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スキル《家転移》で元傭兵の俺は静かに笑う。  作者: 山田✴ソラ


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第362話 土ドラゴンの行き先

 

 日本から送られたドローンは、土ドラゴンの上空を一定の距離に保ちながら飛行していた。


 地上では、巨大な身体がゆっくりと前進している。


ズズズ……。


 大地が揺れ、木々がわずかに震える、土ドラゴンは、相変わらず歩みを止めない。


 ドローンはその姿を追跡しながら、地下から発せられていると思われる魔力反応を探知していた。


 やがて、「……ありました」


 日本側のモニターを確認していた担当者が声を上げた。


「龍脈と思われる反応を確認しました」


「龍脈?」


 別の担当者が画面を覗き込む。


「はい。地下深くから、非常に強い魔力反応が継続しています」


「土ドラゴンの進行方向は?」


「……ほぼ一致しています」


 その映像は、すぐにガルリオン共和国へ送られた。


「これが……龍脈か」


 リオンはモニターを見つめた、地上からは何も見えない。


 しかし、特殊なセンサーを通すことで、地中を巨大な光の筋が走っていることが確認できる。


 まるで、大地そのものの中を川が流れているようだった。


 そして、その光の筋は土ドラゴンと同じ方向へ伸びている。


「……本当に追っているんだな」


 リオンが呟く。


 ゼオンも画面を見ながら頷いた。


「昨日言っていた通りだね」


「ああ」


 リオンは少し考えてから、日本側へ声をかける。


「さらに先まで追跡してくれ」


『了解です』


 ドローンがさらに進む。


 土ドラゴンも歩みを止めない、森を抜け、山を越え、巨大な身体を揺らしながら、ひたすら北へ向かっていく。


 しばらくして、日本側の担当者が画面を見ながら首を傾げた。


「……あれ?」


「どうした?」


「龍脈の反応が、少し変化しています」


 画面が拡大される、複数の光の筋が、一本の大きな流れへと集まっている。


 さらに地図を重ねる。


「この場所は……」


 担当者の顔がわずかに強張った。


「精霊の都市を通っています」


「……精霊の都市?」


 リオンの表情が変わった。


「はい」


 画面上では、龍脈の光が精霊の都市の地下を通り抜け、そのままさらに先へ伸びている。


「その先は?」


『現在、追跡中です』


 ドローンは進み続ける、そして、地図上に表示された場所を見て、日本側の担当者が息を呑んだ。


「……これは」


「今度は何だ?」


「龍脈が……ガルリオン共和国の中心部へ向かっています」


「…………」リオンは何も言わなかった。


 ゼルファが地図を覗き込む。「共和国の中心部……?」


「はい。さらに龍脈を追跡します」


 画面上の光の筋を辿っていく、そして、最終的に一つの場所へ集まっていることが判明した。


「見つけました」


 地図に赤い印が付けられる。


「龍脈が地下で大きく合流している場所です」


「そこへ土ドラゴンが向かっている?」


「その可能性が高いです」


 リオンは地図を見つめた。「つまり……」


 ゼオンがぽつりと言う。「土ドラゴンは、精霊の都市を通って、ガルリオン共和国まで来る」


「そういうことになるな」


 リオンは深く息を吐いた。「……困ったな」


 土ドラゴンに悪意があるわけではない、これまで誰かを襲ったわけでもない、ただ、龍脈を追っているだけなのだろう。


 それなら、無理に攻撃する理由はない。


 問題は。


「あいつは、あまりにも大きすぎるんだよな……」


 リオンが頭を抱える。「普通のドラゴンなら、まだ話は違ったんだがな」


「山のような大きさだからな」ゼルファも困ったように言う。「このまま共和国を横断されたら、街道は確実に破壊される」


「建物も無事では済まないだろうな」


「農地も……」ガルヴァンが地図を指差す。

「この辺りは農地が多い。ここを通られたら、収穫前の畑まで全て潰されるぞ」


「地下水路や魔導設備も危険だな」ゼルファが続ける。


 リオンは黙って地図を見つめていた、一つ一つ、想定される被害が浮かんでくる。


 土ドラゴンに悪意はない、だからといって、好きなように歩かせてよいわけでもない。


「倒すというのは……」ゼルファが言いかけた。


 しかし、そこで口を閉じた、リオンも同じことを考えていた。


 土ドラゴンを止める、それだけなら、方法はいくつかある。


 日本の兵器を使用するという手もある。


 だが、「……攻撃はできないな」リオンが静かに言った。


 誰も反論しなかった。


「今のところ、あいつは誰も襲っていない。ただ、自分の目的地へ向かっているだけだ」


「ですが、このまま進ませることもできません」精霊の女王が言う。


「分かっている」


 リオンは地図から目を離さなかった。


「精霊の都市も通る。共和国も通る。どちらも俺たちが守らなければならない場所だ」


 ガルヴァンが腕を組む。「リオン」


「ん?」


「どちらを選んでも、何らかの被害は出るぞ」


「……分かっている」


 その一言が、妙に重く響いた、精霊の女王も険しい表情を浮かべている。


「土ドラゴンを止めれば、龍脈に何らかの影響が出る可能性があります」


「逆に、進ませれば街や森が破壊される」


「はい」


「……本当に厄介だな」


 リオンは椅子に深く座り直した、王になってから、難しい判断を何度も下してきた。


 戦争もあった、国を守るために厳しい決断を下したこともある。


 それでも、「こんな判断は……したくなかったな」小さな声だった。


 ゼオンがリオンを見る。「父さん……」


「大丈夫だ」


 リオンはすぐに笑ってみせた。「まだ結論を急ぐ必要はない」


「でも……」


「土ドラゴンが何のために龍脈を追っているのか、まだ分かっていないだろう?」


「うん」


「だったら、まずはそれを調べる」


 リオンは地図を指でなぞった。


「目的地が分かったのなら、そこまで行けば何か分かるかもしれない」


 ガルヴァンも頷く。「それが一番だな」


「もし話が通じるなら、それに越したことはない」リオンはそう言って、もう一度画面を見る。


 そこには、巨大な土ドラゴンが映っていた。


 ゆっくりと本当にゆっくりとそれでも確実に前へ進んでいる。


 その先にあるのはリオンが守るガルリオン共和国。


 そして、ゼオンが大切にしている精霊の都市。


「……頼むから、ただ龍脈を見に行くだけであってくれよ」


 誰に言うでもなく、リオンは呟いた。


 だが、画面の中の土ドラゴンは何も答えない。


 ただ一言、『前進』


 そう告げるかのように、巨大な身体を揺らしながら歩き続けていた。




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