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スキル《家転移》で元傭兵の俺は静かに笑う。  作者: 山田 ソラ


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第252話 境界線の向こう側へ

 王城・執務室。


「……特典」


 リオンは机に肘をつき、呟いた。「動物と会話できる能力。……なら」顔を上げる。「どこまでだ?」


「やめろ」ガルヴァンが嫌な顔をする。


「絶対ろくな方向に行かない」


「もう行ってる」即答だった。


 リオンは立ち上がった。「動物がいけるなら、次は当然……」一拍。


「モンスターだ」


 沈黙。


「却下だ」ガルヴァンが即座に言う。


「危険度が違う」


「分かってる」


「ならやめろ」


「だから確認する」リオンは指を立てた。


「戦う気はない。会話できるかを確かめるだけだ」


「その"だけ"が危ない」ガルヴァンは目を細める。


 数分後、結論が出た。


「……俺も行く」ガルヴァンが剣を取る。


「一人で行かせる方が危険だ」


「正解だ」


 城外・森林地帯。夜。


「……久しぶりだな」リオンが呟く。王としてではなく、ただの一人として来るのは久々だった。


「気配はあるか」ガルヴァンが低く言う。

リオンは目を閉じた。


「……いるな。小さいのが」


 草むらが揺れ、現れたのは小型のモンスター、ゴブリン。警戒した目をしているが、すぐには襲ってこない。


「……行くぞ」


 リオンが一歩前へ出た。「おい」静かに声をかける。

 沈黙。ゴブリンが首を傾げた。その瞬間。


『……なんだ?』


 聞こえた。リオンの目が見開かれる。


「……マジか」


「どうだ」ガルヴァンが即座に聞く。


「……喋った」


「は?」


『人間?』ゴブリンが警戒しながら言う。


『襲うのか?』


「……いや」リオンはゆっくり手を上げた。


「話しに来ただけだ」


 ガルヴァンは横で固まっている。「……おい。今、何て言った」


「"襲うのか?"だってよ」


「……通じてるのか?」


「ああ」


『変なやつだな』ゴブリンが言う。『普通は逃げるか、殺し合いだぞ』


「それは否定できないな」リオンは苦笑した。


「……あり得ん」ガルヴァンが小声で言う。


「モンスターと会話?」


「できてる」


 リオンが一歩近づく。ガルヴァンが止めようとするが、ゴブリンは動かない。むしろじっと見ている。


「お前ら、何してるんだ」


『食うもん探してる』即答だった。


『腹減るんだよ』


 リオンは少し黙り、小さく呟く。


「……そりゃそうだな」


「会話成立してるのか……」ガルヴァンが信じられない顔をした。


「してる」


『お前、変だな』ゴブリンが言う。


『怖くないのか?』


「……今はな」リオンは少し考えて答えた。正直な言葉だった。


 森の音だけが響く。

 やがてリオンはゆっくりと振り返った。


「……確認できた」


「ああ」ガルヴァンが頷く。


「最悪だな」意見は一致していた。


 リオンは空を見上げる。


「動物だけじゃない。モンスターもか……」


 つまりこの世界の"生き物"ほぼすべてと、意思疎通ができる。


「使い方次第で、国が変わるぞ」ガルヴァンが静かに言う。


「もう変わってるだろ」リオンは苦笑した。


『帰るのか?』ゴブリンが聞く。


「ああ。またな」


『……変なやつだ』


 森を離れる。夜風が吹く。


「……特典」リオンはぽつりと言った。


「とんでもねぇな」


「ああ」ガルヴァンが短く答える。


「これはもう……災害級だ」


 リオンは苦笑するしかなかった。


 しかし、同時にこの力の意味を少しずつ理解し始めていた。




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