魔法実技試験 1
「これから魔法実技試験を開始する! 受験者は全員次の部屋に移動しろ!」
アリスと話しているとついに魔法実技試験の時間になった。
試験官の声を合図にみんなが一斉にさっき俺が魔法を撃った部屋に移動する。
「順番に呼んでいく! 目標である案山子に向かって魔法を3発撃ち込め! ではまず受験番号1番!」
「はい!」
呼ばれた少年が自信満々に前に出て行く。
どうなるかお手並み拝見といこうかな。
「”穿て火炎の槍”!『ファイアーランス』!」
……しょっぼ!?
いやまぁ妖精魔法持ってる俺と比べたら駄目なんだけどさ。
『ファイアーランス』って初級魔法だろ。
それを一発撃って肩で息をしてる奴が魔法学院に入学できるのか?
「はぁ……はぁ……」
「どうした! 早く次を撃て!」
考えてる間に素早く案山子は新しくなっている。
「くっ、はい! ”逆巻く業火よ、我が敵を焼け”! 『バーニング』!」
案山子の真下から赤い魔法陣が現れそこから炎が噴出する。
数秒で炎は晴れてそこには所々焦げた案山子があった。
「次の魔法を早く撃たないか!」
「ぜぇ……ちょっとは休ませて下さいよ!」
「敵は待ってはくれないぞ! その程度で魔法学院に入学できると思うなよ!」
「ぜぇ……ぜぇ……ゲホッ! はぁ……”紅の魔球よ! 現出せよ”『ファイアーボム』!」
突き出した手に赤い魔法陣が現れた。
そしてそこから『ファイアーボール』と同じような球体が現れ案山子にぶつかると爆発して炎を撒き散らした。
「ふむ、よし次は受験番号2番!」
「はい」
少年と入れ替わりで現れたのは白い髪に宝石の様に青い瞳を持っている可憐な少女だった。
その少女は腕を突き出すといきなり魔法陣を展開させた。
それを見て全員がざわめき出す。
まぁ10歳の少女が無詠唱だからな。
魔法陣の色は白、とんでも無く使用者が少ない氷属性の魔法の証。
そして次の瞬間には案山子は霜だらけになっていた。
「ほう、『フリーズ』か!いきなり下級魔法とはな! よし次を撃ってみろ!」
少女はそれに頷くとまた腕を突き出し魔法陣を展開する。
また無詠唱か。
しかも魔法陣の展開に一切の無駄がない。
たとえ大人でもこのレベルは難しいだろう。
それをらくらくこなすとは驚いたな。
今度は案山子を真っ白な霧が包み込む。
「今度は『ホワイトアウト』か! よし最後だ!」
たしか『ホワイトアウト』って相手の視界と体温を奪う魔法だよな。
結構使い勝手はいい魔法だったはずだ。
「”冷えろ、冷えろ、冷えろ、刹那の終わり、白い咆哮を聞け”『アイスバーグ』」
案山子の真下に5メートル程はある巨大な白い魔法陣が現れた。
そして次の瞬間には目標である案山子を巨大な氷山が閉じ込めた。
「最後は中級魔法か! うんいいぞ! では次! 受験番号3番!」
「は、はい!」
自信がなさそうに呼ばれた少女が出て行く。
まぁ今のを見たら自信なくすよなぁ。
俺の番号は……607番か。
結構先だなぁ。
これ今日中に受けられるのか?
♢♢♢♢♢
「次!607番!」
「……はい」
……やっとか。
長すぎんだよ!
もう3時間は待ったぞ!
返事をして前に出ると試験官はニヤリと笑った。
そして口の動きだけで『楽しみにしてるぞ?』と言われた。
まぁそこまで期待されたら手を抜く訳にはいかないかなぁ。
それにこんだけ待たされてんだ。
ちょっとくらい本気出さないと俺の気が済まない。
そんな事を考えながら魔法陣を展開する。
それを見てまた全員がざわめき出す。
まぁ無詠唱が2人目だからな。
驚くのも無理はないだろう。
流石に妖精の魔力は使わない。
多分あの試験官にバレそうだし。
そう思いながら風の弾丸を九発同時に発射する。
それでさらにざわめきが大きくなった。
まぁ魔法の同時発動なんてそう簡単にできることじゃないからな。
いわゆる魔法複数同時発動ってやつだ。
これは宮廷魔導師ですら発動が難しい。
そして放たれた風の弾丸は案山子に九個の穴を開け吹き飛ばした。
「くはは! さあ次を撃て!」
楽しそうだな試験官コノヤロウ。
今は地味に妖精達が拗ねている。
後で機嫌を取る必要があるな。
そんな事を考えながら次の魔法を展開する。
今度は茶色の魔法陣が展開された。
もはやざわめきすら起こらない。
違う属性の無詠唱魔法。
普通魔法使いは複数属性持ちの場合はメインの属性を選びそれを重点的に鍛える。
だから俺のやった事は異常に映ったのだろう。
そして魔法を発動する。
地面から杭が現れ案山子に突き刺さる。
土属性下級魔法『グランドスパイク』。
土属性魔法は地面があればどこでも発動できるのが強みだ。
「最後だ!」
試験官からの号令を受けて最後の魔法を展開する。
とは言え最後は中級魔法を撃つ。
流石に無詠唱は不可能だろう。
そしてオリジナル魔法も使えない。
騒ぎどころじゃなくなるからな。
「”厄災を唄う地獄の黒炎、汝の死を幻視せよ、これは偽りの魔炎なり”!『ブラックフレイム』!」
黒と赤の色の2色の魔法陣が現れた。
複合属性魔法。
2属性の魔法を合わせる事で発動する魔法だ。
今回使ったのは火属性と闇属性。
魔法の内容は黒炎の内側に闇属性の魔力を隠し、目標を焼いた瞬間さらに幻術を見せて感覚そのものを奪う魔法だ。
まぁ正確には闇属性の魔力で感覚が無くなったと誤認させるだけだが。
この魔法を今回使ったのは目標は案山子だから遠慮する必要が無かったからだ。
『ブラックフレイム』は俺が解除するか魔力が無くならない限り継続する。
そして数秒たった頃には案山子は真っ黒な灰になっていた。
「素晴らしいな! よし次! 受験番号608番!」
「はい!」
次はアリスの番か、そんな事を考えながら歩くとアリスとすれ違った。
「頑張れよ」
「えぇもちろん」
まあアリスなら合格は余裕だろう。
しかし実は全力は見たことがない。
楽しみだな。
受験番号が隣続きでも席が隣にならないのは席の番号がバラバラだからです。
言われそうなので書いときます。




