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スキル《家転移》で元傭兵の俺は静かに笑う。  作者: 山田✴ソラ


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第327話 神様、仕事してください


 クマ神様人形の人気は、ガルリオン共和国だけに留まらなかった。


 《家移転》で日本へ送る荷物の中に、試作品として数体のクマ神様人形を紛れ込ませた。

  

 それが始まりだった。


 数週間後、王城の執務室で、日本から届いた報告書を読んでいたリオンの手が止まる。


「……嘘だろ」


 隣で書類を整理していたリゼが顔を上げた。「どうかしましたか?」


 リオンは報告書を差し出す。

「見てみろ」


 リゼは目を通し、すぐに目を丸くした。

「えっ……日本でも売れてるんですか?」


「しかも、大流行らしい」


 ルナも気になったのか、ひょいと覗き込む。「本当ですか?」


 報告書には利用者の感想まで添えられていた。


『しゃべるクマ神様が可愛い』

『踊る限定版が即日完売』

『見ているだけで癒やされる』


 リオンは深いため息をつく。

「日本人……何やってるんだ」誰も答えられなかった。


 一方その頃、王都の教会。


「今月の売上です!」


 フィーナが笑顔で金貨袋を机へ並べていく。

 

 ドサッ。ドサッ。ドサッ。まだ終わらない。


「こちらが日本への輸出分です!」さらに金貨袋が積み上がった。


 教会職員たちから自然と拍手が起こる。


「おめでとうございます!」

「ありがとうございます!」


 フィーナは満面の笑みだった。教会の運営費は、かつてないほど潤っている。


「すっかり銭亀ですね」一人が冗談交じりに言う。


 フィーナは胸を張った。「違います。健全な教会運営です!」


 そう言い切る笑顔は、どこからどう見ても商売人だった。


 イライラが蓄積された、リオンは教会を訪れていた。


 フィーナが席を外していることを確認し、誰にも気づかれないよう礼拝堂へ足を運ぶ。


 静かな空間。


 祭壇の奥には、創造神ヘリオスの像が堂々と鎮座している。


 リオンは像を見上げ、小さく息を吐いた。「……頼みがある」


 ゆっくり手を合わせる。


 近くにいた神官たちも、思わず姿勢を正した。


「ヘリオス」


 静かな礼拝堂に声が響く。


「聖女を罰してください」


 神官たちの顔色が一斉に変わった。


「へ、陛下!?」

「お願いする内容がそれですか!?」


 リオンは真顔のまま頷く。

「あいつ、調子に乗りすぎだ」


 その瞬間だった、祭壇が淡く輝き始める。神々しい光が礼拝堂いっぱいに広がった。「し……神託だ!」神官たちは慌ててひざまずく。


 次の瞬間、リオンの頭の中へ、聞き慣れた声が響いた。『……わかった』


 それだけだった、短く、それでも確かに創造神ヘリオスの声だった。


 リオンは満足そうに頷く。「よし」


 一方、神官たちは呆然としていた。

「本当に返事を……」

「創造神様が……」


 別室では何も知らないフィーナが、機嫌よく帳簿を付けていた。「日本分はこちら……共和国分はこちら……」鼻歌まで歌っている。


 すると、不意に窓から一筋の光が差し込んだ。「……あれ?」フィーナは顔を上げる。


 胸の奥が妙にざわついた、理由は分からない、背筋を冷たいものが走る。


「気のせい……ですよね?」返事はない。


 けれど、その予感だけは妙に現実味を帯びていた。


 同時刻、礼拝堂を後にしたリオンは、小さく笑って空を見上げる。「神。たまには仕事しろ」


 その願いは創造神ヘリオスへ、しっかり届いていた。




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