第273話 和解勧告
シュゴォォォォ!!
発射されたミサイルが白煙を引きながら空を裂く。聖龍は咄嗟に回避行動を取った。
『な、なんだこれはァァ!?』
ドゴォォォォン!!
爆炎。白銀の鱗が吹き飛び、空中に火花が散る。しかし。
『グォォォォッ!!』
聖龍は落ちなかった。むしろ怒りを増していた。
「直撃確認!」
「……ですが撃墜には至りません!」
自衛隊側の指揮車両に緊張が走る。モニターには爆炎を突き破って飛翔する白銀の龍。年配の指揮官が眉をひそめた。
「想定以上に硬いな……」
「通常兵器での制圧は困難と思われます」
一方、王都城壁の上。リオンたちもその光景を見上げていた。
「うわぁ……」
「あの攻撃を食らって飛んでるぞあいつ……」ガルヴァンがドン引きしている。
「神話級だからな」
「便利な言葉だな神話級」
その時、上空から咆哮。
『リオォォォォォォン!!!』
「また俺狙いかよ!?」
聖龍が一直線に王都へ向かってくる。しかしその進路へ、戦闘機編隊が割り込んだ。
「第二波、攻撃開始!」
バシュゥゥゥ!!
機関砲、さらにミサイル。空中が爆発で埋め尽くされる。聖龍も反撃した。巨大な口が開き、白銀の光が収束する。次の瞬間。
『消えよォォォ!!』
超高熱ブレスが放たれた。空そのものが白く染まる。
「回避!!」
戦闘機が散開するが、一機が爆炎へ飲み込まれた。共和国側から悲鳴が上がる。
「うわぁぁぁ!?」
「ブレスやばっ!?」
幸い機体はギリギリ離脱していた。しかし全員が理解した。これは普通の生物ではない。災害だ。
「……完全に怪獣映画だな」
「笑えません」
自衛隊側の空気も変わった。さらにミサイル、さらにブレス。爆炎、轟音。空中戦は激化していく。
それでも聖龍は落ちなかった。
『我を……舐めるなァァァ!!』
何発被弾してもなお飛び続けるその姿は、もはや怪物だった。
「……倒せなくね?」リオンが頭を掻く。
「今さらかよ」ガルヴァンは疲れた顔で呟く。「お前、毎回"なんとかなる"で突っ込むよな……」
その時、フィーナが震えながら前へ出た。「あ、あの……もう……和解しませんか?」
全員が彼女を見る。フィーナは涙目だった。「これ以上やったら、本当に取り返しつかなくなりますよぉ……」
「もう十分取り返しつかなくないか?」
「まだギリギリです!!」
「どこが!?」
「そもそも原因、ほぼリオンさんですよね!?」フィーナは必死だった。
「…………」リオンが目を逸らした。
「そうだな」ガルヴァンが即答する。
「そこ即答する!?」
「家で潰して置き去りにした時点で完全にお前が悪い」
「うっ」珍しくリオンが詰まった。
その間にも空では爆発が続く。聖龍の怒号、戦闘機の轟音、ミサイル、ブレス。完全に地獄絵図だった。
「お願いですから、ちゃんと謝って下さいぃ!!」フィーナが両手を合わせる。
「……嫌だ」
「子供ですか!?」
「でもまぁ……実際、倒せねぇなら交渉しかねぇよな」ガルヴァンがため息をついた。
リオンは不満そうに空を見上げる。そこでは聖龍がミサイルを食らいながらなお暴れていた。
『リオォォォォォン!!!』
「……めちゃくちゃ怒ってんなぁ」
「お前のせいだよ」
「知ってる」
数秒後、リオンは大きく息を吐いた。
「……分かった。和解申し入れる」
「ほ、本当ですか!?」フィーナの顔がぱっと明るくなる。
「ただし」リオンは真顔だった。「先に"尻を狙った件はお互い水に流そう"って言う」
「そこ蒸し返す必要あります!?」フィーナは渾身ツッコミをはなった。




