閑話 精霊会議その一:精霊門って便利だけど面倒くさい
ここは、人の目に映らぬ場所。
精霊達が集まる《精霊域》の一角。
中央に浮かぶのは、淡く光る円形の門。
そう、《精霊門》である。
『でさー、また聞かれたんだけど?』
風の精霊シルフが、くるくる回りながら言った。
『“この門、どこでも行けるんですか?”って』
『無理に決まってるでしょ』
土の精霊ノームが即答する。
『そんな仕様だったら管理が死ぬ』
『だよねー』
『だよねー』
火の精霊イグニスと水の精霊ウンディーネが、同時に頷いた。
『今の仕様はシンプルよ?』
ウンディーネが指(っぽい何か)を立てる。
『行き来できるのは王都 ⇄ 北部山岳地帯の森、この二点のみ』
『増やしたら迷子出る』
ノームが真顔で言った。
『精霊が迷子とかシャレにならん』
イグニスも真顔だった。
『でもさー』
シルフが門をぺしぺし叩く。
『人間側は“瞬間移動!”とか思ってるよね』
『思ってる』
『思ってる』
『実際は……』
ウンディーネが間を置く。
『精霊が全力で調整してるから成立してる。湿度。気圧。魔力。全部合わせてる。地味作業で全然、報われない』
精霊達の間に、静かな共感が流れた。
『で、もう一個の条件』
ノームが咳払い(のような動作)をする。
『使用できるのは精霊とリオンが許可した人達のみ』
『ここ大事。超大事』
『勝手に入ろうとしたら?』
シルフがニヤニヤする。
『弾く』
『弾く』
『弾く』
『最悪、森のど真ん中にポイ』
『それ最悪じゃない?』
『人によってはご褒美』
『やめなさい』
ウンディーネが即ツッコミを入れた。
『でもさぁ』
イグニスが腕を組む。
『リオン、許可出す基準ゆるくない?』
『結論!』
シルフがビシッと指を鳴らす。
『精霊門は便利!でも!管理は地獄!以上、現場からでした』
その瞬間、精霊門がふわりと光る。
『あ、誰か来る』
『リオンじゃない?』
『また仕様聞かれる?』
『聞かれるね』
『聞かれるね』
精霊達は一斉にため息をついた。
それでも門は、今日も静かに繋がっている。
王都と、北部山岳地帯の森を。
なお、精霊達の残業は減らない。




