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 全体的に間抜けた感じにならないようにっと……。

 文字のフォントを大きめに設定したが、これくらいの内容では、B5サイズの用紙でたったの五枚……。 あまりに寂しいので、厚紙でカバーを作り、パンチ穴をあけて、つづり紐を通して綴じた。

 八月三日――不審者尾行記録と題して、幾度か見返し、悦に浸った。

 薄すぎるそれは、本棚に立てたら消えてなくなってしまった。



 薫子が風呂場から出てきて、エアコンの吹き出し口で仁王立ちになった。 ダボついた神崎のジャージ。 腰ひもをギュッと絞ってある。 頭にタオルを剣道巻きにして載せている。 髪まできっちり洗ったようだ。

「帰るなら、車で送るけど」

 彼女はウ~ンとうなって、髪をバサバサとやった。

 それをやめろ。 カーペットに毛が落ちる。

「明日、休み?」

 薫子の休日は知っているが、あえてきく。

 うん、と彼女は首肯する。  「予定もなぁい」

 あぁそう。

 だからといって付き合う義理はない。 明日は、正確にはもう今日だが、古本屋をいくつかハシゴするつもりだ。 駐車場がない店ばかりなので自転車移動になるし、そんなことにつき合わせては彼女も退屈だろう。


 薫子は自分で飲み物を取りにいき、戻ってきてPC画面をのぞきこんだ。

 神崎は映画鑑賞を中断して小説を執筆していたが、彼女が風呂からあがってきた時点で、画面は動画サイトに切り替えてある。

「なにやってんの?」

 見ればわかるはずなので、ウンとしか返事をしない。

 カウチソファの端で、薫子は横寝にビローンと伸びて、頬杖をついた。 腰のくびれからヒップへ盛り上がるラインが、きれいだった。

 神崎の視線に、薫子は気づいているだろう。 それをわかったうえで、お互いに何も言わない。

 神崎はパッと目をそらした。 あっそうだ、と思い出したように言ってから、先日の、男を尾行した話を始めた。


「どんだけ暇なのよアンタ」

 と言いつつも、薫子が興味を示したので、神崎は立ち上がって本棚へ行った。

 ほんの三日前のことなのに、尾行記録はもののみごとに姿を隠している。 上から二段目だったか、三段目だったか……。 本の間をギュッギュッと押し開いていって、やっと見つけた。

「ほらこれ」

 と短い言葉をそえて、彼女へ突き出した。

 薫子はそれを受けとって、座り直した。

 本日二度目の 「どんだけ暇なのよアンタ」 を聞くと、神崎はニヤリとして元の位置へ戻った。





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