閑話 邪神と永遠を求める者達①
久々の閑話、そろそろ会話しろよぉ。
テュポーンは陽の通らない暗い森の中を歩いていた。
そこは黒曜の森、アンデッドが跋扈し視界すらろくに確保できないこの森はアンデッドを避けていかないと確実に死に至ると言われるほどの危険地帯と呼ばれている。
さらにはあの5大大国の1つであるオワリの領地にもなっている。そして元はオワリの初代王に仕える最強の武装組織、天廊衆というという集団が住処にしている。この集団は王を守るために永遠を求めるという集団だったが今では王のもとを離れ永遠を求めるという集団へと変化している。
そんな歴戦の戦士すら避けるという世界屈指の危険地帯である黒曜の森を全く恐れずにテュポーンは歩いていた。
しかし前述の通りこの黒曜の森には天廊衆がいる。彼らは侵入者を絶対に許さず殺害する。
今回もテュポーンという侵入者を見つけてそれを排除しよう、と天廊衆が数人周囲に集まっていた。
しかしテュポーンもそのことには気がついている。分かった上で放置しているのだ。
襲われるのを待っているのだ。だからわざわざ挑発するように目立つように動き回っていた。
天廊衆もそれを理解して沸き立つような殺意を出している。それでも未だ襲いかかっていない理由はテュポーンの強さを理解しており、この数では勝てないからと今仲間を集めているのだ。
しかしテュポーンは彼らが思うほど我慢強くはなかった。
はぁ、とため息をつくと天廊衆が隠れている樹の上を睨み、苛立っている様子で声を掛けた。
「いつまでそうしているのだ猿共め。さっさと降りてくるがいい」
「何!?」
「我らの隠形を破るだと!」
「くっ、こうなっては仕方がない。者共! 一斉にかかれ!」
全部で5人の人間が現れた。彼らは皆少しおかしな格好をしていた。
全員が白い行衣を着込み、服と同じように白い猿の面をつけていた。
「無法様はまだか!」
「まだかかる! 流石に距離が遠いからな!」
「死に絶えろ」
5人の人間達が一瞬で死ぬ。彼らは知らないがこれこそがテュポーンの権能、『宣告』。
言葉を聞いた者をその言葉に従わせる。
かつてテュポーンは邪神などではなかった。とある事情により他の神々と敵対し邪神となったのだ。
しかしテュポーンはそれを後悔したことは無い。自らを正しいと定義しそれ以外を間違いと決めつけていた。
「……間に合わなかったか」
「あぁその通りだが気にするな。弱いから死んだだけよ。貴様が気にすることではない」
新たに現れたのは白い行衣の上から同じく白い羽衣を着た鷲の面の男だった。
「……あれらは我が弟子よ。それの敵討ちをするのは当然であろう?」
「……貴様もか、弱ければ死ぬ、当然であろう? それをなぜ理解できぬのか……」
「それは傲慢というものよ。我らは人助け合わねばならぬ、それが定命の定めよ」
「……やはり人間の考えは理解できんな。強者こそが全てであろう? それが理解できないとは……」
「強者の理屈よな。我らは弱者。故に永遠を求めるのよ」
「……不死か、矮小なる人間如きがそこに辿り着く方法には心当たりがあるぞ」
「……何だと? 貴様本気で言ってるのか?」
どうやらこの男はどうやら俺を疑っているらしい。無礼なことだ。
「……頼む、俺に教えてくれ!」
「我らにもぜひ!」
「お願い致します!」
いつの間にか人間が増えていた。……しかしそうだな、今度はこいつらを使って遊ぶのもいいかもしれんな。
エリクシール対策としては非常におもしいことになるだろう。
人間という生き物は矮小で強欲だが数が揃うと侮れない力を発揮する。俺もその力に負けて封印されたのだからよく知っている。
1度失敗したにもかかわらず2度も失敗するようではそれはただの間抜けだろう。
俺は全知全能の神になるのだ。
そのためならば全てを利用して見せよう、全てを切り捨てて見せよう。俺はもとより邪神、人間なんぞ俺の使い捨ての道具に過ぎないのだから。
「いいだろう教えてやる。その代わり貴様俺の配下となれ」
「承知した」
「ならば教えてやる。実は不死にも色々と種類がある、1つが首をはねられようが、心臓を穿たれようが死ぬことも無く、老いもしないこの世にしがみつく不死。そして2つ目は死んだ後に記憶と人格を保存したまま転生するこの世とあの世を巡る不死。さぁどちらがいい?」
「……この世にしがみつく不死だ。我らは我らでいたいのだ。転生ではそれは我らではなくなる」
「ならばこれをくれてやろう」
「……これは?」
「冥府の水よ。これを口にすれば生と死の境界に立つこととなる。正式な不死とは言えぬが飲み続ければ心臓を潰されない限りは生き続けるだろうさ」
「……では心臓を潰しても死なぬ不死は……苦悶の竜を倒すか、奈落にでも落ちてみるといい。おすすめは奈落だ。行き方でも教えようか?」
「……頼みたい」
頬が吊り上がるのが分かった。これならしばらくは退屈しなくて済みそうだ。
「奈落は嘆きの谷の底に行け、そこに底の見えない大穴がある。その先に奈落はある。そしてそこにある奈落もみじという黒いもみじを持ってこい。そうしたら不死の薬を作ってやるぞ?」
「おおっ!……おおっ!……ついに不死が叶うのか! ありがたい! ありがたい!」
なぜ泣くのだ。俺には理解できん。死など人間ならばいつかはくるものだろうに、それを恐れるなど不合理極まりないことだと思うのだがなぁ……
まぁいいだろう。せいぜいあの分からずやの女神の鼻をあかしてやろう。
良ければもう一個の作品も読んでやってください。




