意思は固いようです
今年最後の投稿です。
奴隷紋。
魔法の分類としては闇属性魔法の特級となっているが、その実態は闇属性魔法の特級と呪術の中級が必要になる。
これがアリスの身体にある理由は簡単に想像が出来る。
間違いなくこの間アリスが襲撃された際に無理やり付けられたのだろう。
奴隷紋の魔法名は『スレイブ』という。
闇属性魔法の特級と呪術の中級が必要になる『スレイブ』は、当然習得が難しいこの魔法だがその効果はとんでもない。
『スレイブ』の対象は身体のどこかに奴隷紋が刻まれる。
そして奴隷紋が刻まれた人間は設定された所有者の命令に逆らえなくなる。
もし逆らえば奴隷紋の呪いが身体を激痛と共に蝕む。
ついでに言えば所有者が決められた言葉を言えば呪いが身体を蝕む。
そして同じように設定された言葉を言えば呪いを解除する事も出来る。
対象を所有者に絶対に逆らえないようにする生きた人形へと変貌させる魔法なのだ。
これを解くには光属性の特級、『ブレッシング』と膨大な魔力と中級以上の魔力を込めた解呪が必要になる。
非常に運の悪い事に俺は光の妖精と契約をしていない。
だから光属性の魔法は一切使えない。
当然呪いの解呪も俺は出来ない。
俺の知る限りこの村には光属性魔法の特級を使える人はいないし、解呪に至ってはそもそも出来る人が居ないため中級の解呪がどうのとか言ってられない。
となるとアリスをこの奴隷紋から解き放つ事は現状では不可能だ。
おそらくアリスも同じ結論に至ったのだろう。
だから今泣いているのだろう。
リズ婆さんはアリスが泣いているだなんて一言も言ってなかった。
という事はずっと泣くのを我慢してたんだろう。
本当に5歳とは思えない精神力の強さだ。
普通なら誰かに相談してしまうだろう。
そしておそらく奴隷商人に売れ渡されていただろう。
所有者の居ない奴隷は奴隷商人に売ればかなりの金になる。
当然の話だが所有者の居ない奴隷はかなり危険だからだ。
奴隷が奴隷になるにはそれなりの経緯がある。
犯罪を犯し奴隷になった者。
借金を返せず自らを奴隷になった者。
不当に身を攫われ無理やり奴隷堕とされた者。
その形は様々だがその危険性も様々だ。
犯罪奴隷は言わずもがな。
借金を背負った奴隷はそんなに危険はないが人によっては誰かを襲って金を奪って奴隷から解放されようとする者もいる。
不当に奴隷にされた者は逆恨みで人を襲う場合がある。
だから国は主人のいない奴隷を奴隷商人に売り渡すか、自分が主人になる事を推奨している。
現代日本の処刑する事は少ない。
この世界は労働力が異常に少ない。
理由はいくつかあるがやはり1番の問題は魔物だろう。
人間はずっと魔物と戦ってきた。
人間の歴史の基本は人間と魔物との戦いの歴史とも言える。
当然だが戦えば死者は必ず出る。
そうなれば人材は足りなくなる。
だから奴隷は給料を払わなくてもいい最低限の扱いをすれば一生使える人材になる。
この時代でこれほど便利な労働力はない。
「そうかぁ.....アリス。俺は10年後に魔法学院に行くことになった」
「っ!そんな!」
「まぁ聞けって。俺はそこで色々魔法について学ぼうと思ってる。だからその時にお前の奴隷紋を解除出来る魔法を覚えて帰ってくる。だからそれまでは我慢して欲しい」
「.....分かった」
「そっか.....まぁ10年後の話だから。それまではみんなで遊ぼう!」
「うん! あともう1つ」
「?なに?」
「私も魔法学院に行く。リョーマについて行くから」
.....この子はいきなり何を言い出すんですかねぇ。
魔法学院は魔法が使えれば誰でも入れる訳じゃない。
一定値以上の高い魔力量、魔法に関する知識、そして下級の魔法を5秒以内に展開できることの3つが最低条件になる。
両親が普通の一般人だったアリスが魔法学院に合格するほどの魔法の実力を持っているとは思えない。
ここは厳しくてもはっきりと言うべきだろう。
「あのねアリス。魔法学院はそんな簡単なところじゃないんだよ? そもそもアリスは魔法が使えないだろう?」
「.....そうよ。でも! リョーマは私のために色々やってくれるのに私は! 私は何も出来ない! そんなの嫌だよ! だからリョーマについて行くの! そこで役に立つんだから!」
アリスはこうなると中々自分の意志を曲げない。
時間をかけて説得するしか無いだろう。
「だからねアリス.....そもそも魔法学院に合格すること自体が.....」
「話は聞かせてもらったよ」
「「!!」」
部屋に入ってきたのはリズ婆さんだった。
まずいな。
今の会話、どこから聞いてた?
さりげなくアリスを背後に庇う。
「別に庇わなくても奴隷商人に売り飛ばしたりはしないよ」
やっぱり最初から聞こえてたか!
でも売り飛ばすことはしないって今言ったな?
「.....本当に?」
「本当さね。売るつもりなら昨日のうちに売る準備をしてたよ」
「へ?」
「昨日気絶してたその子の身体を拭いた時にね」
昨日からバレてんじゃねぇか!
仕方が無いとは言えバレるの早かったな〜
「昨日のうちに所有者は私に設定してあるよ」
しかもリズ婆さんが所有者だった。
流石はリズ婆さん。かなり有能。
「さてと、まずはアリスが魔法学院に行きたいと言う件に関してはどうにかならない訳じゃない」
「そうなの?」
「あぁ。アリスの魔法適正は光属性でね。それを今から鍛えれば魔法学院にギリギリ合格出来るレベルにはなるだろうさ」
魔法適正。
人間は使える魔法が生まれながらにして決まっている。
それを適正というのだがこの適正はステータスの確認の際に一緒に分かる。
しかし俺は全く自分の適正を知らない。
理由はユニークスキルがあったことが判明してしまったからその際のゴタゴタで魔法適正を見るのをみんな揃って忘れていたからである。
「リズ婆さん。今更だけど俺の魔法適正ってなんなの?」
リズ婆さんは一瞬キョトンとした顔をすると一泊置いてから思い出したような顔をした。
「そういえばあんたの魔法適正は見てなかったね。じゃあ今見てみるかい?」
「うん」
「じゃあこっちに来な」
そう言って案内されたのはこの間俺のステータスを確認した部屋だった。
「じゃあこの水晶に触れてくれるかい?」
その水晶は無色透明の透き通るように綺麗な水晶だった。
「分かった」
そう言って触れると水晶は5色の色に輝いた。
赤、青、緑、茶、黒の5色。
「リョーマの適正は5属性だね。それも全部元素属性だよ。火属性と水属性と風属性と土属性と闇属性だね」
「それってすごいの?」
「5属性持ちはたまにいるよ。元素属性全部とかだったらかなりすごいんだけどね」
「元素属性以外の属性って何があるの?」
「毒属性や治癒属性、あとは召喚属性とかだね。まだまだあるよ」
召喚属性って…...語呂悪いなぁ。
しかし俺の適正属性が契約した妖精の属性と全く同じなのは偶然だろうか?
後で妖精達に聞いてみよう。
「じゃあ今から5年間。アリスは私が鍛えるよ。リョーマは自分が受かれるように頑張りな」
「アリス〜! リョーマ〜! 来たぞ〜!」
「うるさいよゼル。ここは教会なんだから静かにしなくちゃ」
「リョーマ〜! アリス〜!」
「君たちね〜.....」
来たか。
色々ヘビーな話をしてたからなんだかんだ遅れて来てくれて助かったな。
「ようフェイ! ゼル! リアナ!」
「おぉリョーマ! 久しぶりだな!」
「そんなに長いこと会ってないわけじゃないんだから…...」
「細かい事は気にすんなよ! それよりもアリスは?」
「奥に居るよ。そろそろ来るんじゃない?」
茶髪に緑の瞳の元気いっぱいな男がゼル。
父親は旅人だったらしいが今の奥さんに一目惚れして猛アピール。
そのおかげで上手く行き、ゼルが産まれた。
それからはこの村に定住し、旅の最中に習ったという鍛治の技術を活かして鍛冶屋で働いている。
「聞いてよリョーマ! フェイがさっきからずっとため息をついてるの!」
「そっか〜きっと何か疲れることでもあったんじゃないかな?」
「そうなの!? 一体どうして? 私達は何もしてないのに!」
「嘘を言っちゃダメだよリアナ。君はここに来るまでに2回も迷子になってその先で必ず問題を起こしたじゃないか.....」
リアナは赤みのかかった黒髪に紫色の瞳を持つ可愛らしい少女だ。
しかし彼女はこの住み慣れた街でも必ず迷子になるほどの方向音痴である。
「みんな来てくれたのね!」
奥からアリスが出てきた。
流石にもう服は着ているな。
この3人と俺とアリスの2人を合わせた計5人がいつも遊んでいる仲間たちだ。
仲間っていいなぁ。
俺は前世では決してありえない光景に感動していた。
しかしそれは突如ぶち壊された。
カンカンカンカン
「な!」
「これって魔物のやつだよな!」
「またなの!」
上から順にフェイ、ゼル、リアナの台詞である。
そしてアリスはと言うと
「はぁ.....はぁ.....はぁ.....」
荒い息を吐き、自分の肩を抱くようにして震えていた。
アリスの両親が殺されたのは魔物の襲撃があったのと同じ日だった。
この鐘の音がトラウマになってもおかしくはない。
「アリス! しっかりしろ! 大丈夫だから!」
「あんた達は教会の地下に居な! 私は近くの住人を連れてくる!」
リズ婆さんはそう言うと教会の外に走り出した。
「くそっ!とりあえず地下に行くぞ!」
この時リョーマは知る由もなかった。
今回の襲撃も人為的なものであることを。
そしてその数は前回とは比べものにならない量であるということを。
アインベルクの大氾濫。
後にそう呼ばれる歴史でも類を見ないレベルのスタンピードがここに幕を開けた。
スタンピードこそ異世界無双物の定番中の定番!
超書きたかった!
というか最近ん終わり方がワンパターンになってるなぁ。




