第243話 王の怒号と、神の無茶振り
王城・執務室。
机を叩く音が、重く響いた。
「ふざけるな!!ここは宗教国家じゃねぇ!!共和国だ!!」
リオンの怒声とともに、書類が散らばる。各種族からの"神殿建設申請"が山のように積まれていた。
「現状、半分くらい宗教国家だぞ」ガルヴァンが腕を組み、静かに言う。
「認めたくない事実を言うな!!」リオンは頭を抱えた。
「なんでこうなった……!」
「お前が放置したからだ」即答だった。
その時、扉がゆっくりと開いた。
「……フフ」
入ってきたのは聖女フィーナ。いつもの冷たい表情のはずが。
「フフ、へッ」
妙な笑い方をしていた。
「その笑い方やめろ。嫌な予感しかしない」リオンが嫌そうな顔をする。
「予感は当たっていますよ、王」フィーナは口元を歪める。
「……やっぱりか」
フィーナは一歩前に出て、わざとらしく咳払いをした。
「では伝えます」
空気がわずかに変わる。精霊たちがざわめいた。
『あ、これ神託だ』
『また来た』
「……マジかよ」リオンは顔をしかめる。
「ヘリオス様よりお言葉です」フィーナはにやりと笑い、はっきりと告げた。
「『我の像を、もっと壮麗にしろ』」
一拍。
「『金はリオンが出せ』」
完全な沈黙。
「……は?」リオンの声が、低く落ちた。
「……今、何て言った」ガルヴァンも固まる。
「金はリオンが出せ、です」フィーナは楽しそうに繰り返した。「フフ、へッ」
完全に煽っていた。
リオンのこめかみに青筋が浮かぶ。
「……あいつ。マジで言ってんのか」
「神託ですので、嘘ではありません」フィーナは肩をすくめる。「フフ」
リオンはゆっくりと立ち上がった。
「……断る」
即答だった。「一銭も出さん」
「神の命令ですよ?」フィーナの目が細くなる。
「知るか。自分で出せ」
「正論だな」ガルヴァンが横で吹き出した。
フィーナが一歩詰める。「ヘリオス様を侮辱し、さらに神託を拒否するのですか?」
「侮辱はした。神託は拒否する。一貫してるだろ」リオンは睨み返した。
「……フフへッ」フィーナの口元がさらに歪む。「いいですね、その顔。追い詰められてますね、王」
完全に楽しんでいた。
「……現実問題として、どうする?」ガルヴァンが咳払いをする。「放置すれば聖女が動く。従えば国庫が死ぬ」
詰みである。
リオンは深く息を吐いた。「……最悪だ」
「ちなみに」フィーナがすかさず言う。
「既に設計図は用意してあります」
「は?」
「高さ三倍、装飾五倍、信仰効率十倍です」
「なんだその無駄スペック」
リオンは天井を見上げた。「……ヘリオス。後で殴る」
精霊が小さく呟く。
『無理だよ』
『神だし』
「気持ちの問題だ」リオンは即答した。
「では王」フィーナは満足そうに微笑む。
「ご決断を。フフへッ」
完全に勝ちを確信している顔だった。
リオンはしばらく黙りやがて低く言った。
「……条件付きだ」
「ほう?」ガルヴァンが眉を上げる。
「条件?」フィーナも興味深そうに目を細めた。
リオンはニヤリと笑った。
「ただじゃ動かん。神にも、対価を払わせる」
空気が変わる。
今度は王のターンだった。




