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スキル《家転移》で元傭兵の俺は静かに笑う。  作者: 山田✴ソラ


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第346話 精霊王の仕事


 北部森林地帯。


 精霊の女王が帰った翌日。


 ゼオンは朝から森の中を歩いていた。


 昨日までとは、少しだけ周囲の視線が違う。


『おはようございます、精霊王様!』


『今日もお元気そうですね!』


『精霊王様、あとで泉に来てください!』


「う、うん……。」


 ゼオンは照れながら手を振る。


 しかし、本人には一つ大きな疑問があった。


「……精霊王って、何をすればいいんだろう?」


 その疑問を抱えたまま、ゼオンは父親のところへ向かった。


 リオンは北部森林地帯の簡易執務所で書類を整理していた。


「父さん。」


「どうした?」


「ちょっと聞きたいことがある。」


「なんだ?」


 ゼオンは少し考えてから尋ねた。


「精霊王って、何をすればいいの?」


「……。」


 リオンの手が止まった。


「精霊王?」


「うん。」


「お前が精霊王なんだから、お前が知ってるんじゃないのか?」


「知らないよ。」


「……。」


 リオンは困った。


 そもそも人間である自分が精霊王の仕事を知っているわけがない。


「母さんに聞いてみたら?」


「母さんも分からないと思う。」


「……。」


 リオンは腕を組んだ。


「じゃあ、精霊の女王に聞けば?」


「もう帰っちゃった。」


「そうだったな……。」


 二人で黙り込む。


 しばらくして、リオンが周囲を見回した。


「……精霊に聞けばいいんじゃないか?」


「精霊に?」


「ああ。」


 ちょうど近くを一匹の小さな精霊が飛んでいた。


「おい。」


『はい?』


 精霊が近づいてくる。


 リオンは真剣な顔で尋ねた。


「精霊王の仕事って何だ?」


『え?』


「ゼオンが精霊王になっただろ?」


『はい!』


「だから、具体的に何をすればいいのか教えてくれ。」


 精霊は少し考える。


『えっと……。』


「うん。」


『まず、精霊たちと仲良くすることです!』


「……。」


「……。」


 ゼオンとリオンが顔を見合わせる。


「それだけ?」


『それだけじゃありません!』


 精霊は慌てて続けた。


『精霊たちが困っていたら助けます!』


『森がおかしくなったら調べます!』


『精霊同士で喧嘩したら仲裁します!』


『大事なことがあったら、みんなで相談します!』


「なるほど。」


 ゼオンが頷く。


 精霊はさらに続ける。


『それと!』


「まだあるの?」


『精霊王様には、精霊たちが安心できる場所にいてほしいです!』


「……。」


 ゼオンは少し考えた。


「じゃあ、王様みたいにずっと仕事をしなくてもいいの?」


『はい!』


「……よかった。」


 ゼオンがホッとする。


 リオンも苦笑した。


「なんだ。」


「うん。」


「俺の仕事より簡単そうだな。」


「父さんは大変なの?」


「毎日書類だらけだ。」


「精霊王にならなくてよかった。」


「お前、今それを言うか?」


 二人が笑う。


 そこへリゼがやって来た。


「何を話しているの?」


「精霊王の仕事について聞いてた。」


「まあ。」


 リゼはゼオンを見る。


「どうだった?」


「精霊たちを守ったり、困っている精霊を助けたりするんだって。」


「それならゼオンには向いているわね。」


「そうかな?」


「ええ。」


 リゼは笑った。


「あなたは昔から、困っている人を放っておけないもの。」


 ゼオンは少し照れながら笑う。


 すると、さっきの精霊が再び口を開いた。


『それから精霊王様には、もう一つ大事な仕事があります!』


「何?」


『たまに精霊の都市に遊びに来てください!』


「それ、仕事なの?」


『私たちにとっては大事な仕事です!』


 ゼオンは笑った。


「じゃあ、それならできそう。」


 リオンも笑う。


「それなら安心だな。」


 リゼも頷く。


「そうね。」


 精霊王。


 その仕事は、想像していたような難しいものではなかった。


 精霊たちの声を聞き、困っている者を助け、森を守る。


 そして…。


 精霊たちと一緒に笑う。


 ゼオンにとって、それは思っていたよりずっと身近な仕事だった。




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