第246話 癒やしを求めた結果、増える"神"
王城・工房。
「……限界だ」
リオンは机に突っ伏していた。「精神的に、もう無理だ」
神殿ラッシュ、聖女、議会、家族会議。全部まとめて、胃に来ていた。
「で、何を始める気だ」ガルヴァンが腕を組む。
リオンは顔を上げた。「癒やしだ」
「……嫌な予感しかしないな」
設計図を広げる。「新規魔導装置。ストレス軽減用。名付けて――ヒーリング・ボックス」
「やめておけ」ガルヴァンが即答した。
「まだ何もしてないだろ」
数時間後、完成した箱が机の上に置かれていた。やたらと可愛らしい装飾、無駄にキラキラしている。
「……なんでそんな見た目にした」
「癒やしだからだ」リオンは真顔だった。
「起動するぞ」
嫌な予感しかしない中、スイッチが押された。
カチッ。
静寂。そして……。
ぽんっ。
煙とともに、何かが現れた。
「……クマ?」
小さなぬいぐるみのような存在。丸い体、つぶらな瞳。完全に可愛い。
「……普通だな」ガルヴァンが拍子抜けする。
その瞬間、クマが光り出した。眩い光、無駄に神々しい演出。そして……。
「我を崇めよ」
高らかな声。
完全な沈黙。
「……は?」リオンの声が低くなる。
クマはふわりと浮かび上がった。「我は癒やしの象徴。崇め、祈れ。さすれば安寧を与えよう」
ガルヴァンがゆっくりと振り向く。
「……また神か」
「なんでだよ!!」
リオンは頭を抱えた。
クマはポーズを決める。無駄にキラキラしている。「供物は甘味を所望する。信仰は心から」
「……帰れ」リオンが即答した。
しかし、クマは消えない。むしろ続ける。「装着すれば、より深き加護を……」
「装着?」リオンが顔を上げた。
数分後、完成していた。
「なんでだよ」
クマ型の装着具、頭に乗せるタイプ。完全にアウトな見た目だ。
「やると思った」ガルヴァンが呟く。
「試す」リオンは迷わなかった。
クマを装着。ぴたり。
その瞬間、「おお……」リオンの顔が、少し緩む。「……なんか落ち着く」
「だろう」クマが偉そうに言う。「我を崇めよ」
「やっぱり外す」即外した。
その時、扉が開いた。
「リオン?」
入ってきたのはフィーナだった。数秒の沈黙。
「……何をしているのですか」低い声。
リオンの手にはクマ、机には設計図。完全にアウトだった。
「いや、これはだな」
「新しい宗教ですか?」即断された。
「違う!!」
フィーナが一歩近づき、クマを見る。クマが光る。
「我を崇めよ」
フィーナの眉がぴくりと動いた。「……増やすな」
静かに、しかし確実に怒っていた。「これ以上、神を増やさないでください」
「俺のせいじゃない!」リオンは即答する。
「あなたです」完全に断言された。
クマは気にせず続ける。「信仰は尊い。供物を……」
フィーナが無言で指を鳴らした。光の魔法。
ぴたり。
クマ、沈黙。
「封印しました」
「助かる」
フィーナはため息をついた。「王。精神安定は理解します。ですが……」じっと見る。「方法を間違えています」
リオンは視線を逸らした。「……はい」
「結論」ガルヴァンが小さく笑う。「お前は何を作っても神になる」
「やめろその呪いみたいな言い方」
こうして、癒やしを求めた結果。また一柱(未遂)が生まれた。




