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スキル《家転移》で元傭兵の俺は静かに笑う。  作者: 山田 ソラ


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第264話 神託と、一線の越え方

 神聖王国アストレアの北部山岳・臨時陣地。


 張り詰めた空気。誰も動かない。


「……もういい」リオンが低く言った。その声は、明らかに怒っていた。


「おい、落ち着け」ガルヴァンが眉をひそめる。


「落ち着いてる」即答だった。「だから判断してる」


 リオンはフィーナを見た。「なあ、聖女」一拍。「神に聞け」


 沈黙。フィーナの表情が変わる。「……正気ですか?」


「正気だ」


「これは"聖龍"です。神に連なる存在。軽々しく……」


「だからだよ」リオンが遮る。「お前の神に聞け。やっていいのかどうか」


 静寂。風が止む。


 フィーナはゆっくりと目を閉じた。「……後悔しますよ」祈りの姿勢を取る。空気が変わった。


「本気でやるのか……」ガルヴァンが小さく呟く。


 数秒。いや、もっと短い時間。フィーナの体がわずかに震えた。目を開ける。その瞳は明らかに変わっていた。


「……どうだ」リオンが問う。


 フィーナはゆっくりと口を開いた。その顔には明らかな不快感があった。

「……構わぬ、そうです」


 空気が凍る。


「は?」ガルヴァンが目を見開く。


「"好きにしろ"と」フィーナは吐き捨てるように言う。


 リオンは一瞬黙り。そして、小さく笑った。「……だよな」


「納得するな!」ガルヴァンが叫ぶ。


「判断材料は揃った」リオンは振り返る。

その目は完全に決まっていた。「やるぞ」


 ガルヴァンは数秒固まり、深く息を吐いた。「……付き合うしかないか」


「当然だ」リオンが頷く。


「本当にやる気ですか」フィーナが顔をしかめる。


「止めるか?」


 一瞬の沈黙。フィーナは目を逸らした。「……もう止めません」


 その時点で、全員の覚悟は決まった。


「迫撃、準備」リオンが手を上げる。ヘリから降りたリオンが育てた精鋭の兵が素早く、無駄なく動いた。


「目標、洞窟入口。牽制射撃」


「近接は俺が見る」ガルヴァンが剣を抜く。


 リオンはスナイパー装備を構え、スコープ越しに洞窟を捉えた。「……聖龍」小さく呟く。「もう一回だけ聞くぞ。話す気、あるか?」当然、返事はない。「……だよな」リオンは目を細め、手を振り下ろした。「撃て」


ドンッ!!


 迫撃砲が火を吹く。轟音。空を裂く弾が、まっすぐ聖龍の洞窟へと向かった。


「後戻りはできんぞ」ガルヴァンが低く言う。


 リオンは答えない。ただ、狙い続ける。

神託は下った。理屈も、言い訳もすべて揃った。だからこそ、これは完全に自分の意思だった。


 弾は、着弾する。その瞬間。聖龍が本気で動き出した。




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