閑話 異世界大型飛行性害獣対策費用
日本側異世界特別施設の極秘会議室。
数名の政府関係者、自衛隊幹部、研究者たちが重苦しい空気の中で座っていた。巨大モニターには白銀の龍。聖龍との戦闘記録映像が映し出されている。ミサイル、爆炎、ブレス、そして逃げ回る戦闘機。
「……改めて見ると意味分からんな」誰かが呟いた。
「怪獣映画では?」
「現実です」
空気がさらに重くなる。一人の幹部が書類を机へ置いた。
「では、"異世界大型飛行性害獣対策作戦"の費用報告を始めます」
全員の顔が死んだ。
「まず航空燃料費」
「はい」
「弾薬費」
「はい」
「対空ミサイル費」
「はい」
「緊急展開費」
「はい」
「異世界特別施設維持費」
「はい」
「機体修理費」
「……はい」
数字が並ぶ。とんでもない額だった。
沈黙。
やがて一人が静かに言う。「……戦争か?」
「ほぼそれです」
「しかも相手一匹ですよね?」別の隊員が遠い目をする。
「一匹です」
「何なんだあの生物……」
モニターでは、ミサイルを食らいながら飛び続ける聖龍が映っていた。
『ガォォォォォォォン』(リオォォォォォン!!!)字幕付。
「執念深すぎるだろ……」
「なお、共和国側から提供された"龍の血"の研究価値は極めて高いとの報告が上がっています」研究員が興奮気味に口を開く。「細胞活性が異常です!!自己修復能力も確認されました!!」
「夢の新素材か?」
「場合によっては医療革命すら……!」
しかし、別の官僚が疲れた顔で言う。「で、採算は?」
研究員は静かに目を逸らした。「……現時点では赤字です」
会議室が死んだ。
一方その頃。ガルリオン共和国、王城。
「……え?」リオンは固まっていた。
目の前には日本側から送られてきた請求書。そこに並ぶ数字。とんでもない桁だ。
「え、ちょっと待て」
「ハァ……」ガルヴァンが怒りで肩を震わせている。
「怒るな!!」
「いや無理だろこれ!!」
「ひぃ……」フィーナも請求書を見て青ざめた。
「ミサイル費用……航空支援費……機体修理費……」リオンは震える声で読み上げる。ページをめくる。「弾薬補給費……危険手当……」さらに。「"対神話級存在特別対応費"って何だよ!?知らねぇよ!!」
ガルヴァンはリオンにブチ切れた。「龍の血で儲けた金、全部消し飛んでるじゃねぇか!!」
「うそだろ……」
リオンは崩れ落ちた。ベルクから受け取った大金。あれだけ喜んでいた報酬が、全部消えた。
「俺の金が……」
「お前が自衛隊に依頼したせいだろ」
「でも自衛隊めっちゃノリノリだったぞ!?」
「そりゃ相手ドラゴンだからな!」
「もう嫌です……国家予算で聖龍様と戦争してる……」フィーナは頭を抱えていた。




