第275話 ドラゴン接待
王都郊外。
巨大な焚き火を囲み、即席の宴会場が作られていた。山盛りの肉料理、燻製、巨大魚の丸焼き、ドワーフ特製ソーセージ、そして大量の酒樽。完全に"戦後の打ち上げ"だった。
上空では自衛隊機が警戒飛行を続け、共和国兵たちも半分引きながら待機している。そんな中、白銀の光が降り立つ。
聖龍だった。巨大な龍の姿ではなく、人化した女性形態。銀髪を揺らしながら、じろりとリオンを睨む。
「……罠ではあるまいな?」
「宴会だって」
「貴様は信用できぬ」
「お互い様だろ」
「貴様の方が酷い」即答だった。
「そこは本当にそう」ガルヴァンが深く頷く。
「なんで全員そっち側なんだよ」
聖龍は警戒したまま席へ座る。するとリオンが肉皿を差し出した。
「ほら」
「……ふん」
渋々受け取り、一口。もぐもぐ。数秒後。
「……美味い」
「だろ?」
「共和国特製だァ!!」「酒に合うぞォ!!」ドワーフたちが胸を張った。
聖龍は少しだけ機嫌を直したようだった。
「な、なんとか平和的に進んでますね……」フィーナが小声で呟く。
「今のところはな」ガルヴァンも警戒を解かない。
その時、リオンがこっそりと笑った。「……よし」
「ん?」
ドワーフの一人へ目配せする。するとドワーフたちがニヤリと笑い。
ごとり。
巨大な酒瓶が机へ置かれた。透明。しかし妙に嫌な存在感がある。
「おい待て」ガルヴァンの顔が引きつった。「それ出すのか?」
「切り札だ」
「嫌な予感しかしねぇ……」
ドワーフが酒を注ぐ。見た目は普通のエール。しかし中身は違った。共和国産・超高濃度蒸留酒。ドワーフたちが"岩も溶ける"と笑う危険物だ。しかもリオンはそれを普通の酒へ混ぜていた。
「リオンさん?」フィーナが青ざめる。
「大丈夫大丈夫」
「何がです!?」
「ドラゴンなら酒強いだろ」
「理論が雑!!」
しかし、聖龍は気づかない。「ふむ……」
ぐいっ。
一気飲みした。数秒後。「……美味いな」
「だろ?」
さらに注ぐ。飲む、また飲む、どんどん飲む。ドワーフたちがざわつき始めた。
「おいおい、あの量飲んで平然としてるぞ……」
「流石ドラゴンだな……」
しかし、変化は突然だった。聖龍の頬がほんのり赤くなる。
「……む?」
ふらっ。
銀髪が揺れた。リオンがニヤリと笑う。
「効いてきたな」
「やっぱり酔わせる気だったか!!」ガルヴァンが頭を抱えた。
「暴れたら面倒だろ?」
「根本的解決になってねぇんだよ!!」
聖龍は酒杯を持ったままリオンを睨む。しかし目が若干とろんとしていた。
「き、貴様……なんだこの酒は……」
「共和国名物」
「頭が……ふわふわする……」
そして。
ぐらっ。
聖龍はそのままリオンへ寄りかかった。
「うおっ」
場が静まる。フィーナが固まった。ルナの眉がぴくりと動く。リゼは微笑んでいた。怖い。
聖龍はぼんやりした目で呟く。「……貴様、嫌な奴だが……」
「おう」
「酒と肉は良いな……」
「そこは自信ある」
「……あと」
聖龍はリオンの肩へ額を押し付けた。「尻は……まだ痛い……」
「そこ根に持ちすぎだろ」
「当たり前だ馬鹿者ぉ……」
完全に酔っていた。




