第262話 プランB発動
『ならば――』
聖龍が、わずかに息を吸う。その瞬間。
「……来るぞ!」ガルヴァンが叫んだ。
咆哮。
ゴォォォォォォォッ!!
空気そのものが砕けた。音ではない。圧だ。
「ぐっ……!」リオンの膝が揺れる。耳が焼けるように痛み、視界が歪む。
ガルヴァンは歯を食いしばるが「……っ、無理だ……!」膝をついた。
フィーナはその場で崩れ落ちる。完全に意識を失っていた。
咆哮が止む。しかし余韻だけで、立っているのがやっとだ。
「……会話どころじゃねぇな」リオンは息を荒くしながら横を見た。
ガルヴァンは気絶寸前。フィーナは完全に気絶。
「……撤退だ」即断だった。
リオンは台車を引き戻し、空になったそれにガルヴァンを乗せる。次にフィーナも。
「……軽くねぇな」
「当たり前だろ……」ガルヴァンがかすれた声で言う。
「意識あるのかよ」
「ギリギリだ……」
『去れと言ったはずだが』奥から冷たい声。
リオンは振り返らない。「今、帰るとこだよ!」吐き捨てるように言い、台車を押す。ゴロゴロと音が響くが、足は止めない。
洞窟を抜ける。光が戻る。空気が軽くなった。
「……はぁ……」外に出た瞬間、息を吐く。
「死ぬかと思った……」
「だから言っただろ……」ガルヴァンがかすかに笑う。
リオンはヘリを見上げ、小さく呟いた。
「……プランBだな」
腰の無線機を取る。「こちらリオン」
ノイズ。すぐに応答。〔こちらヘリ、受信中〕
「プランBだ」リオンは短く言う。一拍。「荷物を下ろせ」
〔了解〕即答だった。
ヘリが上空で旋回し、風が巻き起こる。やがてロープが降りてきた。吊るされたコンテナ。
「……おい」ガルヴァンが薄く目を開ける。「何を用意してる」
「交渉がダメなら……」リオンは苦笑する。一拍。「別の方法だ」
コンテナが地面に着いた。ドンと重い音。ロックを外し、ゆっくりと開く。
中にあったのは特別兵器。
「……嫌な予感しかしない」ガルヴァンが顔をしかめる。
リオンはそれを手に取った。「安心しろ」真顔で言う。「今回は、ちゃんと考えてる」
その言葉が一番信用できなかった。
背後、洞窟の奥から再び気配。聖龍は、まだそこにいる。
リオンは装備を構えた。「……第二ラウンドだ」




