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二つ目の太陽

新作を作成中です!

こちらも投稿はちゃんとやるのでご心配なく。

「”世界を廻る流浪の暴風、嵐となりて限界せよ! 滅びをここに!”『テンペスト』!」


次の瞬間、地面に展開されていた緑色の魔法陣を中心に轟々と音を立てて風が逆巻始めた。

そして僅か数秒後には天にも届かんばかりの巨大な竜巻が現れる。

静かな猛犬(サイレントドッグ)の群れが必死に竜巻から逃れようとするが全く無意味でしかない。

暴風が憐れな獲物(サイレントドッグ)を竜巻の中心へと引きずり込む。

そして一度飲み込まれると実質脱出は不可能である。

同じように竜巻に巻き込まれた瓦礫などに衝突したりグルグルと乱回転する暴風によって全身の骨がへし折れたりと、凄惨な光景を生み出していた。

周囲に人が居ないことは既に魔力探知で確認済みである。

万に一つも巻き込むことは無い。


そして竜巻が消えた頃には目の前の光景は瓦礫の山へと変わっていた。

静かな猛犬(サイレントドッグ)の死体が散乱し中にはぐちゃぐちゃの肉塊になっているものもあった。

しかしそれに動揺することはない。

修行でたくさんの魔物や魔獣を殺し続けた。

この程度なら冒険者としては当然の事なのだ。


「なに……今の……」


アリスが呻くように声をあげる。

まぁあんな光景を目にしたらその反応も仕方ないだろう。


「これが俺の隠してたものだよ」


「なるほどね……これは確かに隠す必要があるわね……」


周囲の光景は死屍累々。


妖精魔法『テンペスト』

魔法陣を地面に設置し、その魔法陣を中心に竜巻を発生させる妖精魔法の一種。

その威力は凄まじいの一言であり『テンペスト』の範囲に生存できた生物は俺とアリスを除けば一人もいない。

そこにあるのは破壊の跡だけだった。


「まぁこれについてはあとで説明するよ。今は一先ず避難が優先」


「そうね!」


とりあえず納得してくれたらしい。

まぁここまで見せたら変に誤魔化すよりもしっかりと説明した方がいいだろう。


「ほぅ、やるではないか人間の小僧や」


なに!?

こいつも俺の魔力探知に引っ掛からなかったぞ!

また隠密型の悪魔か!


その悪魔は老人のような見た目をしていた。

長いあごひげに真っ白な頭髪。

そしてなにより目を引くその両手に持つ7つの人間の頭。

右手に4つ、左手に3つ、無造作にぶら下げていた。

それをまるでゴミを捨てるかのように全て投げ捨てた。


「その力に敬意を表してわし自ら名乗ってやろう。わしは首狩り悪魔(ヘッドハントデビル)。名をゴデア。ナルナ様の忠実な下僕のひとりじゃ。さぁかかってくるがいいぞ! ふぇっふぇっふぇっ!」


返事を返す間もなくゴデアと名乗る悪魔が投げ捨てた頭がどす黒い紫色の光を放ち空気に溶けていく。


「黒魔術か!」


黒魔術は闇属性魔法の派生系でもある使い手も少なくかなり特殊で珍しい魔法。

生贄を魔力に変換して自分の魔力を一切消費せずに魔法を行使するという魔法で生贄の保有する魔力が多ければ多いほど多くの魔力に変換できる。

その性質から生贄に人間を使う事が多くなりほとんどの国では黒魔術は禁止されている。

しかし当然と言ってもいいだろう。

悪魔にとってそんなことは全く関係ない。


これは厄介だぞ。

俺は黒魔術を見たことがない。

知識としては知っていても禁止された黒魔術を直接見る機会なんて全く無かった。

だから当然対策が取れない。

俺ができることといえば妖精魔法による魔法のゴリ押し。

それでなんとかなると願いたい。

しかしゴデアから感じられる魔力は明らかに俺の魔力より多い。

妖精達から魔力を貰えばなんとかいい勝負ができるだろう。


全力でいかないと死ぬ。


するとゴデアはニヤリと邪悪としか言えないような凶相で嗤うと詠唱を開始した。


「”(から)の盃よ満たして溢れろ! それは穢れた蠱毒の坩堝(るつぼ)”! 『デッドナイト』


どす黒い紫色の光が集まり数秒で光を拒絶しているかのような真っ黒な鎧が出現した。

死の騎士(デッドナイト)は30年ほど前にバスキア帝国に現れた魔物である。

アンデッドの一種でその戦闘力はかなり高い。

その時に現れた死の騎士(デッドナイト)は一体だけだったがそれでも数百人の犠牲が出た。


「っ! ”恵みたる黄金の光よ! 我が手にその栄光と力を! それは闇を祓う奇跡!”『エンシャントフラッシュ』!」


アリスの手に黄色い魔法陣が現れ、それが消えるとそこには眩い光を放つ極光があった。

光属性中級魔法『エンシャントフラッシュ』

アンデッドを相手にするために開発された光属性の魔法でその効果はアンデッドを防御不可能である内側から浄化するというかなり強力な効果を持つ。

しかし発動のためにはアンデッドに触れて直接内部に撃ち込む必要がある。

これをこの場面で発動したのは俺の援護を期待したからだろう。

アリスは身体強化で一気に肉薄する。

俺も『エアバレット』を乱射して援護する。

流石にアリスに当てるなんてことはしない。

アリスを躱すかのように放たれた『エアバレット』は全て死の騎士(デッドナイト)に命中した。

連続で来る衝撃に全く動くことができないのかその場から動かない。

そしてあと数歩で『エンシェントフラッシュ』が死の騎士(デッドナイト)に当たる瞬間。


「させると思うか!」


ゴデアは魔力弾を数発アリスと死の騎士(デッドナイト)の間に雨のように降らせてくる。

くそっ! あと少しだったのに!

召喚で呼ばれたものは普段は召喚者の保有する異界に住んでいる。

召喚者はその異界に呼びかけることでなにかを召喚することができる。

しかし召喚されたものは異界からこちらへと出てくる際に少しだけ存在が安定しない。

その間は一切の身動きができないのだ。

だから狙うならあの瞬間だったんだが……

自由に動けるようになった今さっきのように『エアバレット』で足止めをすることはかなり難しい。


「なかなかいい判断だったが一歩届かなかったな? 残念じゃのぉ」


ニヤニヤといやらしい笑顔を浮かべている。

こちらを煽るためであるのは明白だった。


「……どうするの?」


隣まで戻ってきていたアリスが問う。

正直手詰まりである。

もう温存とかバレたくないとか言ってられない。

まぁ周囲にアリスしか居ないことは確認済みだしアリスさえ黙っておいてくれればなにも問題は無い。

しょうがないかな……


「……出てきていいぞ」


「えっ?……っ!!」


俺の言葉にの意味を理解できずに疑問の声を漏らすが次の瞬間に俺のそばに現れた5人の妖精を見て声を失う。


「悪いなお前ら。ちょっと全力でいくぞ!」


「いいよー」

「やったー」

「がんばるよー」

「久々の全力だー」

「……終わったら遊ぼう?」


メアを除いてやる気充分だった。

まぁちゃんとやってくれるし遊ぶくらいならいいかな。


「ほう! 妖精とはまた珍しいのぉ。しかも人間と契約しておるとはな……」


「イグニス!」


「はーい!」


イグニスから膨大な量の炎属性の魔力が流れ込んでくる。

これだけあれば充分だろ。


「”決別せよ、それは始まりの終焉、神々の慈悲にして生を賛美し死を唄うもの、あまねく全ての父の業火、今ここに第二の太陽を創造する! 『ストライクソル』!」


空に数十の魔法陣が列をなしていた。

そして一番奥の魔法陣から拳大の火球が出現し、ゴデアに向かって落下する。

火球は落下の際に他の魔法陣を通過してそのたびに大きく成長していく。

人が生きる上で必須である太陽。

それを再現した俺のオリジナル妖精魔法。


実は妖精魔法に決まった形はあまりない。

何故なら妖精に魔法なんて必要ないからである。

魔力を集めて撃つ。

これだけでだいたい決着はつく。

今まで人が使ったことがある妖精魔法はこれである。

まぁ妖精にお願いしてるだけだから自らが行使しているとは言えない。

それに比べて俺のこのオリジナル妖精魔法は俺の膨大な魔力とイメージが加わっている。

魔法はイメージと魔力操作で形と効果を作るのだ。

これを用いた妖精魔法が一体どれほどの威力になるのか想像もつかない。


「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


おっとそんなことを考えてたらいつの間にか火球は直径50メートルほどになっていた。

ゴデアはなんとか防ごうとしたみたいだが飲み込まれた。

ついでに死の騎士(デッドナイト)も一緒に。

そして大爆発。

目を焼くような眩い光を放ち、近くにあった植物が熱気で焼けるどころか蒸発した。

全てが真っ白に染まりなにも見えなくなる。


そして数秒経過してようやく視界が戻ってきた。

妖精魔法は威力と効果はいいけど俺にも被害がくるのが問題だな。

要改善っと。

『ストライクソル』によって発生した粉塵が晴れるとようやく見えてきた。


基本的に石造りの建築物は全てが倒壊して黒く炭化して見る影もない。

石畳の街道はドロドロに溶けて融解しガラス化しているようなところもある。

しかし。


「かかっかかかかかかかかかかかか! まさか妖精魔法とはな! これは驚いた!」


左腕が肩から消し飛んでいるというのに狂笑を上げる狂気の悪魔、そしてところどころボロボロになってはいるもののその場に立ち続ける漆黒の鎧騎士がそこにいた。








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