 だが、実際に日本側からそう言われると、かなりきつい。


「じゃあ……」


 リオンが頭を掻く。


「俺は何を使って討伐すればいいんだ?」


「現状では、確実な手段はありません」


「……困ったな」


 隣で話を聞いていたゼルファも腕を組んだ。「魔法でも、あれだけ巨大だと簡単じゃないね」


「だよなぁ……」リオンは椅子に深く座り込んだ。


 昨日、討伐すると決めた、王として国を守るために。


 それなのに、一晩経ったら肝心の方法がない。


「どうするかな……」


 その時だった、通信機から別の声が入った。


『リオン』


「……Jか?」


『そうだ』


 武器商人Jだった。


『一つだけ考えある』


 リオンが顔を上げる。


「何だ?」


『バンカーバスターを調達することが出来るぜ』


「バンカーバスター……」


 聞き慣れた言葉に、リオンは少し希望を見いだした。


『地中深くにある目標を攻撃するための大型の貫通爆弾だ。米国製になるが金を積めば何とかなる』


 その言葉を聞いた瞬間、会議室の空気が少し変わった。


 リオンはモニターを見る、地上を進む土ドラゴン。


「……それなら、届くのか?」


『可能性はある』


「可能性……か」


『確実とは言えん。ただ、今ある手段の中では一番、効きそうだ』


「……そうか」


 リオンは腕を組んだ、頭の中で何度も考える。


 土ドラゴンを止めなければならない、そのためには、強力な兵器が必要になる。


 だが、それを使えば土ドラゴンを傷つけることになる。


 そもそも、土ドラゴンは何も悪いことをしていない。


 ただ、自分の目的地へ向かっているだけだ。


「……」


 リオンは目を閉じた、しばらくして、ゆっくりと目を開ける。


「……分かった」


 声は重かった。


「J。頼む」


『了解した、金の用意を頼む』


 通信が切れた、会議室に静けさが戻る。


 リオンは椅子の背もたれに身体を預け、大きく息を吐いた。


「……本当に、嫌な選択ばかりだな」


 誰かに聞かせるというより、自分に言い聞かせるような声だった。


 その隣では、ゼオンがずっと黙っていた、父が何を考えているのか、たぶん、ゼオンにも分かっていた。


 しばらくして、ゼオンが立ち上がる。


「父さん」


「ん?」


 リオンが顔を向ける。


「僕も、土ドラゴンを止めたい」


「ゼオン……」


「だから、僕にできることを探してみる」


 ゼオンは真っ直ぐ父を見る。


「精霊の王として、できることがあるかもしれない」


 リオンは少し驚いた、だが、すぐに小さく笑った。


「……そうだな」


 ゼオンの肩に手を置く。


「頼む」


 その言葉に、ゼオンは頷いた、すると、精霊の女王も立ち上がった。


「私も協力します」


「女王様も?」


「もちろんです」


 精霊の女王は静かに微笑んだ。


「できることがあるのなら、試してみるべきでしょう」


「うん」ゼオンも頷く。


 二人はそのまま精霊の都市へ向かった。


 土ドラゴンを傷つけずに止める方法がないか、精霊たちに協力を求めるためだ。


 ゼオン自身も、自分が精霊の王としてどこまでできるのか、まだ分かっていない。


 それでも何か方法があるかもしれない。


 そう信じるしかなかった。


 精霊の都市に到着すると、ゼオンと精霊の女王はさっそく精霊たちへ呼びかけた。


「みんな、お願いがあるんだ」


 ゼオンの周囲に、少しずつ精霊たちが集まってくる。


 風の精霊。


 土の精霊。


 水の精霊。


 木の精霊。


 その他にも、さまざまな精霊たちが姿を現した。


 ゼオンは集まった精霊たちを見回す。


「土ドラゴンを止めたい」


 精霊たちがざわめく。


「できれば……」


 ゼオンは少し迷ってから続けた。


「傷つけたくないんだ」


 その言葉に、精霊たちが一斉に反応した。


 どうすればいいのか精霊たちも考え始める。


 龍脈に干渉できないか土ドラゴンに意思を伝えられないか。


 進む方向を変えられないか一つずつ試していく。


 しかし、「……駄目だね」しばらくして、ゼオンが疲れたように呟いた。


 簡単にはいかなかった、龍脈はあまりにも巨大で、精霊たちだけで動かせるようなものではない。


 土ドラゴンも、こちらの呼びかけに反応する様子がない。


「……難しいな」


 ゼオンは地面に座り込みそうになる、精霊の王になった、そう言われても何でもできるわけではない。


 むしろ、できないことの方が多い。


「ゼオン様」


 精霊の女王が声を掛ける。


「まだ終わっていません」


「でも……」


「精霊の王なのですから」


 女王は微笑んだ。


「諦めるのは、もう少し後でもいいでしょう?」


 ゼオンは少し驚いた顔をして、それから笑った。


「……うん」


 そして、もう一度立ち上がった。


「もう少しやってみる」


 その頃、王城では、リオンが日本から届いた資料を眺めていた。


 机の上には、土ドラゴンの資料。


 兵器の資料。


 作戦の候補。


 討伐の準備は、少しずつ進んでいる、だが、リオンの表情は晴れなかった。


「……」


 資料を閉じる、そして、窓の外を見る。


 できることなら、戦いたくない。


 できることなら、あの巨大な土ドラゴンを傷つけずに済ませたい。


 そんな気持ちは、まだ消えていなかった。


「……ゼオンが、何とかしてくれればいいんだけどな」誰にも聞こえないように呟く。


 王としては、兵器を頼るしかない。


 でも父親としては兵器よりも、息子の力を信じたかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。