第265話 聖龍に喧嘩を売る男
着弾。
ドォォォン!!
山が揺れた。洞窟の入口が崩れ落ち、岩が砕けて煙が上がる。
「……やったか?」ガルヴァンが低く言う。
その瞬間。崩れた岩を内側から押しのけるように巨大な影が現れた。聖龍。完全に、その姿を現す。白銀の鱗が光を反射し、翼がゆっくりと広がる。その一動作だけで、空気が震えた。
『……愚か者どもが!!』
低い声。しかし今度は明確な怒りを含んでいた。
「完全に怒らせたな」ガルヴァンが歯を食いしばる。
「最悪です……」フィーナは顔を青くした。
しかし、リオンは静かだった。スコープを覗き、標的を捉える。「……でかすぎて」ぽつりと言う。「どこ狙っても当たるな」
「おい」ガルヴァンが止めようとする。しかし遅かった。
パンッ!!
乾いた銃声。弾丸が一直線に飛び、命中した。聖龍の、尻尾の付け根付近に。
一瞬の静寂。
『…………』
次の瞬間。
ゴォォォォォォォッ!!!
怒号、咆哮。山全体が震える。
「お前どこ撃ってんだ!!」ガルヴァンが叫ぶ。
「一番効きそうなとこ」リオンは即答した。
「やめろその発想!!」
聖龍が翼を広げる。怒りが、はっきりと形になった。
『人の子が……我を……攻撃しただと……』
地面がひび割れ、圧が増す。
「完全に敵対認定されました……」フィーナが震える声で言う。
リオンは冷静に弾を装填する。
カチャリ。
「いや」一拍。「ようやく"対等"だろ」
「どこがだ!!」ガルヴァンが絶句した。
聖龍の視線が、完全にリオンを捉える。
『貴様……名は』
「リオン!!」リオンは拡声器を使い答えた。
沈黙。聖龍の瞳が細くなる。
『覚えた』
その一言で、空気が変わった。
「……あー」ガルヴァンが呟く。「終わったな」
「いいや」リオンは小さく笑い、スコープ越しに聖龍を見据えた。「ここからだ」




