独裁生活2ヶ月目
独裁生活2ヶ月目。執務室で仕事をこなす、正直言って後悔してる。だってさ、わかるでしょ。独裁した、議会を停止したって事は議会がやってた分の仕事を私がやらないとならないって事だ。そのせいで毎日3時間睡眠なんだよ。私がまだ若いからなんとかなってるだけで、これ私が老人だったら死んでるよ。
でも、必要な事だったと思う。だって戦時徴収法がなければまともな教育を受けていないならず者の集まりであるノストルム軍が暴れて大変なことになっていた。まぁその代わりに何万人もの餓死者が出たけどね。
と言う訳で今日もラスアジィンニコフと執務室で働いている。
「まったく、昇進すれば昇進するほど仕事が増える。素晴らしいことですけど人使いが荒くないですか?」
昇進、彼には副帝の位を与えた。ついでにブルースにも。つまり私とラスアジィンニコフとブルースとで三人で国家運営をしてる。差し詰め三分統治と言った所だろうか。
「仕方ないでしょ私が信頼置いてる人は少ないんだから」
議会を制圧してからだろう、私は人を信じれなくなった。勿論今信じれてる人は信じてるけれど、それ以外はダメだ。だって私が武力で議会を制圧するって手段を取っちゃったから、他の人も武力による選択を選ぶのかもしれないと思ってしまうんだ。そんな状況で誰かを信頼出来るわけがない。ただでさえ私は恨まれてるのに。
「あと1人だけでも副皇帝を増やしてほしかったですけどね。そしたら四分統治で……テトラルキアといった所でしょうか。うん、そっちの方が響きが良い」
「やだよ信頼出来る人がいないからね」
パラノイヤ、とまではいかないけれど軽く人間不信くらいはあると思う。でも用心しとくだけ損はないはずだ、きっと。
「それにほら、この問題が解決したらヘラヘラ緊急法はきちんと廃止にするから」
「誰も信じてませんよそれ。だって武力で捻じ曲げたんだから信頼もクソもないでしょうし」
話しながら報告書を読む。国営の食糧庫の半分が尽きたとか、どこどこで反乱が起きてそれを鎮圧したとか。そんなことだらけだ。まぁ特に印象的なのは昨日のアレだ。火山灰と太陽光の減少で今年の食糧の七割が無くなったって奴だ。
……滅ぶんじゃないかな、この帝国。そうならないように頑張ってるし、と言うかそうしない為に地方でわざと反乱を起こさせて反乱鎮圧の名目で食糧を奪って帝都に流してるんだけれど……正直言って状況は極めて絶望的と言わざるを得ない。いつ滅んでもおかしくないレベルの飢餓だよ。
「カブって確かみんな食べてないよね?」
「はい、家畜用の史料ですので」
「んじゃ今すぐ画家と料理人呼んで私がカブ料理食べてる絵を描いてもらってそれ広告にしよう」
皇帝が食べているんだからカブは相応しい料理に違いない、そう人々に思い込ませよう。まぁ皇帝は人間の事を家畜と思ってるとか言われかねないけれど、まぁこのままカブが腐って食べるものないけどってなるよりかはマジでしょ。
「まぁ構いませんけれど……私はやりませんからね。そんなはしたない事」
はしたない。この表現はこう言う意味だ。
自分が皇帝になった時、あの皇帝と一緒にカブのプロパガンダ作ってた人だなんて言われたくないですよ。
「あ、これは……」
前々から依頼しておいた、ポンペイウスシティに関する計画の報告書だ。
ポンペイウスシティ、その街はポンペイウス=エンデラ山の麓にあったから噴火の火砕流に飲み込まれて跡形もなくなってしまった。だからせめて死体があった場所に石膏を流し込んでそこに生きていた人の人形を作って後世に伝うようという計画の最終報告書だ。
せめてもの慰めになればいい。まぁ、私にとっての意味は皇帝は死者を慮れる人だという印象を与えることができるという事なんだけれどね。
「陛下!陛下!」
仕事をこなしている途中、ブルースが入室してきた。彼の頬から汗が滴っており、髪は濡れている。随分急いできたんだろう。
「アテネ属州を失陥しました!!」
アテネ属州が失陥……第二帝都イスタンブルノポリスが危ない。イスタンブルノポリスが危ないのであれば古王国地域が危ない。帝都ノストルムが脳みそだとしたら、心臓を突かれた気分だ。
「奴隷の反乱か!?規模は?」
「数十万人規模!それ以上は分かりません!そして指導者はハンニヴァルカ・アナキヌス・スパルタクスと名乗っています!」
ここにきて、ハンニヴァルカか……でもそいつさえ倒せば一旦は安定する筈だ。
「第三次奴隷戦争だね……スピキ将軍を呼んで!」




