VS狂気の触手
もう一話だけ続きます。
長くなりすぎたので今回はこれで切りました。
今月はこれで最後です。
来月からはもう一個の作品を書いていきます。
ぜひ読みに来てください。
俺の超会話の発動にはいくつかの条件がある。
まずは会話をするだけの知能があること。
会話ができないので超会話が効くはずもない。
次に相手が俺を認識していること。
お互いに認識していないと会話とは言わないからね。
一方的に喋るだけならそれは通告やただ喋っているだけなのだ。
大事なのは会話をすることである。
しかしショゴスには意思があるらしい。
それならば超会話はできるかもしれない。
問題はさっきから周りを飛ぶ悪魔達を羽虫のごとく叩き落とし無数の口から取り込み続けるショゴス。
あれに俺の存在を認識させる?
できるのか? この状況で?
「ナルナ様を守るのだ! 我らは捨て駒! その命をここで捨てよ! ナルナ様さえ無事ならばそれでいい! 」
「「「「おおおおおおお!!!!」」」」
あのセルネスとか言う悪魔の号令に従って全ての悪魔が全く恐れずショゴスに向かっていく。
一秒経つごとに飛んでいる悪魔達の数が減っているのが分かる。
100を優に超える触手を全て避けきるのはまぁ不可能だろう。
悪魔達はショゴスを切り裂くが、ショゴスはその傷を治すどころかその部分を触手に変えて悪魔達を飲み込む。
「これが……こんなものがショゴスだと!? ふざけんな! これのどこがショゴスなんだよ! こいつは粘液体をベースに人工的に進化させたただの労働力のはずだろ! 何で……こんなに強いんだよ!」
……まじで? 何となく想像はついてたけどこいつは、ショゴスは悪魔が作ったものらしい。
そして何かがあって封印し、それが目覚めたらとんでもなく強くなりこうして悪魔を襲っている。
うん、意味が分かんない。
「グッ! 貴様ら諦めるな! いくらショゴスが強くとも核を潰してしまえばそれでおしまいだ! 全員! 身体のどこかにある核を破壊しろ!」
「そうだ! 核を探せ!」
「あれさえ潰せば終わりだ!」
「どこだ! どこにある!」
「こいつの身体を切り開け! そうすれば見つかるはずだ!」
確かにそれなら勝てるだろう。
ショゴスは核をナルナにほとんど抜き取られており今残っている核はひとつしかない。
それさえ破壊すればショゴスは死ぬ。
確かに悪魔達はその数のおかげでなんとかショゴスとなんとか戦えてはいるがすぐに均衡は崩れるだろう。
「見つけたぞ! 核! 頭部にあるぞ!」
は? あったの? まじで?
あれだけの力を持っていてしかも知能を持っているショゴスの核を見つけたの?
にわかには信じ難い事だった。
しかし現実はその言葉が事実であることを伝えてくる。
「ついに核が見えたぞ! 総員! 魔法を展開せよ! 合図でやつの頭部に向けて掃射する!」
「「「「「はっ!」」」」」
空を飛ぶ悪魔達が様々な色の魔法陣を展開して魔法の発動を待つ。
空を飛べない悪魔達は地上で魔法陣を展開する。
しかし彼らは気づくべきだったのだ。
なぜショゴスは封印せれていたにも関わらずあれほど強くなっていたのか。
そしてなぜ頭部にある核は見えたままなのか。
ショゴスにはとんでもない再生能力がある。
しかしなぜかこの時頭部にある傷だけは再生していなかったのだ。
触手の勢いもだいぶ収まっており、まるでショゴスが弱っているかのように見える。
攻撃を叩き込むには絶好の機会のように見える。
「油断はするなよ。ショゴスはスライムをベースにしたが予想に反して高い知能を持っていた。何か動きがあれば俺に報告しろ!」
……高い知能があったのならもう確定と言ってもいいだろう。
ショゴスは罠を張っている。
攻め込んで来るのを今か今かと待っているかのように。
だが俺がそれを悪魔達に教えようとは思わない。
何せこの街の惨状を作り出したのはこいつらだ。
せいぜい無様に負けるといい。
その情報は俺が役に立てる。
だから今は観察に徹するのだ。
「……よしっ! 全員! 撃て!」
号令を合図に視界いっぱいの魔法がショゴスに飛んでいく。
結局悪魔達は最後まで気が付かなかったな。
──轟音が響く
ショゴスの体内で蠢く6つの魔力に。
粉塵が晴れるとそこには傷一つなく佇むショゴスの姿があった。
そして愕然とする悪魔達を嘲笑うかのようにさっきまでとは比べ物にならない速度で一本の触手が発射される。
それは指揮を出していたセルネスの頭部を一瞬で砕くと身体をそのまま飲み込んだ。
恐らくさっきまでは全く本気では無かったのだろう。
だって今の速度は外から眺めている俺ですらギリギリ見えたぐらいなのだから。
当事者である悪魔達は何が起きたのか全く分からなかったと思う。
……俺今からこいつと会話すんの?
まじかよ……
しかも取り込んだ悪魔を魔力に変換しているようでもう既にかなりの魔力量になっている。
こいつと戦うことになったらほんとにどうしようか。
「セルネス様がやられた!」
「もうダメだ!」
「ナルナ様を連れて逃げるぞ!」
「そうだ! あのお方が居ればなんとかなる!」
どうやら指揮官が死んだことで撤退を決めたらしい。
しかしナルナを回収する気か?
止めるべきか?
……いや、やめておこう。
これからショゴスを相手にするのに悪魔達に時間を掛ける余裕は正直ない。
とりあえずまずは超会話。
それが駄目なら戦闘になるな。
でもあまり街中ではやりたくない。
さらにショゴスの目的は恐らく悪魔。
じゃあ悪魔でも捕まえて街の外に誘導する?
でもそう上手くいくかな……まぁ考えてても仕方ないか。
『ショゴス~聞こえるか~?』
念話の要領でショゴスに語りかける。
昔兎にも同じ方法で意思疎通はできたからこれで通じるといいんだけど。
『寂しい辛い眠い痛い酷い痒い暑い寒い憎い殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すぅぅぅぅぅぅぅ!!」
あ、駄目だこれ。
会話が通じる段階じゃないや。
悪魔に対する殺意で俺の念話とか全く聞いてなかったぽい。
本当に一体何したんだよ悪魔達。
まぁとりあえずショゴスに言葉を持つくらいの知能があるのは分かった。
間違いなく超会話は使えるな。
じゃあ戦闘するか。
まずは落ち着かせなきゃいけないんだけど俺の超会話には相手の好感度、意思、状態異常などに関係なく会話を行えるという能力もある。
というか面倒だから強制会話とでも呼ぼう。
まぁ強制会話にも限度がある。
こいつは圧倒的な魔力量と悪魔に対する殺意のせいで強制会話が効いてない。
「じゃあまずは注意を引く。そのためには……やっぱりナルナが適役だな。イグニス、ナルナ持ってきて」
「はーい」
かなりのスピードで飛んでいきナルナを掴みそのままこっちに持ってきた。
「「「「「ナルナ様!?!?」」」」」
悪魔達が揃って驚いているのはとても面白い。
そしてショゴスはナルナの存在に気がついたのかこちらをギロリと無数の目で睨みつけてくる。
それでいい。
もしも周囲に被害が出てしまったら目も当てられないからね。
次の瞬間には無数の触手が叩き潰さんと伸ばされる。
速度はかなり速いがまぁ問題無い。
触手が全て手前で弾かれる。
まぁ結界である。
しかしショゴスは攻撃の手を一切緩めない。
それどころか触手の数はどんどん増えていき、ついに結界の周りは触手しか見えなくなり音も触手が結界を打つ音しか聞こえない。
まぁなので妖精達と念話で会話をする。
『じゃあ魔法発動準備に入るよ。まぁ今回は会話に持ち込むのが目的だからメアに頑張ってもらおうかな』
『……頑張る』
『じゃあ普通の魔法は効かなそうだし妖精魔法でいくよ。魔力はよろしく』
『……うん!』
気合いは十分らしい。
やる気が伝わってくる。
まぁきっとさっきやられてしまったことを取り返そうとしているのだろう。
流れてくる魔力の量が普段とは比べ物にならない。
まぁ闇属性なら物理的に被害は出ないだろうし問題ないかな。
そして詠唱が始まる
『”安息の吐息は諸人を眠りへ誘う。死と眠りは全てに与えられた偽りなき休息。私は見届けよう、子は母の腕に抱かれて眠るもの。それを咎める者はなし、いざ泡沫の眠りを!”『ヒュプノス』! 』
黒い魔法陣から暗い桃色の煙が急速に吹き出しショゴスを覆った。
闇属性妖精魔法『ヒュプノス』
煙に触れると魔力が浸透していき、強制的に眠らさせる。
中々使い勝手がいいな。
そして暗い桃色の煙が晴れると、そこには全ての目を閉じて眠りこけているショゴスがいた。
「うっわぁ、とんでもないな。あれだけ大きな魔物を眠らせられるとは」
目の前にいるショゴスは十メートルなんてサイズを余裕で超えていた。
まぁこれでようやく準備が整ったと言える。
あとは残りの悪魔を片付けたら終わりだな。
そう思って振り返るとそこにはエリクシール様とオベイロン以外の全てが地面で寝ていた。
……あれ?
そういえばこの魔法は魔法陣から全方向に急速に煙を広げる仕組みになっている。
ならば俺の背後に行くのは当然といえば当然かもしれない。
……この状況、どうしようか。
核の数が合わせて7つなのはわざとです。
ミスではありません。




