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遺物管理局捜査官日誌  作者: 黒ノ寝子
第十一章 女王と黒猫
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ミヤリ捜査官の簡易報告書・7


 遠い目をしたガンド捜査官の話を聞いて、警戒度をさらに引き上げたわ。


 単独であっても私の手に負えない二人がコンビを組んでいる。そして、コンビを組んだ二人は、遺物管理課長、ローゼス管理官、ガンド捜査官に加えてクレア捜査官まで手玉にとれる実力と。


「なるほど、それでボーディ前局長と、デルシー支配人が直々にお迎えに行くことになったわけですか」


「どういう経緯か謎だけど、実力だけ見たら妥当な人選かな。ただ、僕はすごく不安だけど」


「保護者役として相応しい方たちだと思いますが」


「だからこそ、不安。手のかかる子ほど可愛いっていう旧世界的格言みたいな感じで、アドニスとユレス君のことは特に気にかけているし、だから子守猫的な行動もしかねないと思う。

 警備局の前では言いづらいことだけど、ボーディ前局長も支配人も、事件も騒動も何も起こらなかったように取り繕って事態を収拾できる実力者だよ。直接赴くってことは……そういうことじゃないかな」


 なるほど、自分たちがやらかしても、アドニス管理官とユレス捜査官がやらかしていても、どうにかしてしまえるということね。


 つまり……逸脱した行動をとったとしても無かったことになると。


「マークも同行しているので、自重……しませんね、マークが」


「自重すると言ってくれることを期待したけど、しないよね、きっと」


「はい。ドルフィーのためという大義名分がある以上、マークはどこまでもやれる男です。世界推進機構の規定より、大自然の掟が優先されるのが自然環境課の方針ですし」


「大自然の掟か……それ言われると、僕は対応不能だよ。息子の方が体現しているかもしれない」


「ロリーナの遊び相手ができて良かったです」


 旧世界の動物映画で見た子犬がじゃれ合っているような様子なので、見ていて心が和むわ。


 どう頑張っても少年少女の初々しい交流には見えないけれど、健全でいいと思う。対して私たちは、健全とは程遠いケダモノと変態とめんどくさい女を手玉に取って、この際どい緊急事態を乗り切らなければならない……。


 アレク監察官から事情聴取した報告書をガンド捜査官に見せたけれど、結論は出ているわ。ガンド捜査官もそうだったようで、同時に言った。


「無理だね」


「無理ですね。隠ぺい工作や小細工は逆効果で、事態が悪化するとしか思えません。なので……ここは、大自然の掟に任せるのはいかがでしょうか」


「……ごめん、ミヤリ捜査官。僕は大自然の掟に関しては初心者だから、最初から説明してくれないかな?」


「ここの転移装置が封鎖されたのはご存じですか?警備局長命令とのことですが、おそらくはアレク監察官を封じるためと推測します。

 この事態は警備局長ですら想定外でしょうし、一手誤るだけで最悪の危機も招きかねません。ユレス捜査官の危機を知った瞬間、状況そっちのけで突入することが確実なアレク監察官、それからゼクスもまとめて封じるためではないでしょうか」


「……妥当だと思う。ああ、そっか、目的と手段をすり替えて、罠に嵌めたのか。

 ケイト監察官にアレク監察官を護送させて<救世の箱舟>に送り込んで探りを入れる。と見せかけて、アレク監察官の注意を捜査対象であるケイト監察官に向けさせる。という納得しやすい状況を作りつつも、隠された目的としては、アレク監察官を筆頭に、事態を引っ掻き回しそうな人たちをここに封じ込めて手出しさせない状況にすると。

 転移装置が使えない場合、ここから最寄りの生活区まで半日以上の距離があるからね」


「はい。険しい山道も含めた自然区を行く必要がありますので、そう簡単には脱出できません。とはいえ、マイクルレース場の最難関コースに出場して優勝を争う腕前の方たちなので、やろうと思えば最速で突破できるのが困ります。

 だから、いっそクラフターを起動できないようにしてしまうのはいかがでしょうか。クラフターなしでも自然区を踏破できそうな人たちですが、ユーリ捜査官レベルのサバイバル技術が無いと、大自然の掟がすべて片づけてくれることも期待できます」


「なんか完全犯罪計画みたいな話をされたけど、ここも疑似的に隔離封鎖してしまえという方針は理解したよ。でも、クラフターの起動停止はそう簡単にはできない……ようでいて、警備局が説得できたら可能だし、警備局長の表に出さない思惑がそうだと伝えたら、説得できそう?」


「説得します。お任せください」


 幸いにも、ここに来ている特務課第三班とはリマを通じて馴染みでもあるし、過去の事件を通じて私に信頼感を持ってくれているので、リマを呼び出して班長と直接話したら了承を得られた。


 でも、油断はできないわ。


 第三班は、元班長であるアレク監察官の恋路を応援もしているので、ようやく結婚を前提に付き合い始めたのにその邪魔をするのはと渋られた。

 リマはアレク監察官が怪しんでいるし、その気になったら誰も止められないと言うので、クラフターの件は任せて私が直接対峙することにしたわ。


 アレク監察官は事情聴取した部屋で待機したままなので、戻ってすぐに切り込んだ。


「遺物管理局捜査官として、アレク監察官に冷静な行動と協力を要請します。対価は交渉次第ですが、自分本位な単独行動をなさった場合、今後の報酬に響くとお考え下さい」


「……なるほど。ミヤリ捜査官がそう切り出してくるということは、私の可愛い奥さんが事件に巻き込まれましたね?」


「いつ気づいたかお聞きしたら答えてくださいますか?」


「すでに成立した取引、お嬢様制服の映像次第です」


「その件に関しては、状況が変わる前に成立した取引ですので、正当な対価としてお渡しします。信頼の証に今差し上げましょう」


「分かりました。何でも答えます」


 先に取引しておいて良かったわ、お互いに。


ここまで読んでくれてありがとうございました。

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