第325話 量産されるクマ神様
翌日、王城の応接室。
リオンはフィーナに呼び出されていた。
「……嫌な予感しかしない」そう呟きながら部屋へ入る。
フィーナは真剣な表情だった。机の上にはクマ神様。
『我は神なり』
「うるさい」リオンは反射的に突っ込んだ。
フィーナは咳払いを一つする。
「リオン様」
「なんだ?」
「このクマ神様ですが」
「うん??」
「量産してください」
「……はぁ??」
一瞬、思考が止まった。
「今なんて?」
「量産してください」
「嫌だ!!」即答だった。
「なんで俺が!」
リオンは立ち上がる。
「昨日まで処分しようとしてたんだぞ!」
「ですが!」フィーナも立ち上がる。
「本物の神聖があります!」
「だから怖いんだよ!」
「教会に置けば信徒も喜びます!」
「ヘリオス様は!?」
「ヘリオス様も……多分、笑って許してくださいます」
「『多分』かよ!」
三十分後、結局、押し切られた。工房でリオンは木材を削っていた。
「なんでこうなる……」
横ではゼルファが面白そうに眺めている。「量産するのか?」
「させられる」
「ははは」他人事なので笑っている。
数時間後、五体のクマ神様が完成した。
リオンはクマ神様を無駄に整列させた。
『我は神なり』
『我は神なり』
『我は神なり』
『我は神なり』
『我は神なり』
うるさい、非常にうるさい、リオンは頭を押さえた。「……少し改造するか」
リオンは魔導回路を書き換える、魔石を交換する、術式を追加。
ゼルファが興味深そうに覗き込む。
「何を付ける?」
「遊び心」
「嫌な予感しかしない」
改造完了した、リオンはクッキーを一枚取り出した。「試すぞ」
クマ神様の前へ置く。『供物を確認』
「お?」ゼルファが驚く。
クマ神様が突然、左右に揺れ始めた。ステップ、くるり、ジャンプ。両手を上げて楽しそうに踊り始めた。
♪タッタッタッ。
妙に軽快だったがゼルファが固まった。
「……踊った」
「踊ったな」
さらには『感謝する』ぺこり、お辞儀までした。
ゼルファが吹き出した。
「ははははは!なんで踊らせた!」
「供物貰ったら嬉しいかなって」
「発想がおかしい!」笑いが止まらない。
そこへフィーナがやって来た。
「完成しましたか……」
クマ神様を見る、リオンがフィーナにクッキーを渡す、フィーナは「?」になりながらクッキーを置く。
『供物を確認』
ダンス開始。くるくる。ぴょんぴょん。
最後に一礼。
フィーナは固まった。「……」
「どうだ?」
「神聖な踊り……なのでしょうか?」自信がなかった。
リオンも腕を組む。「可愛くないか?」
『我は神なり』
ぴょん。
『供物に感謝する』
くるり。
ゼルファは笑い転げる。フィーナは頭を抱える。リオンだけが満足そうだった。
「前よりいい出来だ」
「どこがですか!」フィーナの悲鳴が工房中に響いた。
ガルリオン共和国には踊るクマ神様が少しずつ増えていくことになった。




