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スキル《家転移》で元傭兵の俺は静かに笑う。  作者: 山田✴ソラ


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第341話 親の怒り


 北部森林地帯。


 精霊の都市へ続く光の道を、リオンとリゼは全速力で走っていた。


 先頭を飛ぶ精霊が振り返る。


『もうすぐだよ!』


「分かった!」


 リオンは腰の銃に手を添える。


 隣を走るリゼの表情も険しい。


「ゼオン……大丈夫よね。」


「もちろんだ。」


 そう答えながらも、リオンの顔は笑っていなかった。


 息子が精霊の女王に求婚された。


 その話を聞いた瞬間から、ずっと胸の奥がざわついている。


「……子供に求婚って、どういうことだ。」


「私にも理解できません。」


 リゼは静かに答えた。


「しかも相手は精霊の女王。」


「……。」


「絶対に話を聞きます。」


「俺もだ。」


 二人の歩調がさらに速くなる。


 やがて森が開けた。


 目の前に、巨大な精霊の都市が姿を現す。


 美しい街並み。


 空を飛び交う精霊。


 中央には巨大な樹木で作られた宮殿。


 普通なら、その美しさに目を奪われるところだった。


 しかし。


 今のリオンとリゼには関係ない。


「ゼオンはどこですか!」


 リゼの声が都市中に響く。


 精霊たちが一斉に振り返った。


『人間の王だ!』


『リオンが来た!』


 そして宮殿から精霊の女王が姿を現した。


 その隣には――。


「父さん!」


 ゼオンがいた。


「ゼオン!」


 リオンとリゼは同時に駆け寄る。


「大丈夫か?」


「うん……。」


 ゼオンは少し困った顔をしていた。


「女王様が、僕と結婚したいって……。」


「その話だ。」


 リオンの声が低くなる。


 リゼもゼオンの肩に手を置く。


「あなたはどうしたいの?」


「僕は……よく分からない。」


「そう。」


 リゼは優しく微笑んだ。


「なら、無理に決めなくていいのよ。」


 そして、ゆっくりと女王を見る。


 精霊の女王は穏やかな表情を浮かべていた。


「突然このような申し出をしたことは謝罪します。」


「……。」


 リオンは答えない。


 代わりに腰から銃を抜いた。


 カチャッ。


 黒光を反射する。


 精霊たちがざわめいた。


『リオンが武器を抜いた!』


 リゼも無言で剣を構える。


 女王の表情が変わった。


「……これは?」


 リオンは真っ直ぐ女王を見据える。


「話し合いに来た。」


 銃を構えたまま言う。


「ただし、俺は父親だ。」


 リゼも一歩前へ出る。


「私も母親です。」


 二人の殺気にも似た迫力に、周囲の精霊たちが一斉に後退する。


 ゼオンが慌てる。


「父さん! 母さん!」


 リオンは視線だけをゼオンへ向けた。


「安心しろ。」


 そして女王へ向き直る。


「いきなり息子に求婚した理由を、最初から最後まで聞かせてもらおう。」


 リゼも武器を下げない。


「納得できる説明をお願いします。」


 精霊の女王は二人を見つめ。


 やがて小さく息を吐いた。


「……分かりました。」


 こうして。


 精霊の都市で、親子と精霊の女王による緊張した話し合いが始まろうとしていた。




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