第237話 聖女、怒りの来訪
ガルリオン共和国王都。
数カ月はガルリオン共和国は平和そのもので公務に疲れた、リオンは少し眠そうにしていた。
しかし、その日の王城は妙に騒がしかった。
「公王陛下!!」
執務室の扉が勢いよく開かれる。
飛び込んできたのは、息を切らした文官だった。
「大変です!」
リオンは机に突っ伏したまま、顔も上げずに言う。
「……今度は何だ。王都に巨大精霊が現れたとか?フェンリル増えたとか?議会がまた燃えたとか?」
文官は首を横に振った。
「いえ、聖女です」
リオンは、ゆっくり顔を上げた。
「……は?」
ガルヴァンも眉をひそめる。
「どこの国のだ?」
文官は機密扱いの地図を広げて答える。
「北東の神聖教国アストレアの聖女です」
その名を聞いた瞬間、ガルヴァンが小さく呟いた。
「……面倒なのが来たな」
文官は困り顔で答える。
「かなり」
リオンが嫌そうな顔をする。
「で?何しに来た?」
文官は、言いにくそうに口を開いた。
「公王陛下に謝罪を要求しています」
「誰に?」
「創造神ヘリオス様へ、です」
沈黙。
数秒後。
リオンは天井を見上げた。
「……あー」
ガルヴァンがため息をつく。
「言ったな、お前。北部の森で」
リオンは頭を抱える。
「神、絶対言っただろ。“リオンがゴミ神
って言ってた”って」
ガルヴァンは断言した。
「言ったな確実に」
その時、王城の外から怒鳴り声が響いた。
「王を出せぇぇぇ!!」
窓ガラスが震えるほどの声だった。
「ヘリオス様を侮辱した罪は重い!!今すぐ謝罪を!!」
リオンは椅子に深く座り直す。
「……元気だな」
ガルヴァンが窓から外を見た。
城門前。
そこには一人の女性が立っていた。
白い神官服、金色の長い髪。
そして、めちゃくちゃ怒っていた。
「ヘリオス様への謝罪を!!今すぐ!!王を出せ!!」
門番が完全に引いている。
ガルヴァンが戻ってくる。
「本物の“聖女”だそうだ。しかも、かなり怒ってる」
リオンは深く息を吐いた。
「……俺、会わなきゃダメ?」
ガルヴァンは即答した。
「ダメだ。逃げると国際問題になる。宗教“国家”だからな」
リオンは机に頭をぶつけた。
「くそヘリオス……」
その瞬間。
窓の外から声が響く。
「聞こえているぞ!!ヘリオス様を侮辱するな!!」
聖女だった、どうやら耳がいいらしい。
ガルヴァンが真顔で言う。
「……詰んだな」
リオンは天井を見つめた。
「誰か代わりに謝ってくれない?」
ガルヴァンは首を振る。
「無理だ。本人限定だ」
外では聖女の怒号が続いていた。
「王を出せぇぇぇ!!」
王城の平和は完全に終わった。




