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猛犬退治

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「ロンズ! くそっ! 悪魔のくせに上位個体だと!」


ラッツ様が思わず声を荒らげる。

それも仕方のないことだろう。

悪魔に上位個体なんて存在しない。

魂を喰らい力を取り込み自らの糧とする。

それ故に悪魔の強さはピンキリだ。

一体で国を滅ぼすようなやつもいれば数体集まっても一般人に負けるような悪魔もいる。


そもそも上位個体とは何らかの原因で体内の魔石が異常反応を起こし肉体が変化した者を言う。

だから魔石を持たない悪魔が上位個体になるはずがないのだ。

しかし現実は違う。

今俺達の目の前には通常種とは明らかに違う静かな猛犬(サイレントドッグ)がいる。

これは歴史上、ありえないことだ。


「グルルルルルル!」


上位個体の静かな猛犬(サイレントドッグ)が涎を垂らしながら唸る。

どうやら俺達は完全に獲物に見えているらしい。

まぁしょうがない。

あいつの目の前には剣を片腕ごと無くした男と貧弱そうに見える女と戦う術を持たなそうな子供達だ。

こいつが俺達を餌と勘違いするのも分かる。

分かるが……


「ムカつくなぁ……」


するりと杖を抜くと魔力を解放する。


「ッ!! グルルルルルル!」


「なんて魔力!」


ニールさんには俺の魔力が気づかれてしまったらしい。

いや、ラッツ様も驚いているな。

あとアリスも。

気がついていないのは痛みに悶えるロンズさんだけだな。


静かな猛犬(サイレントドッグ)の注意が俺に向いた。

意図的に魔力を対象にぶつけると威圧のようなことが起こると最近知った。

まぁ勝手に魔力威圧と名ずけたが使い勝手がいいので結構便利。


「とりあえずその護衛の人を連れて逃げてください。時間はしっかりと稼ぎますので」


「なっ!? そんなことできるか! 僕はアインベルク王国の第2王子だぞ! 君を見殺しになんてできるものか!」


「ダメですラッツ様! 我々では彼の足でまといです! 邪魔でしかありません!」


「ニール! お前なら何とかなるだろう! 頼むよ。彼を助けてやってくれ!」


「無理です! 彼は私よりも強いのですから!」


まぁ殺し合いになったらニールさんには勝てる自信はある。

妖精魔法のゴリ押しで余裕だろう。

魔法の発動速度も俺の方が早いからねぇ。

正直負けるとは思わない。


「まぁとにかく逃げてくださいよ。ついでにアリスを連れていってくれるとありがたいです」


「私は残るわよ。リョーマを置いて私だけが逃げるなんてありえないから」


おっと? 雲行きが怪しくなってきたぞ?

妖精魔法を使えばこいつらは何とかなるだろうがそれはこの場にいる全員に俺の特異性がバレてしまう。

それは避けたいのだが……


「どうせ何か策があるんでしょ?」


バレてるやん。

あれぇ? 妖精魔法のことは流石にバレてないはずなんだけど。

それなら策があるとは思わないと思うんだけどなぁ。


「……なんでそう思ったの?」


「リョーマがなにかを隠してるのは知ってるよ。でも私は聞こうとは思わない。聞きたいけどね。だって言いたくないから隠すんでしょ? なのに他人に根掘り葉掘り聞かれるのは嫌じゃない」


……なんというか相変わらずいい子だな~

誰かに騙されたりしないかと心配になるけども聡明な彼女なら上手くやれるだろう。

アリスですらどうにもならないことは俺が手伝おう。


「まぁあるにはあるけどな。バレると色々と面倒臭いから父さんと母さん以外には隠してたんだよ」


「そうなの。じゃあ私には見せてくれるのかしら?」


どこか期待したような眼差し。

その目はずるいと思う……

しかしラッツ様達はどうしようか……

流石に彼らにバレるのが不味いことは分かる。

さてどうしようか……


俺が見ているのがラッツ様達だと言うのが分かったのかアリスは納得したように頷く。

今の短いとすら言えないやり取りで察することができるのはアリスの頭が良い証拠だろうな。

言わなくても理解してくれるのは正直とても助かる。

俺は超会話で会話を問題なく行えるとはいえ会話自体が別に好きな訳では無い。

そんなことを考えている間にラッツ様は気絶していた。

は? ちょっと目を離した隙になにがあった?

静かな猛犬(サイレントドッグ)の仕業では無い。

俺が威圧し続けているから全く動いてない。

では誰が?

その答えはいつの間にかロンズさんがラッツ様の背後に立っていたことで察することが出来た。


「……少年。申し訳ないがここを頼む」


意外だった。

第2王子の護衛に選ばれるってことはそれなりのエリートだってことだ。

プライドと自信はそれなりに高いと思っていたんだが……


「いいんですか?」


「構わない。我々の仕事はラッツ様の安全の確保だ。こうなってしまっては我々はラッツ様を逃がすことに専念せねばならんからな。それに少年。君ならなんとかできるんだろう? なんとなくそんな気がする」


「なんとなくでこんな子供に任せますか……」


「頼むぞ」


「了解です。すぐに追いつきますから」


「……気をつけてね!」


ニールさんもなにか言いたそうだったが結局一言だけ言ってラッツ様を背負うロンズさんについて行った。

まぁこれで遠慮する必要は無くなったな。

視線を静かな猛犬(サイレントドッグ)に戻す。

そして抑えていた魔力をさらに解放する。

流石にこれ程とは思わなかったのかアリスも目を見開いている。


無詠唱で『ウォーターランス』を放つ。

昔とは威力も速度も段違いだった。

静かな猛犬(サイレントドッグ)はその速度に全く反応することもできずに右前足を吹き飛ばされた。


「グルァァァァァァァァァ!?!?!?」


あまりの痛みに悶える静かな猛犬(サイレントドッグ)

足が1本無くなったことでバランスを崩し、がくりと地面に倒れ伏す。

追撃に『ファイアーニードル』を放つ。

『ファイアーニードル』は火属性下級魔法の魔法だ。

炎で作られた針の魔法である『ファイアーニードル』は刺さるとその部分から燃焼するというかなり凶悪な魔法だがしかし威力が極端に低く普通の鎧などで普通に防ぐことができてしまう。

正直使い勝手は悪いがこうやって隙だらけの相手にはしっかりと使える。

狙い通りに吹き飛んだ右前足に刺さった。


「ギャァァァァァァ!?」


静かな猛犬(サイレントドッグ)が悲痛な悲鳴を上げる。

そして傷口が燃え出す。

炎を消そうと必死に暴れる。

しかし俺の『ファイアーニードル』は妖精の魔力を込めてある。

そう簡単に消せるものでは無いのだ。


案の定炎は消えずに燃え続けている。

そして唐突に脱力してピクリとも動かなくなった。

あまりの激痛に気絶したのだろう。

それならばとどめを刺そうと次の魔法を展開しようとしたその瞬間。

突然真横から音もなく静かな猛犬(サイレントドッグ)が2頭飛びかかってきた。

しかし2体の静かな猛犬(サイレントドッグ)は俺に触れることなくピタリと空中で静止する。

俺の魔力障壁は飛んでくるナイフを空中で固定するほど高密度な魔力で作られている。

突っ込んでくる悪魔の1、2匹ぐらいなら割となんとかなる。

身動きの取れなくなった2匹に先にとどめを刺そうとナイフで2匹とも首を掻き切る。

2匹とも脱力したのを見届けて上位個体の方に目を向けると既にそこにはいなくなっていた。


「ワォォォォォォォォォンンンン!!」


突然咆哮が聞こえた。

上を見上げるとさっき仕留め損ねた静かな猛犬(サイレントドッグ)の上位個体が天に向けて吼えていた。

すると数え切れないほどの静かな猛犬(サイレントドッグ)の群れがこちらへ向かってくるのが見えた。


うわぁめんどくせぇ。

あれを全部馬鹿正直に相手するのは骨が折れそうだな。

というか流石にアリスがそばにいる状態でこの群れを相手にするのは不可能だろうな。


()()()()()()()()()()()()()()()()

しかしそうなるとアリスの位置が邪魔になるな。


「アリス! 俺のそばに来てくれ! 大技使うぞ!」


「ッ! 分かった!」


アリスが俺の元に駆け寄ってくる。

それを確認してから魔力障壁に込める妖精の魔力の量を強化した。


そして詠唱を開始する。


「”世界を廻る流浪の暴風、嵐となりて限界せよ! 滅びをここに!”『テンペスト』!」




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リッチ(金持ち)でリッチ(死体)なダンジョンマスター https://ncode.syosetu.com/n9823fi/ こっちもよろしくお願いします!
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