第236話 リオン、創造神を罵る
北部山岳地帯の森。
夜の焚き火は、まだ静かに燃えていた。
フェンリルとなったリオナは、子供達を乗せたまま丸くなり眠っている。
ラミとゼオンは完全に夢の中だった。
その光景を見ながら、リオンはぽつりと言った。
「……やっぱり、あいつはゴミだ」
沈黙。
リゼが首を傾げる。
「誰の話?」
リオンは焚き火を棒で突きながら答えた。
「創造神ヘリオス」
その瞬間、森の空気がぴたりと止まった。
ルナが目を丸くする。
「え、神様よ?」
ガルヴァンは額を押さえた。
「お前な……」
だがリオンは止まらない。
「いや、聞いてくれ。俺は前世で一回、あいつに会ってる。そして、確信した」
真顔で言った。
「あいつ、完全に適当な奴だ」
ガルヴァンが深く息を吐く。
「……どう適当なんだ」
リオンは指を折りながら数え始めた。
「まず、人を転生させる理由が雑。世界の管理が雑。説明も雑。最後に“面白い”で投げた」
リオンは断言する。
「完全に丸投げ神だ」
リゼが吹き出した。
「ふふっ……」
ルナも笑いを堪えている。
ガルヴァンは遠い目をした。
「創造神に向かってそこまで言う王は初めて見た」
リオンはさらに続ける。
「しかもな最初の発言が……」
声色を真似する。
「『汝の生涯、戦いに塗れしものよ。死後にひとつだけ望みを与えよう。欲するものは何だ?』だとよ」
全員、沈黙。
焚き火がパチパチ鳴る、ガルヴァンがゆっくり言った。
「……リオン。それはかなり雑な神では?」
リオンは頷く。
「だろ?だから言ってる」
真顔で結論を出す。
「あいつはゴミ神だ」
その瞬間、森の精霊達がざわついた。
『え』
『言っちゃった』
『王様言っちゃった』
『創造神だよ?』
精霊達が慌て始める。
リゼは肩をすくめる。
「でも否定材料がないわね」
ルナも真顔で言う。
「娘がフェンリルだし」
ガルヴァンは空を見上げた。
「……神よ。もし聞いているなら私は関係ありません」
リオンは鼻を鳴らす。
「文句あるなら直接来い」
その時、森の奥から精霊の声が小さく響いた。
『多分』
『笑ってるよ』
『ヘリオス様』
リオンは顔をしかめる。
「……やっぱりゴミだ」
焚き火の火が揺れる。
北部の森には、創造神を罵るリオンの声と、精霊達の困った笑いが静かに広がっていた。




