第289話 決闘開始
数日後。北部森林地帯。
赤龍カミリアは上機嫌だった。
『来たぞー』
巨大な赤龍が森へ降り立つ。ズゥゥン!!地面が揺れた。
精霊たちが集まってくる。
『赤龍だー』
『また来たー』
『婚約者だー』
「違う!!」アレリーナの怒声が飛んだ。
現在、リオンは王都で公務中だった。日本との交易、共和国の予算、各地の報告書。王様は忙しい。そのため北部にはいない。
カミリアは人型になりながら首を傾げた。「今日はいないのか?」
「いない」アレリーナは無表情だった。
「残念だな」
「全く残念ではない」即答である。
そして、アレリーナは一枚の紙を取り出した。「これを受け取れ」
「む?」カミリアが受け取る。数秒後。
「決闘状?」
「そうだ」
沈黙。カミリアの目が輝いた。「おお!」
「喜ぶな」
「龍族らしくて良いではないか!」嬉しそうだった。
アレリーナは頭を抱える。やはり龍族だった。
「内容は簡単だ」腕を組む。「貴様が本気でアレンに関わるつもりなら、覚悟を見せろ」
「なるほど」
「決闘だ」
「受けよう」即答だった。
こうして、龍族らしい話し合いが成立した。
決闘当日。場所は海。共和国北方の大海原だった。
海上には誰もいない。被害を避けるためだ。上空ではヘリが飛んでいた。中にはリオン、ガルヴァン、フィーナ、そして何故かラミ。
「なんでいるんだ」リオンがラミを突く。
「面白そうだから!!」ラミは満面の笑みをリオンに返した。
リオンは聞いた自分を後悔した。
海上でアレリーナは巨大な聖龍の姿へ変わる。白銀の巨体、圧倒的な存在感。神話そのものだった。
『久しぶりだな、この姿も』
ヘリから聖龍アレリーナの背中に飛び込んだ。リオンはアレリーナの背中にしがみつく。リオンはバランスを整え「よし」と叫び。肩のロケットランチャーを確認した。
「待て」ガルヴァンが頭を抱える。「なんでお前が乗ってる」
「共同作戦だから」
「決闘とは」ガルヴァンは疑問を呟き。
「決闘って何でしたっけ……」フィーナも呆れていた。
一方、対面では赤龍カミリアが海上へ降り立つ。こちらも巨大だった。炎のような赤い鱗、巨大な翼、龍族の姫に相応しい威容。
『来たか』
『来たぞ』
海風が吹く。二頭の龍が向かい合う。海が揺れ、雲が流れる。まさに神話級の決戦だった。
その時、リオンが肩へロケランを担いだ。
カミリアが固まる。『待て』
「ん?」リオンは真顔になった。
『何を持っている』
「ロケラン」
『なぜだ』
「決闘だから」
『意味が分からぬ』正論だった。しかしリオンは気にしない。アレリーナも気にしない。
『始めるぞ』
『嫌な予感がするから待て』
『始めるぞ』
『待てと言っている』
その瞬間、リオンが引き金を引いた。
ボシュッ!!
ロケット弾発射。カミリアの顔色が変わる。
『何それぇぇぇぇぇぇ!?』
ドォォォォン!!
海上で巨大な爆発が起きた。
こうして龍族の未来を賭けた決闘は、あまりにも理不尽な形で始まったのだった。




