誰が為の月桂冠
帝都に戻って2日、私は自室に籠っている。弱い私となって。
「どうしてこうなった」
昔ユリアンに貰った翠の髪留め、私はそれを握りしめてベットに沈んでいる。
どうしてこうなったんだろう。私は何か間違えたんだろう。
わからない、私はどこで間違えていたんだろう。ユリアンからの離婚を受け入れたのが間違いだったのか?
いや、そんな筈はないでしょ。だってユリアンは頭と思い切りは良いけど強い人ではない。だから離婚しなければ、彼女は自分の存在を使って私の一番嫌がるやり方で私から冠を取ろうとするだろう。それは本当に駄目だ。
でも離婚したからこそこうなった。結局、私の存在そのものがこの事態を招いたんだ。
もし私の性格がラスアヅィンニコフのような野心に生きる性格が根っこだったらこうはならなかった。だから、私の根っこ、私のこの難儀な性格と特性が彼女の損なったんだ。
最初から詰んでいたのだろうか、私。
でもだからと言ってここで全てを投げ出す理由になるんだろうか。ユリアンによる帝国の破壊を許して良い理由になるんだろうか。
ならないでしょ。でもユリアンを止めようとしたら今度はユリアンまで殺してしまうかもしれない。それは嫌だ、絶対に。
なら私は……
「そうだ、私は」
思い出した、最初の原点はユリアンだ。人身御供だとしても、せめて彼女の為になるのならそれで良いかなって、それでスカートを履いたまま皇帝になったんじゃないか。ならその原点を軸にすれば……
「あった、たった一つだけ、全てを守れる方法が」
その為には弱いままの私で外に出て、そして戦争を終わらせてユリアンを生け捕りにする。これが第一段階になる。だから……
「一旦お休みだよ皇帝ヘリオース。あとは私が私のままで」
重い扉を開けて部屋の外に出る。外にはマクリヌスが立っていた。
「ご主人、あんたは……」
「私は全員を救う策を思い付いた。だから私を手伝って。あと私にできるって言って」
「貴方の心を救ったのは彼女でしたか…‥なら、そうです、貴方なら出来ます、必ず。ですから全てをお救いになさってください」
その為にはこの戦争の終わりまで私が皇帝でなければならない。だから今前線で指揮を取ってるラスアヅィンニコフの下に行かないと。そうしないとラスアヅィンニコフが勝った後にルビコン川を越えて帝都にやってくるかもしれない。そもそもラスアヅィンニコフが勝てるのかどうかという点も少しだけ怪しい。
「マクリヌス、今すぐ馬を出して。ラスアヅィンニコフのところに行かなくちゃならない。私は最高指揮官だから」
「行くんですね?」
「行かないとならないから」
マクリヌスに馬を用意させている間、私は城のバルコーニーへ向かった。
バルコニーの下、私が姿を現すと民衆がすぐに集まる。良くも悪くも皇帝の存在は大きいのだ。
「我が臣民よ!」
予想通りだ、みんな私を憎悪を目で見ている。
「今!帝都には強大なる敵が迫っている!」
誰のせいでそうなったと思ってる、その声が人々から聞こえた。やはりというべきか、食糧の不足は自然のせいじゃなくて皇帝の失策であると人々は思っている。当然だろう、わかりやすい悪者がいた方が楽なんだ、だってその悪者さえ居なくなればこの災難が解決されるという希望が見えるから。私だって彼らの立場だったらそうするさ。だからこそ、今はそれで良い。
「故に諸君らに私は節度ある態度を!紀律ある態度を望む!和を重んじ、決して乱す事のないよう、私は皇帝として厳命する」
「以上である。偉大なるマレ・ノストルムに栄光あれ!」
誰も叫ばなかった。だってサクラも仕込んでなければ私の人気があるわけでもない、環境だってそうだ、噴火の影響で冷ええてて時間はお昼前、みんな頭が冷えて冷静だから、でもこの人悪者なんだよなって顔で演説を聞いている。
さて、確認は済んだ。やはり皇帝ヘリオースは軍からの評価は高いが民衆からの評価は最悪という存在らしい。だからこそ条件は整っている。
あとはこの戦争を終わらせるだけだ。
「陛下、マクリヌス様より足の準備が出来たと」
「そう、すぐに行くよ」




