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遺物管理局捜査官日誌  作者: 黒ノ寝子
第十一章 女王と黒猫
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ミヤリ捜査官の簡易報告書・6


 リマがマークに通信文を送ると言うので、私はクレア捜査官に聞いてみようとしたところに、ガンド捜査官が来た。


「事情聴取を邪魔して申し訳ない。ミヤリ捜査官に相談したいことがあって、少し借りるね。ケダモノ君は一応いい子にしてくれているんだけどね……」


「ケダモノ駆除に人手が必要でしたら、いつでも助力いたします」


「駆除より躾優先かな。じゃあ、失礼」


 部屋を出る前から気づいていたけど、ガンド捜査官の顔色がものすごく悪いわ。だから、遺物管理局用に確保された部屋に入ってすぐに質問した。


「ゼクスのことではなく、別件で私に相談したいことがあるということでよろしいですか?」


「察してくれて助かる。正直言って、僕は今、気絶したい気分だけど、気絶している間に世界が滅びかねないから、怖すぎて気絶もできないんだ。

 あ、ゼクスは紳士的にロリーナと母猿と交流しているし、同席している自然環境課の人も交えて自然生物ネタで盛り上がっているから大丈夫。

 ただ、いい子にしていなかった子たちがいてね……アドニスとユレス君が隔離封鎖されたアイス・パレスにいるんだ」


「はい?」


 意味が分からな過ぎたけれど、取りあえずこれ読んでと押し付けられた報告書を読んで、無理やり理解した。


「気絶したくなるくらいに、危機的事態ですね」


「僕は見た瞬間に、意識が遠のきかけた。姉御が酷い。休暇中でも親友のアドニスのために頑張れって、巻き添えにしてきたんだ」


「私には何の連絡もないのですが、配慮されたのでしょうか」


「<救世の箱舟>でも何か起こるかもしれないし、ここで何かあった場合はミヤリ捜査官に丸投げするしかないから、こっちに専念するようにってことで、余計な情報は回さないことにしたんだろうけど……報告書を送って来た姉御とローゼスは、ここにゼクスとアレク監察官がいることを知らないようなんだ。

 あの二人が、ユレス君がアイス・パレスに閉じ込められたことを知ったら、どう動くか分かりやす過ぎたから、ミヤリ捜査官にも教えておかないとまずいと思って言うことにした」


「配慮のようでいて重荷を背負わされたような気がしますが、知らない方が危険であることには同意します。ですが、何をどうすればいいものか。想定外にもほどがありますし、よりにもよってこの組み合わせとは……」


 ユレス捜査官とアドニス管理官のせいではないけれど、場所が悪すぎるわ。

 二人の相棒のAIとアイス・パレスに埋まっている旧世界遺跡の相性がとんでもなく良すぎて、脳筋どもの動向によっては、世界の危機的事態もあり得る。


 ガンド捜査官が複雑なため息をついた。


「最悪の事態に至っても、ユレス君とアドニスだけは確定で生き延びるだろうけど、フロギストンが起動して浮上までしてしまう可能性もあるのが怖い。願わくば、二人に絡む馬鹿というか、冤罪捜査官あたりが突っかかって行っても消し炭くらいで収まればいいけど」


「暴走する脳筋は、自ら炎の中に飛び込んでいくものです。理性を持つ人間であれば、争いの現場から遠ざかるか、せめて通報して遠巻きに見守るものですが、理性の無い脳筋は、喜びの雄たけびを上げて仲間入りするのが旧世界的様式美ですし」


「そんな殺伐とした状況は旧世界にしかありえないと言いたいけど、脳筋の聖地だと無いとは言い切れないのが辛い。

 ユレス君が一緒だし、アドニスは保護者的使命感で頑張るだろうけど、ドジっ子がどんなドジ踏むか分からなくて怖すぎる」


「ユレス捜査官が一緒ですので、アドニス管理官のドジも込みでどうにか対応すると思いますが……想定外すぎて不安な組み合わせですね。

 私は、お二人が組んで行動しているのを見たことがありませんが、ガンド捜査官はご存じですか?」


「遺物管理局で組ませてはいけない組み合わせ第一位の二人だよ。身体能力的にも、自衛能力的にもぎりぎりな二人だし、互いに相手よりましだと思っているし、互いに相手の面倒を見てやらないといけないと思っていることもあって、ユレス君がうっかり事件に落っこちたらアドニスも一緒に落っこちるし、アドニスがドジ踏んだらユレス君も一緒に被害にあうんだ。

 という経験と自覚が両者にあるから、お互いしかいない場合、二人とも何もしないのが最善って理性的に判断して動かないはずだけど、保護者不在で武闘派集団の抗争の中で何もしないのは危険すぎる。

 二人がじゃなくて、二人の周囲が危険って意味だけど、相棒のAIが保護者として行動する閾値がものすごく下がるんだよ」


 頼もしいと言うより、過剰戦力という単語が脳裏をよぎったわ。

 戦略級兵器を運用できるAIとマスター保護のためなら何でもする子守猫の組み合わせだと、何をどこまでできてしまうのか、経験の浅い私が想像するのも限界がある。

 

「参考に、お二人で動いたときはどうなりますか?」


「旧世界の超大作映画みたいなことが実演されると思う。

 アドニスは旧世界映画専門官とか言われるくらいに旧世界作品に通じているし、ユレス君は祖父のユーリ捜査官とかボーディ前局長の薫陶を受けて、旧世界の超大作映画は全部見ているんだ。

 だからアドニスの語りにもついていけるし、共通の文脈で会話できるから、咄嗟にそっちのノリでやらかしてくれるんだ。

 平和的な作品から引用してくれるならいいんだけどね……。誰もいない家に取り残された子どもが、犯罪者から家を守ろうとして罠を仕掛けて大捕り物した系の映画を実演されたときは、僕と姉御も罠にかかって酷い目にあったよ。

 二人は、バレル課長に心労かけたお詫びとお礼の品を用意しようとして、事前にネタバレしたくないから罠を仕掛けてこっそり作業していたようだけど、結果的にバレル課長は気絶するし、ローゼスは最初に撃沈されて僕たちに緊急支援要請するしで大騒ぎになったなぁ……」


ここまで読んでくれてありがとうございました。

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