第274話 謝罪と宴会
『リオォォォォォォン!!!』
空ではなお、聖龍と自衛隊の空中戦が続いていた。爆炎、ミサイル、白銀のブレス。完全に戦場だ。
そんな中。
「リオン」
リゼの声は静かだった。だが、逆に怖い。リオンは反射的に背筋を伸ばした。隣ではルナも腕を組んでいる。
「お前、何をした?」
「……ちょっと尻撃って」
「うん」
「家で潰して」
「うん」
「置き去りにして」
「うん」
「自衛隊呼んだ」
沈黙。
「馬鹿ですか?」ルナが額を押さえた。
「反論できねぇ……」
リゼはにこりと微笑む。とても綺麗な笑顔だった。
「リオン?」
「はい」
「謝ってきて下さい」
「……嫌だ」
「リオン?」
「はい」
「謝ってきて下さい」
「……はい」
圧が凄かった。
「聖龍より怖ぇ……」ガルヴァンが小声で呟く。
「分かります」フィーナは全力で頷いた。
その頃、王都上空ではなお聖龍が暴れていた。
『リオォォォォォォン!!!』
「名前呼ばれすぎだろ俺」
「当たり前です」ルナが呆れた顔で言う。「完全に個人間トラブルですから、これ」
「国家規模なんだけど」
「原因が個人なんです」
完全論破だった。
「……分かったよ。ちゃんと話す」リオンは大きくため息をついた。
「最初からそうしてください」リゼは優雅に紅茶を飲んだ。
しかし、リオンは顎に手を当てる。「ただ普通に謝ってもなぁ……」
「まだ余計なこと考えてる」ガルヴァンが嫌な顔をした。
「宴会しよう」リオンはぽんっと手を叩く。
「は?」
「酒飲めば大体仲良くなる」
「酒場の酔っ払いみてぇな発想だな!?」
しかし、リオンは真剣だった。「ドラゴンも肉好きだったし、酒とツマミあれば機嫌直るかもしれん」
「それで駄目だったら?」
「また戦争」
「やめろ!!」
リオンはさっそく部下へ命令する。「ドワーフ呼んでくれ」
数十分後、王城厨房は大騒ぎになっていた。共和国屈指のドワーフ職人たちが集められ、大量の酒樽が運び込まれる。
「エール持って来い!!」
「燻製肉追加だ!!」
「山盛りソーセージ用意しろ!!」
ドワーフたちは妙にノリノリだった。
「なんだァ!?ドラゴンとの宴会だとォ!?」
「面白ぇ!!」
「絶対飲み潰してやる!!」
「平和的解決って何でしたっけぇ……」フィーナは頭を抱える。
「でもまぁ……リオンの交渉って大体こんなんだよな」ガルヴァンも遠い目をしていた。
「否定できません……」
やがて王都郊外に巨大な宴会場が設置された。肉、酒、巨大な焚き火。完全に祭りだ。
そして、空。
『リオォォォォ――』
そこへリオンが拡声器を持って叫んだ。
「おーい!!」
聖龍が動きを止める。『……何だ貴様』
「飲まねぇ?」
沈黙。戦闘機パイロットたちまで固まった。
「悪かったって。だから酒飲んで仲直りしようぜ」リオンは続ける。
『…………』
聖龍の表情が引きつる。『貴様、本当に意味が分からぬな……』
「よく言われる」
「そこは本当にそう」ガルヴァンが即座に頷いた。




