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スキル《家転移》で元傭兵の俺は静かに笑う。  作者: 山田 ソラ


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第250話 わかってしまった代償

 王城・裏庭。


「……続けるぞ」リオンは真顔だった。


「本気か?」隣でガルヴァンが腕を組む。


「条件を調べる。中途半端が一番危険だ」


 妙に理屈は通っていた。

 まずは牛舎。のんびりと草を食む牛たちに、リオンが近づく。


「……おい」


 一頭が顔を上げた。


『なんだ?』


 即答。リオンは目を閉じた。「……聞こえる」


「何と言っている」ガルヴァンが淡々と聞く。


「"なんだ?"だ」


「シンプルだな」


『腹減った』別の牛が言う。


『草もっとくれ』


「……要求もする」


「当然だろうな」


 次は豚舎。元気よく動き回る豚たちに声をかける。「おい」


『おっ、人間だ』

『餌か?』

『腹減ったぞー』


 一斉に喋り出した。


「……うるさい」


「それは想像できる」ガルヴァンが呟く。

鶏小屋へ。「……おい」


『朝じゃないぞ』

『まだ寝る時間だ』

『光が足りん』


「時間感覚もあるな……」


 実験はさらに続いた。羊、犬、猫。すべて普通に喋る。


「……全部かよ」リオンは頭を抱えた。


「結論」ガルヴァンがまとめる。「動物全般と意思疎通可能。完全にだな」


「……ああ」


 その日の夜。食堂。

 リオンの前には、いつもの料理。肉料理。焼かれたそれ、香ばしい匂い。

 しかし、手が止まった。


『腹減った』

『餌くれ』

『生きてるぞ』


 さっきの声が、頭の中に浮かぶ。


「……」


 フォークが動かない。


「どうした」ガルヴァンが気づく。


「……無理だ」


「何が」


「食えない」


 沈黙。ガルヴァンは皿を見て、それからリオンを見た。


「……ああ」理解した。


「意思があるんだぞ」リオンは顔を覆う。


「普通に会話できるんだぞ。それを!!」

 

 言葉が止まった。


「今までと何が違う」ガルヴァンが静かに言う。


「知ったことだ」リオンは即答した。


 沈黙。それが全てだった。


「……野菜にする」


 リオンは皿を押しやり、パンと野菜だけを手に取った。「しばらく、これでいい」


 ガルヴァンは何も言わなかった。ただ、少しだけ視線を逸らす。


「……難儀な能力だな」


「ほんとにな」リオンは苦笑した。


 その頃、馬小屋では。


『あいつ、気づいたな』

『遅いくらいだ』

『人間ってやつはな』


 動物たちが、静かに話していた。

 王城の夜。一人の王は、新しい"常識"に適応しようとしていた。

 それは強さではなく、ただの優しさだった。


 そしてその代償は思っていたより、ずっと重かった。




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