↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキル《家転移》で元傭兵の俺は静かに笑う。  作者: 山田✴ソラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

327/433

閑話 ラミの名案(特別版)

 これは、リオンのもとへ家族が押しかけ……もとい、会いに行く少し前の話である。


 ガルリオン共和国王城。


 中庭の一角で、ゼオンとリオナは並んで腰を下ろしていた。


 いつもなら庭を走り回っている二人が、今日は妙に静かだ。


 その様子に気付いたラミが首を傾げた。


「どうした?」


 ゼオンは少し迷ってから答えた。「父上、まだ帰ってこないから」


 リオナも小さく頷く。「とーさま、いない……」


 どちらも元気がない。


 ラミは二人の隣に腰を下ろした。戦争が終わってから随分経つ。なのにリオンは帰ってこない。


 ナルディの復興。リベストの復興。各国との交渉。共和国からの支援。


 子供達には詳しいことは分からない。


 ただ、父親が長い間帰ってきていないという事実だけは分かっていた。


 ゼオンが空を見上げる。「父上、忙しいのかな」


「おしごと……」リオナも膝を抱えながら呟いた。


 ラミはしばらく考える。そして、珍しく真面目な顔になった。


「ふむ……」


 数秒後、ぱっと立ち上がる。


「よし!」


 二人が顔を上げた。ラミは満面の笑みだった。


「会いに行こう!」


 ゼオンが目を瞬く。


「会いに?父上に?」


「そう!」ラミは元気よく頷いた。「会えないなら会いに行けばいいんだ!」


 あまりにも単純だった。だがラミらしい発想でもあった。


 十分後。


 リゼとルナが話をしていた部屋の扉が勢いよく開いた。


「大変だ!」


 飛び込んできたラミに、リゼが驚いて顔を上げる。


「どうしたの?」


 ルナも振り返った。

 ラミは真剣そのものの顔だった。


「ゼオンとリオナが寂しそう!」


 二人は思わず顔を見合わせる。それは知っていた。むしろ気付かないはずがない。


 父親が何か月も帰ってきていないのだ。


 寂しいに決まっている。そして、正直なところ、リゼも会いたかった。ルナも会いたかった。かなり会いたかった。


 だが大人には大人の事情がある。距離の問題もある。簡単に行ける場所ではないのだ。


 ところがラミは勢いよく机を叩いた。


「だから!」


 二人が身構える。


「会いに行こう!」


 やっぱりそう来たと二人は苦笑した。


「気持ちは分かるけど……」


「どうやって行くんだ?」


 ルナが現実的な疑問を口にする。「ナルディまでかなり遠いぞ」


 馬車でも相当な日数がかかる。普通ならそこで話は終わる。

 

 だが、ラミは違った。満面の笑みを浮かべる。


 そして、胸を張って宣言した。「竜!!」


 部屋が静まり返った。リゼが瞬きをする。ルナも瞬きをする。


 ラミだけが自信満々だった。「竜!」


「……」


「竜だよ竜!!」


「……」


「飛べる!速い!」なぜか勝ち誇った顔だった。


 リゼは額を押さえた。ルナは深いため息をつく。嫌な予感しかしない。


「ラミ」リゼが静かに尋ねる。


「何?」


「誰に頼むつもりなの?」


「アレリーナ!」即答だった。


「あとカミリア!」予感が強まる。


「それとアレン!」最悪だった。


 ルナが真顔になる。「待って」


「何?」


「アレンは赤ちゃんだぞ」


「でも飛べる!」


「飛べるけど駄目だ」


「なんで?」


「赤ちゃんだからだ!」ルナの全力のツッコミだった。


 ラミは納得していない。飛べるなら問題ないじゃないか、という顔をしている。

 

 その頃。


 北の森林地帯ではアレリーナが木陰で昼寝をしていた。


 カミリアは川で魚を追いかけている。


 アレンはゼオン達と遊んで疲れ、丸くなって寝ていた。


 三頭とも知らない。


 自分達が今まさに移動手段として計画されていることを。


 夕方。


 王城では急遽家族会議が開かれていた。

参加者はリゼ、ルナ、ラミ。


 さらに呼び出されたアレリーナとカミリア。


 議題は一つ。


 リオンに会いに行く方法。発案者はもちろんラミ。

  

 そして、提案された移動手段は「竜!」ラミが誇らしげに言った。


 アレリーナは無言で額を押さえる。ルナも頭を抱える。リゼも苦笑いしかできない。


 ただ一人。


 ラミだけが嬉しそうだった。良い案を思いついたと本気で信じている。


 その姿を見て、アレリーナは静かに空を見上げた。「……嫌な予感がする」


「奇遇だな」ルナが頷く。「私もだ」


 リゼも同意した。


 だが、その予感は残念ながら正しかった。


 この時点で既にリベストを大混乱に陥れる「ドラゴン家族訪問計画」は、着実に動き始めていたのである。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。