第351話 世界樹の木の実の効果
翌朝。
リオンが執務室で書類を読んでいると、慌ただしい足音が聞こえてきた。
「陛下!」
医療担当者が息を切らして飛び込んでくる。
「どうした?」
「昨日の老人ですが……!」
「老人が?」
「はい!」
担当者は興奮した様子で叫んだ。「ものすごく元気になっています!」
「……何?」リオンは立ち上がった。「ゼルファとガルヴァンを呼べ!」
三人は急いで病院へ向かった。
「昨日までは、あんなに弱っていたのに……。」ゼルファが走りながら呟く。
「一晩で急に変わったってことか?」ガルヴァンも驚いている。
「とにかく、本人を見よう。」リオンが病院の扉を開けた。「老人はどこだ!」
病院の職員が困った顔をする。「あちらです……。」
「?」
指差された方向から、何やら大きな音が聞こえてくる。
ガンッ!
ガンッ!
ガンッ!
「ヒャハー!」
「……。」「……。」「……。」三人が固まった。
そこには昨日までガリガリだった老人がいた。
しかし、今は違う、腕は太くなり、肩幅も広い、まるで別人のような体格になっていた。
しかも、病院の壊れた壁を自分で修理している。
「ヒャハー!」
ガンッ!
「ここも直しとくぞ!」
ガンッ!
病院の職員が呆然と見ている。
「……爺さん?」リオンが呟く。
老人が振り返った。「おお! 先生たちか!」
「……。」ゼルファが老人を見つめる。「昨日の人ですよね?」
「そうじゃ!」
老人は豪快に笑った。
「朝起きたら身体が軽くてな!」そして、壁を叩く。「ヒャハー!」
「いや、待て!」リオンが慌てて止める。
「病院を壊すな!」
「壊してない! 直してるんじゃ!」
「その力で直すな!」
老人は笑いながら修理を続ける。「こんなに身体が動くのは何十年ぶりじゃ!」
ゼルファはとうとう耐えられなくなった。「ははははは!」腹を抱えて笑い始める。
「ゼルファ!」
「だって……昨日まで寝たきりだった爺さんが……!」
ゼルファは涙を拭いながら笑う。「何でムキムキになって病院を修理してるんだよ!」
「知らないよ!」リオンも思わず頭を抱えた。
その横でガルヴァンが真剣な顔をして呟く。「……使用禁止。」
「え?」リオンが振り向く。
ガルヴァンは小声で続けた。「これ、使い方を間違えたら大変なことになるぞ。」
「……確かに。」
ゼルファはまだ笑っている。「世界樹の木の実、回復薬としては凄すぎるだろ……。」
老人は楽しそうに笑った。「よし! 次はあっちの壁じゃ!」
「爺さん!」リオンが叫ぶ。「病院の修理は職員に任せろ!」
「わしの方が早いぞ!」
「そういう問題じゃない!」
こうして世界樹の葉と木の実には、確かに驚異的な回復効果があることが判明した。
ただし同時に三人は一つの重大な問題にも気付いた。
使い方を間違えると、とんでもない元気な爺さんが誕生する。




