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皇帝ヘリオースとアレクサンドル大王 前編




 3万の軍勢を率いて帝都ノストルムから反乱の場所であるアテネ属州に向かった。と言っても私のやる事は演説をしたり作戦を承認したりするだけだけどね。でも一兵卒からしてみれば頼もしいんだろう、皇帝という人が前線にいるのは。だからこそスピキ将軍はこのアテネ属州のスコーピオンという都市に私を置こうと思ったんだろう、素人推測だけどね。

 という訳で今私は帝都でやる予定だった書類仕事を持ち込んでスコーピオンの蠍の宮殿で書類仕事してる。勿論、ラスアジィンニコフも呼んで。


 「せっかくスコーピオンに来たというのにやってる事は帝都と変わりませんね」


 スコーピオン、銅像が立ち並ぶ街。でもそれ以外はでっかい水道橋があったりと帝都ノストルムと変わらない。聞けばこの街はあえてノストルムと似たようにしたんだとか。それもそのはず、この街はかつての大国であったコリントス王国の首都である。だからかつての王国の影を消して偉大なる帝国で染めたかったんだろうけど、アレクサンドル大王の銅像だけは壊せなかったようだ。だっみんなこの人に憧れを抱いてしまったからね。


 「じゃあ少しだけ外出ようか?私もこの後の為に少し休憩したいし」


 「いいね、そうしようか」


 蠍の宮殿の中庭を抜け、街の広場へ。街には戒厳令が敷かれてみんな家の中に閉じ込められている為軍人しかいない。


 「贅沢なものです。この街を私達だけのものですからね」


 よく磨かれた白いタイル、光を反射して輝く噴水、巨大な水道橋に後ろの蠍の宮殿、そして真ん中にある巨大な銅像。


 「えぇ、本当に」


 馬に乗ったアレクサンドル大王、私たち2人はその銅像に見惚れていた。


 「そういえばお誕生日おめでとうございます、陛下」


 昨日、だったかな。春の終わり私は16歳になった。よく考えれば私ってまだ16年しか生きてなかったのか。そう考えるとまだ私もなんかこう、遊びたかったかもしれない。恋愛とかもしてみたかったかも、それと結婚……はもうしたんだった。数ヶ月で終わったけど。ユリアン、元気にしてるだろうか。


 「……この人もおんなじ事」


 アレクサンドル大王、世界を征服した人。この人も確か20歳で即位したんだっけか。彼も私と同じ事考えてたのかな、もっとこう色々したかったなって。死人の気持ちを想像するのは無意味だけれど、もしそうだとしたら気の毒かもしれない。


 「前、私は貴方に言いましたよね。私はアレクサンドル大王ではなく星ガモフになってみるってのもいいかもしれませんと」


 それで私を神様にしようとしてたとか言ったっけな。まぁ正直、今としては過ぎた夢なのかもしれない。でもこの混乱を無事に治められれば神とは言わずとも賢帝くらいにはなれるかもしれない。


 「この銅像の前に立って思ってしまったんです、私は。アレクサンドル大王が死んだ歳になって何歳も老いたのに、私は未だに何も出来ていない」


 「だから私は、やはり私は皇帝になりたいんですよ。そして世界を征服したい、圧倒的な偉業を果たしてノストルムの英雄になりたい」


 やはり貴方は副帝の器に収まる器じゃない。私よりもずっと皇帝の器だ。血筋さえあれば今すぐに謀反を起こして皇帝になっていただろう。


 「ならそうするといいよ、私を退けてね。でもその時は、そうだな、殺さないでね。流石に死にたくはないからね」


 私は自分の発言に驚いて顔を手で覆った。

 死にたくはない、たくさん人を殺してきたのに何を言ってるんだ?いや、確かに気持ち的には自然なことだけどそれじゃ筋通らないでしょ。だからいざとなったなら死ぬべきなんじゃないか、そしてそのいざに皇帝の簒奪は含まれるでしょ。いやでも死にたくないな。

 あぁ、何というか、弱いな、私。多分母のせいだ。あの人が私の中の私を起こしてしまった。取り敢えずこの戦争が終わるまでは黙らせておかないと。


 「その時はそうしましょう、島流しくらいに収めてあげますよ」


 「まぁそれが出来るのは国あってこそだからね、それを忘れないで」


 「当然です……だからこそ、私は……私……あの家の……まさか、いや、陛下!」


 「落ち着いてよ、どうしたんだ」


 独裁官制度の時も破局噴火の報告を見た時もあんなに冷静だったのに……こんな焦ったラスアジィンニコフ見たことがない。


 「はい、落ち着きました」


 うわ、なんか急に、すんって。怖……やっぱこの人私には予想できないよ。


 「それでです、陛下。足を、マクリヌスを貸してくたさい、至急帝都に戻って確認しなければならない事があります」


 「ん、まぁいいけど」


 「感謝致します!!」


 彼は訳も告げず走って去っていた。何があったのか、私には検討も付かない。でもまぁ、ここでいきなりやばい事する程馬鹿な人じゃないでしょ、多分。だからまぁ、心配する必要はないと思う。


 「陛下、そろそろ戻り下さい」


 護衛の人が私に声を掛けた。


 「あぁ、ごめんね」


 この後の演説の為に、ちょっと休憩しておこう。

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