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スキル《家転移》で元傭兵の俺は静かに笑う。  作者: 山田 ソラ


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第259話 空を行く供物

 王城・ヘリ発着場(仮)。


「……本気でこれで行くのか」ガルヴァンが呆れた声を出す。


 目の前にはヘリ。そして山積みの肉。


「当然だ」リオンは真顔だった。「交渉だぞ?手土産は必要だろ」


「量がおかしい」ガルヴァンは荷台を見る。


「ドラゴン相手だぞ。規模感を合わせた」


「合わせるな」


 木箱が並んでいる。中身はすべてイノシシ型、熊型モンスターの肉。選び抜かれた"美味しい肉"だ。


「これなら食える」リオンが頷く。「誰とも会話してないからな」


「基準が狂ってる」ガルヴァンが小さく溜息を吐く。


 その時、フィーナがやって来た。「準備は万全ですね」にこりと笑う。


「お前も来るのか」ガルヴァンが低く言う。


「案内役ですから」当然のように答えた。


「聖女が前線に出ていいのか」リオンが眉をひそめる。


「聖龍の場所は私しか正確に知りません」一拍。「それに……」少しだけ笑う。「あなた一人では不安です」


「余計な一言だな」


 やがて全員が乗り込む。ローターが回り始めた。


ドドドドド……


 風が巻き上がる。リオンは窓の外を見た。「……久しぶりだな、この感じ」


「逃避行か?」ガルヴァンが言う。


「違う」一拍。「仕事だ」


 ヘリが浮かび上がり、王城が遠ざかる。空へ、一直線に。

 

 道中、フィーナが地図を広げた。「目的地はここ」山脈の奥深く、人の手が入らない領域だ。


「完全に未踏だな」ガルヴァンが言う。


「はい」フィーナは頷く。「だからこそ、"いる"のです」


 リオンは肉の箱を見た。「……これで機嫌取れるか?」


「相手は聖龍ですよ?人の常識は通じません」


「だよな」


 しばらくの沈黙。エンジン音だけが響く。


「……なあ」リオンがぽつりと呟く。


「なんだ」ガルヴァンが答える。


「もし会話できなかったら」一拍。「どうする」


「全力で逃げる」ガルヴァンは即答した。


「だよな」


「賢明です」フィーナが小さく笑った。


 やがて山脈が見えてきた。巨大な岩の連なり、雲を突き抜ける高さ。


「……でかいな」リオンが呟く。「ここにいるのか」


「ええ」フィーナは静かに言う。「この先に……」


 ヘリが高度を上げる。空気が変わった。重く、張り詰める。


「……来るぞ」ガルヴァンが低く言う。


「……いよいよか」リオンは息を吐いた。


 肉を満載したヘリは、神話の領域へと足を踏み入れた。

 交渉か。それともただの無謀か。

 答えは、すぐそこにあった。




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