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第2話新たな出会い

「おい! どういうことだ!? なぜ今日の魔物どもは地面に埋まらんのだ!?」


 魔王軍の尖兵が押し寄せる前線の平原に、聖騎士団長ガイルの悲鳴が響き渡っていた。

 いつもなら、こちらが突撃した瞬間にマヌケにフリーズして、格好のサンドバッグになっていたはずの魔王軍。

 しかし、今日目の前にいる魔物たちは、一切バグっていない。


「ギ、ガイル団長ぉぉ! 敵が普通に動きます! めちゃくちゃ速いです! ぎゃああああっ!?」


 精鋭と呼ばれた聖騎士たちが、本来の凶悪な強さを発揮した魔王軍の前に、一撃でシールドごと粉砕され、次々と吹き飛ばされていく。

 魔王軍のオーガが振り下ろす巨大な棍棒は、聖騎士の重装甲を紙切れのように引き裂いた。


「嘘だろ……!? いつもなら、我が聖騎士団の威圧感で勝手にフリーズしてたはずだ! おい、魔術師ども! 早く敵の動きを止める魔法をかけろ!」

「む、無理です団長! あんな数千体の敵を一瞬でフリーズさせるような広範囲弱体化魔法、この世のどこを探しても存在しません! ……ま、まさか、本当にあのレンが、一人で全部やってたんですか!?」

「そんなバカなことがあるか! あいつはただ突っ立っていただけだぞ!?」


 ガイル団長は顔を真っ青にし、ガタガタと震えながら叫ぶ。

 だが、冷酷な現実は変わらない。

 彼らがただの無能だったことにようやく気づき、泣き叫ぶ聖騎士団。

 だが、俺がその戦闘バグを修正してやる義理は、もうどこにもないのだった。


     * * *


 それから一週間後。

 俺の辺境スローライフは、さらにとんでもない進化を遂げていた。


「よし、これで全自動の『温泉掘削システム』も稼働完了だな」


 俺のログハウスの裏庭には、今や豪華な露天風呂が完成していた。

 地面の『液体判定』をバグらせて、疲労回復効果のある最高級の天然温泉が常に一定の温度で湧き出るようにしたのだ。もちろん、お湯が溢れないように『自動消滅デリートバグ』も組み込んである。


「はぁー……極楽、極楽。やっぱり24時間ワンオペから解放されて入る温泉は最高だな」


 湯船に浸かりながら、無限リスポーンさせた冷たいリンゴジュースを飲む。最高だ。

 そんな風に俺が一人で温泉を満喫していると、突然、露天風呂の防衛結界がピンポーンと小気味いい音を立てて鳴り響いた。


「おっと、何か引っかかったか?」


 俺は服を着て、ログハウスの前に設置した【全自動・不審者検知魔法陣】を確認しに行く。

 この魔法陣は、敷地内に侵入してきた動体を自動で認識し、その『移動速度』をゼロにバグらせてフリーズさせる優れものだ。


 玄関の扉を開けると、そこには案の定、一人の侵入者が完全に硬直した姿勢のまま、空中でピタリと止まっていた。


「あれ……? 魔物じゃないな」


 そこにいたのは、ボロボロの黒いマントを羽織り、頭から立派な漆黒のツノを生やした、息を呑むほど美しい美少女だった。

 彼女は鋭い犬歯を覗かせたまま、空中で剣を振り下ろすポーズのまま固まっている。


 その頭上には、世界のシステムが教えてくれる『キャラクターID』が浮かび上がっていた。


【名前:ルシエラ】

【種族:魔王(魔王軍総大将)】

【状態:フリーズ(速度バグ)】


「え……魔王?」


 どうやら、王都の聖騎士団をあっさりと壊滅させた魔王本人が、なぜか俺の辺境の家にまで直接殴り込みにやってきたらしい。

 しかし、世界最凶と恐れられる魔王だろうと、俺の全自動バグシステムの前では、ただの動けないマヌケなサンドバッグでしかなかった。


「……ま、とりあえず、動けるようにして話を聞くか」


 こうして、俺の気ままな辺境スローライフに、まさかの『魔王』がゲストとして強制参加することになったのだった。


読んでいただきありがとうございます。

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次回もお楽しみに!

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