第256話 王命の裏事情
王城・執務室。
「……決めた」リオンは静かに言った。
「その言い方は碌でもない」ガルヴァンが嫌な顔をする。
リオンは紙を取り出した。すでに命令書が書かれている。
「討伐命令だ。対象は……」一拍。「イノシシ型と熊型モンスター」
「理由は?」ガルヴァンが目を細める。
沈黙。リオンは視線を逸らした。
「……危険性が高い」
「ほう」
「本能優先で対話不可」
「なるほど」
さらに沈黙。ガルヴァンが一歩詰める。
「本音は?」
リオンは観念した。
「……肉が食いたい」
即答だった。
「王命の理由がそれか」ガルヴァンは顔を覆う。
「重要だろ」
「重要だが順序が違う」
「会話できるやつは食える気がしない。情が湧くからだ。だが、あいつらは違う」リオンは真顔で言う。「つまり……」一拍。「合法だ」
「言い方をやめろ」
しかし、論理は通っていた。
「……確かに」ガルヴァンはため息をつく。「危険個体の排除は必要だ」
「だろ?」
「だが"動機"が軽い」
「軽くない。死活問題だ」リオンは椅子にもたれた。
その後、正式な命令書が回った。
【討伐命令】
【対象:イノシシ型・熊型モンスター】
【理由:高危険度・対話不能個体の排除】
【備考:肉資源としての有効活用を推奨】
「最後の一行いらんだろ」ガルヴァンが書類を見る。
「大事だ」
数日後。王都近郊から討伐隊が戻ってくる。荷車には大量の肉。
王城・食堂。久しぶりの光景。焼かれた 肉、香ばしい匂い。
リオンはゆっくりとフォークを持った。一口、噛む。
「……うまい」
心の底からだった。
「……確かにうまい」ガルヴァンも食べる。
「だろ」
「……罪悪感ゼロだ」リオンは少しだけ目を閉じる。
「そこを強調するな」
しかし、表情は明らかに軽くなっていた。
「これでいける。食生活、解決だ」
「結局そこか」ガルヴァンが呟く。
しかし、もう一つ、変化があった。討伐隊の報告だ。
「対象個体、確かに凶暴。被害減少が見込まれます」
「結果的には正しい」ガルヴァンがリオンを見る。
「だろ?」リオンは肉を見つめた。「……使い方次第、か」
特典。それは厄介だが確かに、国を動かしていた。
「だが覚えておけ」ガルヴァンは苦笑する。
「何を」
「その理屈、外で言うな」
「……分かってる」
リオンはもう一口食べ、満足そうに頷いた。
王の決断は時にとても個人的な理由で動いていた。
そしてそれが意外と間違っていないのが、一番タチが悪かった。




