第278話 数カ月後
数カ月後、ガルリオン共和国は比較的平和だった。
比較的、である。
王都では市場が賑わい、日本との交易も安定。ゼオンは相変わらず精霊たちに神の子扱いされ、リオナは夜な夜な巨大フェンリル化して城壁の上で寝ていた。
「……平和って何だっけ」リオンは執務室で死んだ目をしている。
「今のお前はただの仕事疲れだ」ガルヴァンが書類を積み上げる。「現実見ろ」
「見たくねぇ」
その時だった。王城全体が揺れた。
ゴゴゴゴゴ……!!
「ん?」
「へ、陛下!!」兵士が慌てて飛び込んでくる。
「今度は何だ」
「白銀の龍です!!」
リオンとガルヴァンが同時に嫌な顔をした。「また来たのかよ……」
「今回は何壊す気だ……」
「ま、まさか復讐……!?」何故か内政の手伝いをしていた、聖女フィーナが青ざめる。
しかし、様子がおかしかった。咆哮がない。暴れてもいない。むしろ。
『リ、リゼェェェ!!ルナァァァ!!』
「……ん?」
女性陣の名前を呼んでいた。
王城前へ出たリオンたちは、そこで固まった。白銀の聖龍。その巨体は相変わらず圧倒的だった。しかし。
「……え?」リオンが間抜けな声を出す。
聖龍の腹が明らかに膨らんでいた。ガルヴァンが沈黙する。フィーナが口をぱくぱくさせる。
「……太った?」リオンは現実逃避気味に呟いた。
『違う!!』聖龍が即座に怒鳴った。しかしその声には余裕がない。
『言ったであろう!?あんな遊び事ではありえぬと!!』
「いや俺に言われましても!?」
白銀の光。聖龍は人型へ変化した。そして現れた銀髪の女性は完全に妊婦だった。お腹が大きい。しかも本人がめちゃくちゃ焦っている。
「ど、どうするのだこれはァァァ!?」
「知らねぇよ!?」
「貴様のせいだろうがァ!!」
「俺だけのせいじゃないだろ!?」
「半分以上は貴様だ!!」
「うわぁ……」ガルヴァンが頭を抱える。
「ヘリオス様ぁ……」聖女フィーナは天を仰いだ。
そんな中、リゼとルナだけは落ち着いていた。
「あぁ、やっぱり」
「まぁ、出来ると思ってた」
「た、助けろ……」聖龍が涙目で二人を見る。
その姿はもはや、威厳ある神話級存在ではなかった。完全に困っている妊婦だった。
「我、龍族ぞ!? なぜこんな簡単に子が出来るのだ!?」
「リオンだから」ルナが真顔で答える。
「納得できぬ!!」
「とりあえず落ち着いて下さい」リゼが苦笑しながら近づく。
「無理だ!!」
「大丈夫ですよ。私達も最初は混乱しましたから」
「まぁ何とかなる」ルナも頷く。
「説得力が無いのが怖い!!我、神級存在なのだが!?」聖龍はとうとう頭を抱えた。
「今さらだな」リオンがぼそっと呟く。
「貴様ァ!!」
「痛っ!?」
即座に尻尾で叩かれた。
「……また家族増えるのか」ガルヴァンが遠い目をする。
「もう嫌です……この国、神話が軽すぎます……」フィーナはふらりと揺れた。




