第271話 本来の目的
数日後。ガルリオン共和国、王城。
リオンたちはようやく帰還していた。共和国軍の兵士たちは疲労困憊、ガルヴァンに至っては目の下に濃い隈ができている。
「……もう二度とドラゴン相手の外交なんかしたくねぇ……」
「でも結果的には成功しただろ?」
「どこがだよ」ガルヴァンは即答した。
「平和的交渉の予定が、砲撃戦から空中戦になってる時点で失敗なんだよ!!」
「……確かに」リオンは少し考える。
「今さら納得するな!!」
執務室では、今回の遠征で得た"成果"が並べられていた。ドラゴンの鱗、聖龍の血液、そして砕けた白銀の欠片。どれも国家レベルの宝物だ。
「す、すげぇ……本当に持って帰ってきた……」ベルクは目を輝かせていた。
犬の獣人商人は震える手で魔導容器を見つめる。中では白銀の血が淡く輝いていた。「これが……聖龍の血……」
「約束の品だ」リオンは椅子へ座りながら言った。「量は少ないが、そっちの依頼条件は満たしてるはずだ」
「十分です!!十分すぎます!!」ベルクは感動したように何度も頷く。
次の瞬間、ベルクは大量の金貨袋を机へ積み上げ始めた。
ドサッ。ドサドサッ。
さらに追加。ドンッ。
「……おい」ガルヴァンの目が点になる。
「依頼料です!!」
「いや多くね!?」
「当然です!!神級素材ですよ!?これ一滴だけでも国家間で戦争が起きるレベルですからね!?」ベルクは興奮気味だった。
「そんな危険物を軽いノリで頼んだのかお前」
「まさか本当に取ってくるとは思わなくて……」
「お前も大概だな!?」
リオンは金貨袋を持ち上げた。重い。しかし、気分は最高だった。「いやぁ、頑張った甲斐あったな」
「頑張ったの方向性がおかしいんだよ」ガルヴァンはもうツッコむ気力も薄れていた。
「しかし、本当、平和的会話って難しいな」リオンは上機嫌で笑う。
「お前が言うのか……?」
「最初は普通に話すつもりだったんだぞ?」
「迫撃砲を持って行った時点で説得力ゼロだろ」
「護身用だ」
「どこの世界に護身用迫撃砲があるんだよ!!」
「もう嫌です……ヘリから魔法?を撃つ王様とか聞いたことありません……」フィーナは机へ突っ伏していた。
「でも勝ったぞ?」
「勝利条件がおかしいんですぅ!!」
その時だった。
ふわりと、部屋の中へ淡い光が現れる。精霊たちだった。小さな光球たちはいつものようにリオンの周囲を漂う。しかし、どこか落ち着きがない。
「ん?」リオンは首を傾げた。
一体の精霊が、不安そうに呟いた。
『……でも、あの龍、怒ってた』
「そりゃ怒るだろ」
『すごく怒ってた』
「だから何だよ」
精霊たちは顔を見合わせ、小さな声で言った。
『龍って……執念深いよ?』
部屋の空気が止まった。
「……リオン」ガルヴァンがゆっくり顔を上げる。
「ん?まさかとは思うが」
その瞬間。
ゴォォォォォォ……
遠く、王都の外から聞き覚えのある咆哮が響いた。
『リオォォォォォォン!!!!』
全員が固まる。
フィーナだけが即座に泣いた。「やっぱり来たァァァァァ!!」




