第244話 条件成立、王の悪戯(記録付き)
王城・執務室。
「……条件付きだ」
リオンのその一言で、空気が変わった。
「条件、ですか?」フィーナは目を細める。「言ってみなさい」余裕の笑みだった。
リオンはゆっくりと近づき、小さく耳打ちする。
数秒後、フィーナの表情が止まった。
「……は?」
「内密だ」リオンは真顔で言う。「それを受けるなら、像の件は全部飲む」
フィーナはしばらく沈黙しやがて口元を歪めた。
「……フフ。フフへッ。いいでしょう。乗ります」
「やめろ、絶対ろくでもない」ガルヴァンが頭を抱えた。
その夜。王城・中庭。
月明かりの下、静かな空間。
「……で?」フィーナが腕を組む。「何をするつもりです」
「準備はいいか?」リオンが軽く手を上げた。
その瞬間、物陰から小さな影が飛び出した。
「いけー!!」
ラミだった。頭には骸骨のヘルメット。どこから持ってきたのか分からない、不気味な仕様だ。
「なっ――」
フィーナが反応する間もなく、もう一つの気配が現れる。
「きゃっ♪」
銀色の光が弾けた。フェンリル形態のリオナが、夜の姿で現れる。ただし、完全に楽しそうだった。
「突撃ー!!」ラミの号令とともに、フェンリル(リオナ)がどんと軽く前に出た。
「ちょっと待ちなさ――」
もふっ。
巨大な毛並みが、フィーナをすっぽりと包み込む。
「!?」
バランスを崩したところへ、ラミが飛びついた。
「捕まえたー!!」
「な、何を――」
フィーナ、完全に捕獲。その様子を少し離れた場所から。
ピコッ。
リオンが通信水晶を構え、真顔で記録していた。
「よし、いい絵だ」
「お前な……聖女だぞ」ガルヴァンが呆れる。
「だからこそだ」即答だった。
もふもふの中でフィーナがもがく。「ちょ、待ちなさい!離しなさい!と、トイレに……」
しかし、フェンリルは完全に遊びモード。 尻尾がゆらゆら揺れ、逃がす気はゼロだ。ラミはその上で笑い転げている。
「すごーい!動かない!」
「漏れれちゃう!!」
映像を逃すまいとリオンは必死にビデオを回す。聖女の下半身から黄色い液が流れ出し。
「完璧だな、聖女だから聖水か(笑)」
リオンは満足げに頷く。
「証拠も取れた」
「何の証拠だ」
「聖女の威厳崩壊」
ガルヴァンが吹き出した。
数分後、ようやく解放されたフィーナは、髪を乱しながらゆっくりと立ち上がった。
沈黙。
そして、顔を上げる。
「……フフ」低い声。完全に怒っていた。
「条件は達成だ」リオンは涼しい顔で言う。「約束通り、像の件は飲む」
フィーナは一歩踏み出した。「ええ、約束は守ります。ですが……」
目が細くなる。「これで終わりだと思わないことです」
「望むところだ」リオンは笑った。
その背後でラミはまだ笑い続け、リオナ(フェンリル)は満足そうに座っている。
精霊たちは大騒ぎだった。
『面白い!』
『聖女負けた!』
『もふもふ最強!』
「……もう誰も止められんな」ガルヴァンは天を仰いだ。
王都の夜は静かに、しかし確実に、カオスを更新していた。




