第7話魔王軍の残党
王都を去った聖騎士団長たちが空の彼方へ弾き飛ばされてから、さらに数日が経過した。
国が滅びかけているという噂は風の噂で聞こえてくるが、この辺境の森には一切関係のない話だ。
今日も今日とて、俺とルシエラはのんびりとした時間を過ごしていた。
ルシエラはすっかり我が家の生活に馴染み、エプロン姿で【限界突破バグ】の特製オムライスを「美味い、美味すぎるぞ!」と幸せそうに頬張っている。
だが、そんな平和なひとときを破るように、我が家の防衛システム【全自動・不審者検知魔法陣】が、これまでで最も激しい警報音を鳴り響かせた。
「ん? またガイル団長たちが懲りずに戻ってきたのかな?」
「いや、違うな。レン、この禍々しい気配は……我が魔王軍の残党どもだ」
ルシエラがオムライスを飲み込み、キリッとした表情で立ち上がる。
玄関を開けて外に出ると、案の定、我が家の敷地を取り囲むように、数十体の凶悪な上級悪魔たちが空中でピタリと静止していた。
どうやら俺の防衛システムに引っかかって、全員【速度バグ】でフリーズしているらしい。
「お、おのれ人間め! 我が主、魔王ルシエラ様をこのような怪しげな結界で捕らえるとは! 今すぐルシエラ様を解放しろ!」
フリーズしながらも、魔王軍の副官である巨漢の悪魔が、目を血走らせて俺を怒鳴りつけてきた。どうやらルシエラが人間に拉致されたと勘違いして、全軍で捜索にやってきたようだ。
「ルシエラ様! ご安心ください、今すぐこの人間の首を撥ねて、あなたをお救いいたします!」
「……おい、お前たち」
副官の言葉に、ルシエラが冷たい一言を放った。
救出を信じて目を輝かせる悪魔たち。しかし、ルシエラから返ってきたのは、彼らの予想を遥かに裏切る激怒の咆哮だった。
「誰が捕らえられていると言った! 私は今、人生で一番幸せな時間を過ごしているのだ! 貴様ら、大きな声を出すな! レンが作ってくれた特製オムライスが冷めてしまったらどうする!」
「へ……? お、おむらいす……?」
魔王様の口から出た謎のパワーワードに、悪魔たちは完全にフリーズ(精神的な意味で)した。
「それに、貴様らのその薄汚い軍靴を見ろ! レンが【全自動・労働ループ】で一生懸命に耕して、ようやく芽が出始めたばかりの我が『魔王印の特製トマト畑』を踏みにじっているではないか! 万死に値するぞ!」
「は、畑ぇぇぇっ!?」
世界を滅ぼすはずの魔王が、エプロンをなびかせながらトマト畑の心配をして怒り狂っている。
魔王軍の残党たちは、目の前の光景が信じられず、ただただ白目を剥くしかなかった。
「うんぐっあ……?」
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