第8話魔王軍の壊滅
「ル、ルシエラ様……!? 一体何を仰っているのですか! 王都の人間どもはすでに滅亡寸前! 今こそ我が魔王軍が世界を支配する時なのですぞ! さあ、こんな人間の家など焼き払い、共に魔界へ戻りましょう!」
副官の悪魔が必死に説得を試みる。
だが、ルシエラはフンと鼻で笑い、完全に冷めきった視線を部下たちに向けた。
「世界支配だと? そんな面倒でリターンの少ない仕事を、なぜ私が今更やらねばならんのだ。魔界の冷たい玉座でピリピリしながら書類仕事をするより、ここで毎日温泉に入って、レンの美味い飯を食べている方が一兆倍有意義だわ」
「そんな馬鹿なことがあってたまるかぁぁっ!」
絶叫する副官。しかし、ルシエラはもう彼らを相手にする気すらなさそうだった。
「レン、こやつら本当に邪魔だ。我がトマト畑の栄養(肥料)にしてしまっても構わんか?」
「いや、本当に肥料にしちゃうのはちょっとグロいから……。そうだ、世界のシステムを少しバグらせて、こいつらの『オブジェクト属性』を書き換えよう」
俺は一歩前に出ると、フリーズしている悪魔たち全員をじっと凝視した。
そして、【全自動・世界干渉】を発動する。
「【属性変換】。悪魔のデータを消去して、植物用特級肥料のデータに書き換え(パッチ適用)」
パシィィィン!
心地いいシステム音が響いた瞬間、空中に浮かんでいた数十体の凶悪な悪魔たちの身体が、光の粒子となって分解されていく。
そして次の瞬間、サラサラとした黄金色に輝く「最高級の有機肥料の粉末」へと姿を変え、ルシエラの大切なトマト畑へと全自動でフワリと降り注いだ。
「な、何が起きたのだ……? 我が軍の精鋭たちが、ただの粉に……?」
唯一、属性変換を免れてフリーズを解除された副官の悪魔が、ガタガタと震えながら地面にへたり込んだ。
どんな魔法も効かない強靭な肉体を持っていた悪魔たちが、ただ視線を向けられただけで、戦うことすら許されずに「肥料」に変えられたのだ。その圧倒的な理不尽さに、副官の心は完全にポッキリと折れていた。
「おい、副官。お前はまだバグらせていない。どうする? お前も肥料になりたいか? それとも、ここで私の下僕として大人しく畑仕事の手伝いをするか?」
ルシエラがクワを突きつけながら、冷酷に微笑む。
「は、畑仕事をいたします! 何でもやらせてくださいぃぃっ!」
こうして、魔王軍の副官は、泣きながらレンの家の「全自動・水やり係」として第二の人生を歩むことになった。
かつて俺を無能と罵って追い出した聖騎士団は自滅し、世界を脅かしていた魔王軍のトップ層は、俺の家の農業チームとして第二の組織を立ち上げつつある。
「よし、人手も増えたし、次は全自動の『果樹園システム』でも構築しようかな」
「おお、レン! 次はメロンが良いぞ! 甘いメロンを無限リスポーンさせるのだ!」
「よしきた!」
世界がどれだけ大騒ぎになっていようとも、俺たちの全自動バグスローライフは、これからもどこまでも快適に、そして平和に続いていくのだった。
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