第222話 断れぬ理由と、貼られた烙印
王都・議会堂。
天井の高い円形議場は、この日、異様な熱を帯びていた。
理由は一つ。
「王が、各国からの婚約を拒否する?」
ざわり、と声が広がる。
リオンは、中央席に立っていた。
「正式な返答としては、そうなる。外交目的の婚姻は、行わない」
静かな声だったが、議場は一瞬で荒れた。
「それは、独断ではないのか!」
「国家の利益を、私情で捨てるのか!」
「神の子と持て囃され、選り好みか!」
矢継ぎ早の非難。
ガルヴァンが、横から低く言う。
「冷静に話せ」
止まらなかった。
一人の人族議員が、声を張り上げる。
「王!あなたは、人族の王ではないのですか!」
場が、静まり返る。
「……どういう意味だ」
リオンが、低く問う。
議員は、一歩前に出た。
「現在、王の周囲にいるのはエルフ、狼族……人族の正妻は一人もいない。それで、人族国家からの婚約だけを拒むのは明確な……」
一瞬、間が置かれ。
「人族差別ではありませんか」
その言葉が、議場を凍らせた。
リオンは、言葉を失う。
違う。
そんなつもりは、微塵もない。
言い返せない。
ガルヴァンが一歩前に出る。
「その指摘は、短絡的だ。王は、特定の種族を拒んでいるのではない。“外交婚”そのものを、拒んでいる」
だが、議員は引かない。
「ではなぜ!すでに、内側の婚姻が存在する!それが人族でない以上、公平性を欠く!」
議場が、二分される。
「一理ある」
「いや、暴論だ」
「だが外から見れば……」
リオンの胸に、嫌な感覚が広がる。
これが政治か。
個人の意思は、すぐに“意図”にすり替えられる。
「……俺は」
ようやく、声を出す。
「誰かを、種族で選んだことはない。だが……」
視線を、議場全体に向ける。
「国家のために、結婚する気もない」
沈黙。
納得の空気ではなかった。
議会後。
廊下で、リオンは壁に手をついた。
「……差別、か」
ガルヴァンが、重い声で言う。
「強い言葉だ。一度貼られると、剥がすのは難しい。どうする?」
リオンは、目を閉じた。
「……考える。答えを出さないと、もっと燃える」
平和な国。
しかし、王の選択一つで簡単に歪む。
リオンは、覚悟し始めていた。
この問題は、“断る”だけでは終わらない。




